● 同居する「未婚で無職の息子」「介護する高齢の夫」は虐待しやすい傾向
市保健福祉課権利擁護・成年後見センターが1月23日に主催した「虐待対応研修」の一環で、講義とグループワークを実施。「虐待防止とケアマネジメント」と題した講義では、上田さんは2015年の福島県内の高齢者虐待状況を解説。「通報・届出」と「虐待判断」の両件数が2013年と比べて減り、上田さんは「虐待はない」と評価して通報しない人が増えていると警告します。さらに一番多い「通報・届出者」はケアマネジャーですがその数は年々減っているといい、お年寄りと深く関わり虐待の疑いを察知しやすい立場のケアマネジャーの役割を語りました。さらに、虐待の起こりやすい家庭の傾向として「未婚で無職の息子」や「介護する高齢の夫」と同居しているケースが多いと指摘し、その場合は注意するよう助言しました。
● 社会的支援を提案し虐待を防げるケアマネジャー
虐待要因は、本人や養護者の「状態」像やその変化によるもの、経済面や社会的支援の欠如による「状況(環境・条件)」、家族関係の軋轢(あつれき)や崩壊といった「関係」の3要因に集約され、それらが個別的か複合的に関わり虐待につながると説明。その中で、ケアマネジャーは「状況」要因から生まれる虐待の防止に貢献できるとし、例えば虐待要因の4分の1は「虐待者の介護疲れ・介護ストレス」ですが、それを改善するサービスを考えることで防止できると助言しました。
● 虐待かどうか 5つの評価ポイント
虐待を疑うための評価ポイントは5つ。一つ目はこれまでと今の変化に注目した「本人の暮らし」。二つ目は、貯金や借金、生活費のやりくりといった「経済的状況」。上田さんは「経済的状況」もケアプランをたてるために必要不可欠な情報であり「聞いてください」と訴え「既往歴も聞きにくい情報のはずだが聞いているように、最初の段階で淡々と聞けばいい」と助言しました。三つ目は、部屋や台所の汚れ具合、風呂に入っている形跡などを見る「居住環境」。四つ目は、介護者の生活や配偶者の有無、趣味などといった背景を見る「養護者の暮らし」。五つ目は「養護者との関係性」で、息子が親を「お父さん」と呼ぶか「おい、こら」と呼ぶかなど言葉遣いでもその関係性が読めると説明しました。上田さんは、必要な介護をしない「ネグレクト」も説明。「高齢者や障害者が必要とする介護(福祉)サービス及び生活上の必要な支援を必要な時に必要なだけ提供しない、またはその提供を阻害すること」とネグレクトを定義して発見を呼び掛けました。
● 「疑いあれば通報して」
グループワークでは4グループに分かれて議論。要介護2の認知症が進んでいる女性(75)と収入が不安定で日中パチンコに行く長男(53)の事例を基に、どう支援するかを話し合いました。「母親が認知症であることを長男に認識させる」「栄養状態の改善のため、女性と長男ができることを指導する」「収入を把握する」「長男の人間関係が希薄なので認知症カフェなどに参加を勧める」などの意見が出ました。それを受けて上田さんは「このケースは『ネグレクト』ですよね?」と疑いがあれば通報する発想を促し、具体的なプランを複数提案することを勧めました。「疑いのある段階で通報し、関係機関と相談してケアマネとして何ができるかを話し合ってほしい」とまとめました。
【関連情報】
いわき市の権利擁護・成年後見センター:http://www.city.iwaki.lg.jp/www/contents/1001000000210/index.html
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