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投稿:2025年05月23日

多職種連携・地域連携

1325. 在宅医療が使えない自宅の看取りを考える・平在宅療養多職種連携の会

いわき市平地区の医療・介護・福祉関係者が交流する「平在宅療養多職種連携の会」がこのほど、オンライン上で開かれました。介護支援専門員(ケアマネジャー)が「在宅医療を使えない場合の自宅看取り」をテーマに事例を発表。訪問診療ではない主治医による自宅看取りでの対応を振り返り、本人の意思の事前の記録と共有の大切さをみんなで再確認しました。

● 33人が参加
医師、歯科医師、薬剤師、看護師、介護支援専門員(ケアマネジャー)、介護職員、リハビリ職など33人が参加し、5月15日に開催。発表者は、平日日中は介護者が不在で、延命治療を望まない90代男性を取り上げ、主治医が訪問診療を行っていない事例を紹介しました。男性はデイサービスを毎日利用し、夜間と日曜だけご家族の介護を受け、長年信頼している入院施設のない病院に通院していました。

● 人生会議で意思を確認
終末期の医療を話し合う「人生会議」では、男性は延命治療と入所を望まず、最後までデイサービスを利用して自宅で過ごしたいという意思を共有しました。その実現のため、日中は介護者不在のため、訪問診療・看護は使えないと判断。ご家族は事前に看取りの際には医師に死亡確認してもらうようお願いしました。デイサービスでの急変時はご家族に連絡するように取り決めました。

● 在宅での看取り
男性は看取りがあった当日朝に意識レベルが低下し、病院で点滴し帰宅。夕方、ご家族のいる時間帯に呼吸が停止しました。主治医に連絡して死亡確認にくることになったが、到着まで救急車を呼ぶよう指示を受けました。救急車が到着し心肺蘇生が行われ、主治医が到着後に死亡が確認されました。ご家族は「自宅で看取りができてよかった」と感謝されたものの「延命措置は必要だったのか」という疑問の声もあったという。発表者は「救急車の要請は必要だったか」「在宅診療をしていない主治医の看取りのルールはどうなっているか」「ご家族が日中不在の場合の自宅看取りはどうすればいいか」、それぞれみんなで考えたいと提案しました。

● 意見交換
薬剤師は「介護者不在の独居でも訪問診療・看護を受けられると思うが、どういう状況だったのか」と質問。発表者は、ご家族が在宅医療に移す気持ちがなく、ご家族が緊急時に急に休むのが難しい仕事で計画が立てられなかった状況を説明しました。独居の在宅看取りの経験のある訪問看護師は「在宅診療の医師に入ってもらうのは必須。死亡確認をしてもらえるよう整えた方がよく、大変だっただろうと聞いていた」と感想。

別の訪問看護師は「本人が自宅看取りを希望していたのに医師が救急車を要請したのが疑問」と意見。発表者は「家族によると、医師からとりあえず救急車を呼んでと要請されたといい、医師が判断に迷ったのではと推測している」と回答。医師は「救急車を呼んだのは、人生会議での本人の意思と異なる対応」と疑問を示し「救急隊が慌てて病院に運んでしまうこともあり得る。蘇生しないようにとご家族が意思表示しておくのは大切」と話しました。

福祉関係者は、老夫婦二人暮らしの支援経験を共有。夫が「絶対に救急車を呼んでほしくない」と意思を示していたものの、突然倒れて状態も分からずに妻から急な対応を迫られ「『助かるかもしれない』という判断で救急車の要請を勧めたこともあった。救急車を呼びたい気持ちも分かる」と、判断が難しい緊急対応の気持ちを共有しました。

これら意見を踏まえ、発表者は「訪問診療の医師でなくても、ご家族や主治医と話し合った人生会議のノートを作って、救急隊にも分かるようにしておくのが良いと思った」と学びを共有。「ノートがあれば病院に搬送されても患者様の意思が分かる」「試行錯誤してACP(アドバンス・ケア・プランニング)を実現していきたい」とまとめました。

山内俊明会長(山内クリニック院長)はエンディングノートの作成の大切さを強調。最後の迎え方をまとめておけば、ご家族は判断に迷わず本人は望む最後を迎えられるとアドバイスし「人生会議をかしこまらないで気軽に持ち掛けたらいい。『主治医と相談してくださいね』という声掛けでもいい」と呼び掛けました。

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