この講座は、いわき市のアレルギー児を育てる母親でつくる団体「もぐのび」が、公益財団法人ニッポンハム食の未来財団のアレルギー啓発に関する助成を受け、場所を提供する子育て支援団体「ウェンディ」と共同で企画しました。かつてSNSで知り合ったアレルギー児の母親数人がウェンディで定期的に交流するうち、同じ悩みを抱えるウェンディメンバーにも広がり「もぐのび」が2014年冬に誕生。そうした経緯があり、両団体は長い交流を続けています。今回アレルギー児の入園入学を控える母親をサポートしようと講座が企画され、1月11、31の両日開催されました。講師は、環境アレルギーアドバイザーの資格を持つ「もぐのび」の緑川琴江代表。31日には小学校入学を控えるアレルギー児の母親や「もぐのび」メンバー、平地区保健福祉センターの子育てコンシェルジュも参加しました。
↑アレルギー児の母親の不安を解消しアドバイスする緑川代表
● 夏から準備スタート
自己紹介の後、緑川代表が早速アドバイス。個別のアレルギー対応には手続きが必要だと説明し「『こんなこと知っているだろう』と思わず、親が先生に120%伝えないとダメ」と強調します。学校生活に潜む危険性の話題では、給食でクラスメートがアレルギーの食べ物を「アーン」と食べさせることもあるといいます。危機管理と万一の備えがいかに大切かを訴え、入学のために必要なA4用紙9枚分の準備マニュアル(※記事最後に紹介)を手渡します。準備時期は「入学前の夏から始めてほしい」と呼び掛け、入学前の健康診断が学校で行われる10、11月に面談の時期を相談し、春までに学校の「アレルギー対応」「アレルギー児の指導経験」「万一の処方薬を預かれるか」「給食」「お弁当持参可能か」などを確認してほしいと助言しました。
● 大切な学校との信頼関係の構築
マニュアルに目を通した参加者は、アレルギー反応が出ている子どもの顔写真に気付きました。緑川代表は写真や動画で先生に説明する大切さを説きます。目から耳、鼻の順番に赤くアレルギー反応が出る子なら、その経過の写真を学校側に見せ「耳が赤くなったら薬を飲ませて」「鼻に反応が出たら救急車を呼んで」など段階的に視覚的に説明できる効果をアドバイス、その画像準備も勧めました。弁当を持っていく場合、友だちから「ずるい」と責められないためにも教諭から上手に説明してもらうようお願いするのも大切。子どもを守ってくれる教諭との信頼関係の構築は必須で、対応説明をしないでクレームだけはする親だと思われないよう、医師の指示書や検査結果などの書類も準備して丁寧に説明する心得も助言しました。
↑アレルギー教育に使う紙芝居を紹介する緑川代表。一般に貸し出しもでき、問い合わせは「もぐのび」(chiwitz_typer@yahoo.co.jp)まで。
● 「準備が多い」と気を引き締める
高校の講師として教壇に立った経験のある緑川代表は教え方も巧みでプロ級。参加者は「友だちの家に遊びに行っておやつを出されたらどうしよう」といった不安を共有したり、重要なポイントをメモしていました。「いろいろ準備することが多い」と気を引き締めていた様子の参加者。アレルギーについてこれまでは自分で調べたり医師に相談していたといいますが、困った時に連絡できるよう、緑川代表と連絡先を交換して交流の輪を広げていました。
※ 「もぐのび」は講座で配布した準備マニュアルを助成を受け冊子にし、3月の完成後に無料で配布します。
↑アレルギー教育に使う冊子。貸し出しの問い合わせは「もぐのび」(chiwitz_typer@yahoo.co.jp)まで。
【関連情報】
「アレルギー疾患の現状等 平成28年」(厚生労働省ホームページより)(アレルギーとは何かや患者数などアレルギーに関する統計データも):http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10905100-Kenkoukyoku-Ganshippeitaisakuka/0000111693.pdf
「食物アレルギーの児童生徒45万人 9年で12万人増(2013年)」(日本経済新聞ホームページより):https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1601A_W3A211C1MM0000/
「続発するアレルギー事故 学校給食で何が?(2013年)」(NHKホームページより):http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3314/1.html
「給食でアレルギー事故死 娘のため母は語り続ける(2017年)」(朝日新聞ホームページより):https://www.asahi.com/articles/ASKDQ059RKDPUBQU029.html