認知症の正しい知識を身に着けた「認知症サポーター」を養成する講師「認知症キャラバン・メイト」(※)がこのほど、いわき市文化センターで児童生徒向けの指導法を学びました。小中学校で「認知症絵本教室」を展開している地域包括支援センター職員の実演を見学し、意見交換しました。
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内閣府の平成28年版高齢社会白書(http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2016/html/gaiyou/s1_2_3.html)によりますと、65歳以上の認知症者は2012(平成二十四)年に7人に1人だったのが、2025(同三十七)年には5人に1人になると予測されています。認知症者でも住み慣れた場所で暮らし続けられる地域をつくるには、地域住民で支えていくことは大切です。そこで「全国キャラバン・メイト連絡協議会」(東京都・ホームページ:http://www.caravanmate.com/)は、地域で手助けする「認知症サポーター」を全国で養成しており、その登録者数は2017年12月31日現在で約983万人。そのサポーターを養成指導できる有資格者が「認知症キャラバン・メイト」で、いわき市内には160~170人おり、約50人が実際に活動しています。
● 子どもたちに認知症を知ってもらうために
厚生労働省は認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)で、子どもたちに認知症者への理解を促進させるよう明記されています。いわき市も小中学校での認知症サポーター養成講座を展開していますが、小学生にはより分かりやすく伝えることができる工夫が必要になります。そこで、地区内の小中学校で認知症教室を開いている四倉・久之浜大久地域包括支援センター職員4人を講師に招き、「認知症キャラバン・メイト」の指導力向上を図る意見交換会が企画されました。いわき市地域包括ケア推進課が12日に主催。市内の「認知症キャラバン・メイト」の約30人が参加しました。
● 随所に飽きさせない工夫
2013(平成二十五)年度から児童生徒に指導している講師は、子どもたちの集中力を持続させるために重ねてきた改善を語りました。講義、紙芝居、「認知症になったらどんな気持ちになる?」などを考えるグループワーク、○×クイズという認知症教室での流れを紹介。実演した講義では、祖父母と同居する児童が少ないとグループワークで意見が出にくいという傾向から、最初に「おじいちゃん、おばあちゃんと一緒に住んでいますか?」と質問して後半の工夫の必要性を事前に探るテクニックを紹介。「認知症になると季節や時間、場所、人が分からなくなります」と説明する際には、合わせて「今の季節は?」と尋ねて興味を引き「隣の友達の名前が分からなくなります」などと具体的に認知症状を伝えます。スライドは大きく少ない文字やイラスト、人気アニメやゲームの画像を盛り込み、認知症とは何か、どのような症状か、具体的にどんな行動をとるか、認知症者の気持ち、正しい接し方などを優しく解説していました。
● 大事なことは具体的に考えさせる
講話後、運動会の練習にまぎれ込んだ認知症のおばあさんと児童の交流を描いた紙芝居「おみょうにち」を披露。グループワークについて、講師は「迷子のお年寄りを見つけたらどうする?」と聞いたら、「優しくする」などあいまいな意見ではなく「交番や先生に言う」など具体的な考えを引き出してほしいとアドバイスしました。参加者は紙芝居の良かった点や改善点などを議論。さらに市が「認知症サポーター」の復習とさらなる学習の機会をつくろうと実施を検討している、「認知症サポーター実践講座(仮)」のテキスト案についても意見交換しました。
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「小名浜高校の全校生を対象にした『認知症サポーター養成講座』。同高演劇部も認知症劇を披露」 2017年12月14日投稿:http://ymciwakikai.jp/blog-entry-362.html