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投稿:2018年03月07日更新:2021年05月11日

多職種連携・地域連携

265. 地域医療支える東北初の「地域医療連携推進法人」発足へ・山形県の「日本海ヘルスケアネット」を知る講演会

山形県庄内地方で4月、病院間で「競争」するのではなく「協調」して地域医療を支えようという東北初の「地域医療連携推進法人」が発足します。「日本海ヘルスケアネット」という名称で、日本海総合病院(山形県酒田市)を運営する山形県・酒田市病院機構を中心に医療・社会福祉法人、医師会、歯科医師会、薬剤師会も含めた計9法人が参加。病院経営を病院単体で考えず、「連携以上、統合未満」の共同事業で人口減や超高齢化の難局に挑みます。「日本海ヘルスケアネット」に理解を深める「いわき地区学術講演会」がこのほど、いわき市のいわきワシントンホテル椿山荘で開かれ、同病院機構の佐藤俊男医療連携担当参事が講話しました。

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↑「日本海ヘルスケアネット」の取り組みを紹介する山形県・酒田市病院機構の佐藤医療連携担当参事

● 地域医療連携推進法人の前段にあった県立・市立病院の統合
佐藤医療連携担当参事は、地域医療連携推進法人が議論される前の地域医療再編として、地方独立行政法人の取り組みを説明。2025年に高齢化率が38%台となりその15年後には半分の市町村が維持困難になる庄内地方の危機的な人口減の予測から、医療・介護体制の早急な再構築が求められた状況を解説。そこで2008(平成二十)年に県立日本海病院と市立酒田病院が統合して地方独立行政法人が誕生しました。両病院の明確な機能分担、人材や医療技術の集約化、IT化などによる運営の効率化などで大幅な経営改善に成功。黒字化し医師確保などに再投資できる好循環が生み出された点も紹介されました。

● 病院長の昼食会 「病院経営を病院単体で考える時代は終わった」と共有
この地方独立行政法人の誕生を経て、地域医療連携推進法人設立への議論が出たのは、庄内地方の病院長の昼食会。危機的な人口減や高齢化から「病院経営を病院単体で考える時代は終わった」と地域全体での医業費用の効率化や人材不足の具体的な対応が必須だと課題を共有。佐藤医療連携担当参事は「思いが共通していたので、議論に抵抗感はなかった」と振り返りました。2016(平成二十八)年4月に中心の5法人が勉強会をスタートし、同年9月に設立協議会が初開催。県知事や市長への説明、実務者会議などを経て、翌年10月の設立協議会で9法人が参加を承認。今年1月に設立合意書が取り交わされ、4月の発足に合意しました。

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● 医療機器の共同利用や人材交流の促進へ
目指すは「連携以上、統合未満」の共同事業。①医療機器の共同利用、薬品、診療材料の共同購入、管理業務の見直しなどを図る経営の全体的な効率化②医師、看護師、医療技術者の派遣や交流促進、人材研修といった地域医療体制の充実と継続的な確保③病床機能などの分化、連携④在宅医療機関、介護事業所のさらなる情報共有をさせた地域包括ケアシステムの構築―などの改善に挑みます。日当直医や看護師の派遣、日本海総合病院の慢性維持透析患者を別の病院に移した集約化、電子カルテの共有化の協議などはすでに実施されています。事業収入や職員数などの事業規模を尺度にした議決権の配分方法も紹介。佐藤医療連携担当参事は「参加法人が提出する資料には、財務諸表などすべての経営関連資料も含まれている」と強調し、参加法人すべてが腹を割っている点を挙げました。

● 医師記録を全面開示する医療情報ネットワークも紹介
2011(平成二十三)年4月から運用開始した庄内地域医療情報ネットワークサービス「ちょうかいネット」も紹介。170余の病院、歯科診療所、薬局、介護事業所などの間で、患者の同意を前提に医師記録を全面開示しています。共有用の患者の固定IDを使い、医師らがセキュリティ対策したインターネット上で患者情報を共有し、治療開始の時間短縮や救命率の向上にもつながっているといいます。患者400~500人が毎月新規登録。医師、看護師以外では、介護支援専門員(ケアマネジャー)やリハビリ専門職、薬剤師らも利用し、佐藤医療連携担当参事は「ここでも事業所との連携ができている」と話しました。利用する診療所の意見では「病院へ紹介し入院しても、ほぼリアルタイムに状況を把握できる」「退院しても入院中の経過を正確に知れ、退院後も自信を持って対応できる」「通院中の患者さんが病院を受診した場合、これまでは処方内容や患者の話から病名を推測していたが、今は簡単に正確な診断名が分かる。逆に、患者の話が相当に不正確・誤解が多いことに驚き」といった声が紹介されました。

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● 内田准教授は地域連携での糖尿病治療について講話
講演会は2日に開かれ、福島県病院薬剤師会いわき支部、いわき市薬剤師会、いわき市医師会生涯教育学術委員会、日本イーライリリー株式会社、日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社が共催。佐藤医療連携担当参事のほか、岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の内田治仁准教授が「腎症重症化予防を意識した糖尿病治療について~地域連携をまじえて」と題して講話しました。

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↑「腎症重症化予防を意識した糖尿病治療について」と題し講演した内田准教授

【日本海ヘルスケアネット関連情報】
「酒田9法人が合意書調印」 (2018年1月11日付庄内日報):http://www.shonai-nippo.co.jp/cgi/ad/day.cgi?p=2018:01:11:8311

「山形・庄内地域で医療と介護の連携強化へ」 (2018年1月11日付朝日新聞):https://www.asahi.com/articles/ASL1C3GJSL1CUBQU00F.html

【国内の認定済みの4地域医療連携推進法人】
①尾三会(愛知県):http://bisankai.or.jp/
②備北メディカルネットワーク(広島県):https://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/53/chiikiiryourenkeisuishinhoujin-nintei.html
③はりま姫路総合医療センター整備推進機構(兵庫県):https://web.pref.hyogo.lg.jp/bk01/harimahimeji_hp_houjin.html
④アンマ(鹿児島県奄美大島):https://www.pref.kagoshima.jp/ae01/kenko-fukushi/kenko-iryo/kikan/imu/chiikiiryourenkeisuishinhoujin.html