毎年10月から新年度が始まる医和生会(いわきかい)の「事業報告・事業計画発表会」が11月30日、医和生会の会議室で開かれました。3カ年の法人中期目標を掲げる初年度となる今回、山内俊明理事長が法人の歴史と思いを伝え、今後の課題を共有。参加者は「医和生会を変える」決意を新たにしました。
● 新たな3カ年に向けて
今期から始まる3カ年の法人中期目標は「生き残るために医和生会を変える」。山内理事長は、この3カ年を職員が一丸となって多くの課題を乗り越えていく重要な時期だと捉えています。そこで、山内理事長がこの目標を策定した理由や、その背景にある想いを職員と直接共有するため、5年ぶりに集合形式で事業計画発表会を開催。役員、部長、部署長が参加しました。
● 収支報告
昨年度の収支報告では熊倉理事が、厳しい医療・介護の診療報酬改定、人手不足などの大変な経営環境に触れながら、「改善」「変化」に対応する必要性を強調。患者様、利用者様、地域、そして職員のために力を合わせて「頑張っていきましょう」と呼び掛けました。
● 医和生会の歴史を振り返る
事業計画発表を前に、山内理事長は「医和生会の創設から現在まで」をテーマに講話。「医和生会を変える今だからこそ、創設時の想いやこれまでの歴史を皆さんと振り返りたい」と語りました。
磐城共立病院(現・いわき市医療センター)の勤務医時代、10年以上「命を救うこと」を最大の目的に急性期医療に従事してきた山内理事長は「救命した患者さんがその後どのような生活を送るのか気になるようになった」といいます。そんな時、社会的入院を取り上げたテレビ番組で、別々に入院していた老夫婦が自宅での生活を選ぶも、支援がないなかでは思うような生活が叶わず、火事で奥様が亡くなり、ご主人は再び入院生活を送ることになった話を耳にしました。
山内理事長は「障がいがあっても必要な支援を受けられる集合住宅を造り、訪問診療と訪問看護で病状を管理すれば、望む暮らしを叶えられる」と考えました。1993年、外来診療と訪問診療を軸に「山内クリニック」を開業。その後、バリアフリー対応の集合住宅の設立に取り組みました。当時、介護保険制度はなく、事業運営に苦労する日々が続きましたが、「高齢化社会に必要な仕組みだ」という信念を持ち、事業を拡大していきました。2000年の介護保険制度開始を機に、医和生会の介護事業は発展。社会福祉法人「いわきの里」を設立し、今では300人の企業に成長したと語りました。
● 事業計画と達成に向けた5項目
「医療・介護・福祉事業を通じて、これからも地域に貢献したい」と考える山内理事長ですが、厳しい社会情勢が続き、社会保障費も削減されている現実を踏まえ、「生き残るために医和生会を変える」という事業計画を策定したと説明。達成に向けて、①多様な人材の確保と専門性の高い人材の育成②ヒト・モノ・カネ・情報の効率的な維持管理③法人維持のための収益確保④情報の管理やセキュリティに関する職員個々の意識向上⑤あらゆる災害に備えた対策と事業継続計画の整備を上げ、「皆さんと一緒に頑張っていきたい」と呼び掛けました。
● 質の高いチーム医療を目指す
その後、各部長が本年度目標を発表。医療部部長の鈴木は、管理職が担っている業務を分担しての育成や患者様第一の対応の意識付け、報告書作成の効率化などに取り組むと掲げ、「効率的、効果的な質の高いチーム医療」を目指す決意を述べました。
● 笑顔にすることで自身も笑顔に
介護保険部部長の吉田は、ご利用者様を笑顔にすることで職員自身も達成感で笑顔になれることを基本方針に掲げました。良いサービスをみんなで考え、自身の成長ややりがいにつながる職場環境をつくって地域貢献に取り組むとし、「諸先輩がこれまで最大限努力して今がある。一つ一つ丁寧に仕事をし、次世代の仲間に引き継ぎましょう」と呼び掛けました。
● 「強い組織を目指したい」
業務部部長の坂本は、職員、業務の質を高めるための衛生環境の整備、キャッシュレス化の推進、診療業務の効率化などを目標に掲げました。「一丸で課題を乗り越え、強い組織を目指したい。全力を尽くしていきます」と決意を述べました。
● 「人が集まる医和生会へ」
事業推進課課長の飯塚は「人が『集まる』医和生会へ」をテーマに設定。人口減少が著しい国内の情勢を示し、「『ここの企業で何か実現できるのでは』という可能性に人が集まる」と語り、採用活動を深化させた取り組みや中堅層の人材育成などに力を入れる方針を発表しました。
● 「新しい医和生会をつくる」
山内真理子理事は、各部署の報告書を読んだ上で「感動し、皆さんがいるから今の医和生会がある」と感謝。世代交代の時期で人材育成の大切さに触れ、「患者様に素晴らしい医療を提供できるようこれからもサポートしたい」とメッセージを送りました。岩井里枝子理事は創設から31年目となり「『今までがこうだから』ではなく、効率化を見直して新しい医和生会をつくっていきたい」と抱負を述べました。
● 「日々、一歩一歩積み重ねが大切」
畠山理事は①法人外に目を向ける②採用と育成③危機感の3つの重要性を訴え。高齢者などが増える一方、働き手などが減る社会環境に目を向け、採用数を増やすだけでなく各職員の力も高める大切さなどを伝えました。
山内宏之理事は「いつも頑張っている職員に感謝している」とお礼を述べました。国の社会保険料の削減で苦しい環境になり、「上手に頑張らないと収益が上がらない時代になっている」と語り「日々、一歩一歩改善する積み重ねが大切。今後もよろしくお願いします」と発表会を締めました。
● 変わるための決意
参加した部署長からは「創設から現在までの歴史を聞き、理事長の思いを感じることができた」「山内クリニックを開業した経緯を聞き、医和生会が地域の中で果たすべき役割を再確認した」といった声が聞かれ、医和生会の原点や使命を再認識する貴重な機会となりました。事業計画発表会を通じて、それぞれが責任感を新たにし、次世代を見据えた取り組みを進める決意を固める場となりました。