生活に困ったお年寄りを住民で支えていこう。いわき市13地区内の15行政区で展開されている「住民支え合い活動」(※)をほかの行政区にも広げるため、買い物代行や見守りなどを担う「支え合いサポーター」の研修会がこのほど、いわき市社会福祉センターで開かれました。先行例の活動紹介として、勿来地区の南台ひまわり会・小野善文会長がその成果や課題を発表。関係者が「地域共生社会」の実現に向けたいわき市の取り組みや、各行政区での住民支え合い活動を紹介しました。全13地区から詰め掛けた約100人が聴講しました。
※「住民支え合い活動」とは?
「住民支え合い活動」は、市社会福祉協議会(市社協)が2016(平成二十八)年度までの2年間、15行政区をモデル地区として選んで実施(※表)。研修会で養成された「支え合いサポーター」が各15行政区で、買い物、電球交換、掃除、窓ふき、話し相手、障子の張り替えなどの生活課題に応えます。活動は市外からも注目され、これまで千葉県柏市などから関係者が視察に訪れています。サポーターは現在約300人。住民同士による支援体制づくりを進めてきました。
● 「しゃべり場」や相談窓口設置 夏祭りの開催要望もかなえる
小野会長は「南台ひまわり会の取り組みについて~新興住宅地から親交住宅地へ」と題し、南台ひまわり会の支え合い活動を紹介しました。「ひまわり会」が活動する南台1・2区は、人口1300人ほど、高齢化率約21%の新興住宅地で、昔からのつながりが薄い地区といいます。ひまわり会は生活支援ニーズを聞き取り、定期的に集会所で開く「しゃべり場」(つどいの場)、相談窓口の設置、見守り訪問などを実行。「しゃべり場」「電話相談窓口」「見守り活動」で住民から困り事を聞き出し、サポーターに活動依頼する体制を整えました。現在、サポーター19人が「総務」「しゃべり場」「見守り」「生活支援」の4班を編成して活躍。活動が始まった2016(平成二十八)年1月から今年1月末までに、「しゃべり場」を49回開催、見守りを329回、ごみ出しなど重い物の移動代行173回、庭木手入れ2回を実施。「しゃべり場」の参加者は、当初の5人から昨年末には22人に増加。地区住民が集まれる夏祭りをやりたいという要望を受けて企画し、自治会主催でそれも実現させました。
↑住民支え合い活動の取り組みを紹介した勿来地区の南台ひまわり会・小野会長
● 「あうんの呼吸で住民同士が手伝い合える街に」
支え合い活動に取り組んでの変化について、小野会長は「住民から話し掛けられ、近況報告を受けることも多くなった」「しゃべり場の参加者が道端で立ち話する様子が見られるようになった」「しゃべり場の入り口にのぼり旗を立てたら、興味を示す人が増えてきた」などと住民同士のつながりの輪が広がっている点を話しました。課題では、若い世代の協力、PR活動、地区内の事業所との連携などを挙げました。お年寄りと子どもの触れ合いの場を夏につくる展望も披露。小野会長は「あうんの呼吸で住民同士が手伝い合える街にしたい」と抱負を語りました。質疑応答では次々と質問が飛び出しました。「草刈りボランティアは有償か無償か」「つどいの場に来てもらえない」「活動している団体が集まって意見交換する場があるといい」「地区でサポーター講習会を開き、興味ありそうな人を1本釣りしてサポーターを集めている」などの質問や悩み、意見を共有しました。
● 「行政と連携し、地域でできることは地域で」
NPO法人「地域福祉ネットワークいわき」の園部義博事務局長は「地域共生社会の実現に向けて~いわき市の取り組み」と題して講話しました。高まっているいわき市の高齢化率や全国の平均寿命などを挙げ、社会の高齢化を解説。一人暮らしのお年寄りが増える一方で、外出、食事、掃除洗濯、ごみ出しなどの家族や行政の支援が難しくなっていると説明しました。そのため「行政と連携し地域でできることは地域で」と説いた園部さんは「厳しいことを言うと、これができる地域をつくらないと一人暮らしのお年寄りは暮らせない」と住民が助け合う大切さを訴えました。
● 支え合い活動 モデル地区以外でも募集
市社会福祉協議会地域福祉課の小野真弓主事は、13地区で住民の生活課題を探り解決をめざす「第2層協議体会議」(2018年3月9日投稿:http://ymciwakikai.jp/blog-entry-423.html)を紹介し、これまでの「住民支え合い活動」を振り返りました。研修会は18日に開催されました。
市社協はモデル地区以外でも活躍するサポーターを増やし、支え合い活動する行政区を拡大したい考え。事務局は研修後、興味があれば連絡をくださいと聴講者に呼び掛けていました。
【いわき市社会福祉協議会】
<住民支え合い事業>
http://www.iwaki-shakyo.com/jigyo/koureisya-fukushi/%E4%BD%8F%E6%B0%91%E6%94%AF%E3%81%88%E5%90%88%E3%81%84%E4%BA%8B%E6%A5%AD.html
※名前が似ているので混乱しないよう端的に説明しますと、「住民支え合い事業」は行政区単位で展開されている助け合い活動で、「住民支え合い活動づくり事業」は旧市町村13地区で支え合い活動を創出するために住民や有識者が話し合う会議です。
【関連記事】
「内郷『高坂9区』の『住民支え合い活動』。中学校でつどいの場を定期開催」 2018年3月24日投稿:http://ymciwakikai.jp/blog-entry-434.html
「支え合いサポーターらも参加し生活課題を見つける『第2層協議体』会議。市内13地区ごとに開催」 2018年3月9日投稿:http://ymciwakikai.jp/blog-entry-423.html