いわき市常磐地区のオレンジ薬局湯本南店の薬剤師・小野寺大樹さん(38)は、患者さんや地域の方々にアロマテラピーを使ったセルフメディケーションを提案しています。その人に合った香りでリラックスや集中力を高める効果があるとされ、小野寺さんの助言で睡眠剤が無くても眠れるようになった患者さんもいます。薬の販売だけではない、地域に必要とされる薬局を目指しています。
● 補完療法 アロマの魅力
小野寺さんは出身地の福島市に本社を置き、薬局や介護施設を運営する「ネットワーク調剤」の薬剤師で、今春から代表取締役になりました。アロマに興味を持ったのは2005年ごろ。アロマに詳しい知り合いから「薬だけではないセルフメディケーションの提案」の大切さを説かれたのがきっかけでした。この時、薬でなくても集中力を高め、リラックスできる補完療法としてのアロマの魅力に気付きました。しばらくアロマから離れた時期もありましたが、患者さんにきちんとアドバイスできる薬剤師をめざそうと2013年から本格的に勉強。日本アロマ環境協会のアドバイザーとインストラクターの資格をそれぞれ2014年と2016年に取得しました。
● アロマ効果 薬無しで眠れた患者さんも
実際にアロマが役立ったケースもあります。「とにかく睡眠剤を出してくれ」と過剰に服薬しようとするお年寄りにアロマを紹介したところ、薬無しで眠れるようになった方が何人かいたといいます。小野寺さんは「アロマは眠れない人に有効」と太鼓判。ほかにも、服薬指導で初めてお年寄り宅を訪問する際には、アロマを使ってお互いにリラックスできる環境をつくって会話を始めるといいます。相手に名前を簡単に覚えてもらう技もあり、小野寺さんの“勝負名刺”には「オレンジ」と「ラベンダー」を合わせた甘い香りが染み込んでいます。
● イベントで講師も務める
小野寺さんは月1回ほど、各地でアロマの講師を務めています。オレンジ薬局などが中心となって介護者を支援している「おりおりの会」(福島県伊達市)では、3年前から定期的に教室を開き、介護ストレスを抱える参加者にアロマの楽しみ方を教えています。医療・介護福祉の関係者が交流する「ケアカフェ」にも先月招かれ、介護支援専門員(ケアマネジャー)らにアロマ入りバスソルトづくりをして好評(※1)。初対面の参加者同士、香りを話のきっかけにして会話を楽しんでいました。このほか「平在宅療養多職種連携の会」で講師を務めたことも(※2)。市内の病院での糖尿病患者向けの教室や、四倉地区のいわき医療介護学校「よつくら塾」などのイベントからも声が掛かっています。
※1
「小野寺さんが講師を務めた『ケアカフェ』」 2019年6月20日投稿:https://iwakikai.jp/blog/1283/
※2
「小野寺さんが講師を務めた『平在宅療養多職種連携の会』」 2018年5月25日投稿:https://iwakikai.jp/blog/1028/
● 趣味・特技もいろいろ
特技はアロマだけでなく、剣道は3段。中学時代に全国大会で団体ベスト8、薬学部の大学生が出場する全国大会では優勝したことも。「プロレスラーをめざしていた」(小野寺さん)高校時代は柔道部に入り、個人81キロ級で県ベスト4に輝いた実績。アイデア商品づくりも趣味で、マスクを装着した時の耳のストレスを軽減させる「マスク固定フック」を開発し、現在改良しています。外出する際のスタイルは、いわき市地域包括ケア推進課が企画・情報発信している「igoku(いごく)」のロゴがデザインされたTシャツとキャップ姿。いわき市内の医療・福祉関係者の間ではおなじみの格好と認識されるまでに。住民のコミュニティスペースづくりにも積極的で、「オレンジ薬局」隣の空き店舗を買い取り「いごくBOX(ボックス)」と名付けて開放しています(※3)。
※3
「『つどいの場』づくりが進められている『いごくボックス』」2019年4月13日投稿:https://iwakikai.jp/blog/343/
● 「地域に必要だと思われる薬局に」
「アロマを通してセルフメディケーションの意識を持った市民を増やしたい」と小野寺さん。さらに「薬剤師は控えめな人が多いので、自分がどんどん地域に出ていきたい」とも。「『薬局は薬を出すだけの場所』と思われないよう、地域に必要な場所だと思ってもらえるように活動したい。自分一人だけ頑張るのではなく、活躍する薬剤師を増やして一緒に盛り上げていきたい」と目標を語っていました。
【オレンジ薬局湯本南店】
場所:福島県いわき市常磐西郷町岩崎28-10
営業時間:月~金曜日が9:00~18:00、土曜日は9:00~17:00
定休日:日曜日
電話:0246-72-1050