当法人のフェイスブックページをご覧になってくださっている富山県高岡市の複合型介護施設 天然温泉「和(なごみ)の郷 高岡」。逆にページを拝見させていただくと、外国人研修生を積極的に受け入れ、将来を見据えた海外展開にも力を入れている様子。いわき市では珍しいと思える取り組みに興味を持ち、インタビューをお願いしたところ快諾してくださりました。海外を視野にした取り組みの背景は、全国的に共通する介護職の人材不足や超高齢化社会のその先を見据えたお年寄りの人口減の予測がありました。石川、富山の両県で「和の郷 高岡」を含めた介護福祉事業を展開するサンケアグループでは、経済連携協定(EPA)(※)に関わる外国人スタッフのマッチングを行う専門の海外事業部もあるそうです。「和の郷 高岡」の統括施設長・池田光利さんにお話をおうかがいしました。
※EPA看護・介護受入事業
経済連携協定(EPA)に基づき、インドネシア、フィリピン、ベトナムからの看護師・介護福祉士候補者の受け入れや支援を行う事業。東京都の公益社団法人国際厚生事業団(JICWELS)が日本で唯一の受け入れ調整機関となっています。3国から候補者を受け入れ希望する施設は一定の条件をクリアし、申請書類を提出する必要があります。
EPA看護・介護受入事業(国際厚生事業団HPより):https://jicwels.or.jp/?page_id=14
―「和の郷 高岡」ではなぜ外国からスタッフを受け入れているのでしょうか?
全国どの事業所も同じだと思いますが、当施設も人材不足が顕著で今後さらに厳しくなると危惧(きぐ)しています。そのためサンケアグループでは2016(平成二十八)年から介護福祉士や看護師資格を保持するEPAなどの外国人スタッフを積極的に受け入れ、当施設だけでも現在インドネシア人11人、ベトナム人3人が在籍しており、平成三十年度もすでに4人が決定しています。グループ全体では平成三十年度中で数10人の受け入れを見込んでおり、この流れは今後さらに加速していきます。将来的には在籍スタッフの3~5割は外国人スタッフという時代が来ると考えています。
―受け入れの事務作業は大変だと思います。どのように行っていますか?
サンケアグループには外国人就労者獲得のために、国内外を飛び回る海外事業部があります。その部署でEPAスタッフなどのマッチングを行い、「国際厚生事業団(JICWELS)」を通して入国までのサポートをおこないます。そして私たち「和の郷高岡」は、アパート・生活用品の準備を整えて受け入れるとともに、日本での煩雑(はんざつ)な申請関係、買い物などの日常生活のサポートをおこなっています。
―日本人スタッフや利用者様との言語や文化の壁が気になります。外国人スタッフを受け入れる上での良い点と課題を教えてください。
日本語に関しては、出国前や入国後に十分な日本語教育を受けており、一定レベルの日本語能力があります。また、日本の介護福祉士・看護師・准看護師などの国家試験をクリアしていますので、日常生活や仕事においても何ら支障はありません。配慮については、特にインドネシア人は敬虔(けいけん)なイスラム教徒が多くサラート(礼拝)やジルバブ(女性の頭部を覆う布)の着用を認めるなどしていますが、特に問題と捉(とら)えていません。当初、ご利用者ご家族からの評価を気にしていましたが、外国人スタッフに対してのクレームは過去に1度もなく、むしろ介助を受ける際に外国人スタッフを指名されるご利用者もいらっしゃいます。それだけ仕事は丁寧ですし、私たち日本人以上に高齢者を敬う気持ちを強く持っています。課題は外国人スタッフが長期帰国する際に勤務の調整が難しくなるぐらいですかね。
―「和の郷 高岡」では海外の介護施設からの見学が多いと聞きますが?
2025年を境に高齢者人口が減少することが予測され、将来を見据えた場合に今までのように事業所を増やしていくことに限界を感じています。そこで介護後進国にサンケアグループのシステムを提供していきたいと考え、今年初めて中国の大規模な養老院の主要介護スタッフ3人に業務の流れ、マニュアル、記録方法、人員配置などをレクチャーさせていただきました。技能実習生の受け入れはもちろんですが、私たちサンケアグループが世界で少しでも役に立てればと考えています。
―その海外の見学者たちの反応はいかがだったでしょうか?
帰国前の面談では様々な振り返りをいただきました。「記録表の規範性と分かりやすさ」「業務分担が合理的」「サービスの標準化」「チームワークによるスムーズな作業」といった効率性の意見が多く、ほかには「特殊浴槽は利用者も介護者も負担が少ない」といったハード面、「衛生管理の徹底」の衛生面、「男性介護スタッフの繊細さ」に関するサービスの細やかさの声もありました。また別れ際に「言葉は通じないけど国籍や肌の色と関係なく、笑顔は共通の言葉だと信じます」という言葉を受け、スタッフ一同、胸が熱くなりました。
―最後、今後の海外を視野に入れた取り組みについて意気込みをお聞かせください。
サンケアグループは設立からまだ日が浅く、まずは経営基盤を整える必要があったため、これまで施設数を増やしてきました。そのため、まだまだソフト面が追い付いていないと認識しています。これからはソフト面の更なる充実、着実な事業所運営をおこないながら、世界で活躍できる人材を育てていきたいと考えています。
【和の郷 高岡】
ホームページ:http://www.suncare-life.com/facility-lists/wa_takaoka/
フェイスブック:https://www.facebook.com/nagominosatotakaoka/
【インタビュー記事】
「地域連携で防災・愛知県西尾市の下町自主防災会」 2018年2月14日投稿:http://ymciwakikai.jp/blog-entry-404.html
「記者が見るいわきの『地域連携』・『日総研出版』記者」 2017年10月14日投稿:http://ymciwakikai.jp/blog-entry-314.html
<難病を抱えながら一人で在宅療養する熊本のTさん>
㊤ 2017年7月1日投稿:http://ymciwakikai.jp/blog-entry-224.html
㊦ 2017年7月4日投稿:http://ymciwakikai.jp/blog-entry-225.html
<『地域連携』 小林教授に聞く!いわき明星大>
㊤2017年6月13日投稿:http://ymciwakikai.jp/blog-entry-206.html
㊥ 2017年6月14日投稿:http://ymciwakikai.jp/blog-entry-207.html
㊦ 2017年6月15日投稿:http://ymciwakikai.jp/blog-entry-210.html