↑専門的なアドバイスをした田子名誉院長(左・舞子浜病院)と総合司会の木村院長(木村医院)
● 施設と地域包括支援センターの職員3人が発表
発表で登壇したのは、特別養護老人ホーム「パライソごしき」のユニットリーダー・川内勇輝さん、老人保健施設「サンライフゆもと」のリハビリ副室長・本郷文子さん、四倉・久之浜大久地域包括支援センターの社会福祉士・坂本建さんの3人。木村医院の木村守和院長が総合司会を務めました。
↑事例発表した川内さん(奥)
● 入所者らしい生活支援で食事改善
川内さんは、認知症のためなかなか飲食を取らず、排せつリズムにも問題を抱えた入所者を例に挙げました。入所前の生活を探り本人の趣味に合った時間を提供した結果、笑顔が増えてほかの入所者に話し掛けるようになり、食事を楽しめ便秘の改善にもつながったそうです。本郷さんは、夜間不眠の女性入所者の在宅復帰に関する事例を紹介。家族の希望で在宅復帰したものの、その女性は一晩ほぼ眠らず暴言も繰り返し、家族に体調を崩す恐れが生じて再入所。不眠症解消ケアの困難な事例を参加者と共有し、意見を求めました。坂本さんは、徘徊(はいかい)する父を認知症と家族が認めずにうまく支援できない事例を発表。介護に苦労してでも在宅で面倒を見たいという家族の希望に応える支援はできないかと検討課題を投げ掛けました。
● 認知症者との効果的な接し方 二つの助言
発表ごとに田子名誉院長はアドバイスし、会場から質問も飛び出しました。入所者に笑顔が増え食事改善につながった発表に対し、田子名誉院長は「ユーモア、笑顔は今の精神医学での注目のトピック」とし、精神的にリラックスできる笑いの力を説明します。その話題から田子名誉院長は、認知症者との効果的な接し方を2つ紹介します。一つは、相手に合わせる会話のコツ。認知症者は10年前、5年前、3年前など様々な時代の思い出を交錯させて話すため、聴き手がその時代に合わせて受け答えすることで「気持ちが通じた」と喜び笑顔になるといいます。「へんてこな会話になるが、それでいい」と認知症者の心を開かせる心得を助言しました。二つ目は、作業をさせた時に完結させる大切さ。例えば、包丁で野菜を切るのは得意だがほかはできない認知症者がいたら、野菜を切るまでの作業をさせ、調理中間の工程はスタッフがこっそり代行して動作をつなぎ、調味料をかけるなどの簡単な最後の工程で再びその認知症者に任せます。そのようにすると認知症者は感動するといい、田子名誉院長は「車のナビゲーションのように、道を間違っても文句を言わずに別のいい道を探してあげてほしい。しっかり直す必要はなく、完結させてゴールにたどり着かせることが大事」とアドバイスしました。不眠症解消については、会場から服薬に関して質問がありました。田子名誉院長は「勝気な性格の相手には、下がって折れる必要がある。頼んでもだめで、その人に従うフリをして誘導するように」という助言のほか、効果的な薬のアドバイスもしました。徘徊する父の認知症を認めない家族の事例については、その父が95歳と高齢であることから、田子名誉院長は、認知症を前面に出さず「これぐらいの年になると…」と家族に説明して支援を提案してはどうかと助言。さらに家族のケアがうまくいくと物事がスムーズに進むとし、「家族指導が大事」と語りました。
● 「睡眠障害」のレクチャーも
事例検討前には、エーザイの職員が「高齢者てんかん、こんな症状が気になっていませんか」と題して講話。検討後には、田子名誉院長が「高齢者の睡眠障害のとらえ方」をテーマに、不眠症ケアなどについてレクチャーしました。
● 年2回開催で今回17回目
この会は毎年6、12月に開催し、今回で17回目。市内の医療、福祉関係者らでつくる「いわき認知症を語る会」、市歯科医師会、市薬剤師会、県看護協会いわき支部、市介護支援専門員連絡協議会、老人福祉施設協議会施設部会いわき支部、県認知症グループホーム連絡協議会、地域福祉ネットワークいわき、エーザイが共催し、市医師会が後援しています。