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投稿:2019年01月22日更新:2022年12月06日

いわき医療偉人

496. この道をゆく・大河内一郎伝記⑧~ひらめいた演劇公演

いわき市平(当時の平市)に民設民営で誕生した東北・北海道初の肢体不自由児施設「福島整肢療護園」だったが、施設を拡張するためやはり資金が必要だった。補助金の制度も十分ではなかった時代。創設者の医師・大河内一郎氏(享年79)は、またしても資金調達に奔走。募金活動もうまくいかない中、全国で注目された演劇「泥かぶら」を平で公演するアイデアをひらめく。「いわきの福祉の父」と称された大河内氏に迫る不定期連載の8回目。(「地域連携・企画広報課」・西山将弘)

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↑泥かぶら演劇の記念写真=昭和28年7月(「いわき福音協会創立50周年記念誌」掲載写真)

● 悪戦苦闘続きの資金調達
1952(昭和二十七)年秋に完成した当初の「療護園」の面積は189坪。授業は廊下と食堂で行われていたため、教室の整備が必要となった。だが資金はない。行政からの補助金は運営に充てられ、設備は主に寄付に頼らざるを得なかった。大河内氏は厚生省(現在の厚生労働省)に出向いて相談し、国の補助金とは別に自力で75万円を準備できれば教室をつくれる見通しがついた。そこで本腰を入れて募金運動を展開しようと「療護園」の後援会を組織。だが「一人一円」と協力を呼び掛けたものの失敗に終わった。策もなくなり、大河内氏は宝くじを何度も買ったが外れ。療護園の敷地から温泉が湧き驚喜したが、結局収益に結びつかず夢に終わった。

● 演劇「泥かぶら」 打開策ひらめく
資金づくりに頭を悩ませていたある日、大河内氏は全国的に好評を博していた「泥かぶら」という演劇を耳にした。「泥まみれの大根」を意味するこの劇名のあらすじは、「泥かぶら」とあだ名を付けられた醜い少女が主人公。親はいなく、いじめを受けて荒れ狂っていると、旅人から「自分の顔を恥じない」「どんな時にもにっこり笑う」「人の身になって思う」の3つを守れば村一番の美人になれると教えを受ける。少女は苦難を乗り越えながら、次第に優しい人気者に成長していく。このストーリーは障がい福祉にも通じるとピンときた大河内氏は、募金活動も兼ねてこの劇を平で公演してもらおうとひらめいた。

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↑クリスマスに行われた脳性まひグループによる聖誕劇(「光の丘の子どもたち」掲載写真)

● すぐに関係者に協力訴え
大河内氏はすぐ上京し、「泥かぶら」の脚本、演出、主演を務める劇作家・真山美保氏と会う。障がい児のためにと協力を訴えたところ、真山氏はその場で承諾した。帰ってすぐに全職員で公演準備に取り掛かった。各地の婦人会幹部を回って前売り券の配布を依頼したり、街中にポスター張りに奔走したり。必要があれば、直接出向いて説き伏せた。公演当日。職員は受付、雑用、舞台の幕引きに汗を流し、子役が足りずに大河内氏の娘も出演した。会場の平市公会堂は埋まり、大成功で幕を下ろした。1954(昭和二十九)年3月、3つの学習室と2つの児童居室が完成した。

● 運営 徐々に軌道に
その後も多くの支援を受けて資金を調達した。文具メーカー「トンボ」の好意で「手足の不自由な子どものために」「福島整肢療護園」の金文字を入れた鉛筆を大量購入し、市内の学校やアメリカの協力者に販売。一部が寄付金となるとともに、障がい福祉のPRにもつなげた。そのほか、コンサートや演劇を開き、その度に職員はポスター張りやチケット販売で奔走。その努力により、福島整肢療護園の周辺には新たな施設が生まれていく。重度脳性まひ児の病棟「グリーンハウス」が1956(昭和三十一)年11月、県立養護学校が1960(同三十五)年11月、40床の重度病棟が1966(同四十一)年2月、重度身体障害者授産施設「カナン村」が1973(同四十八)年4月に誕生し、精神薄弱者更生施設「県はまなす荘」の経営も同年受託しました。「光の丘」が発展するこの間、大河内氏は県肢体不自由児親の会連合会を結成して会長に就き、県知事表彰を受け、天皇・皇后両陛下から園遊会のお招きも受けた。青年時代からの夢を形にし、社会からも認められていった。だが、情熱と行動力で道なき道を爆走してきた人間機関車は、その後重なる不幸に直面し失速していく。

<つづく>

【参考文献】
昭和三十九年十月発行 「光の丘の子どもたち」 著・大河内一郎
昭和六十一年六月発行 「大河内一郎追悼記念 ただ障害児者の友として 発行・社会福祉法人いわき福音協会
平成十二年十一月発行 「いわき福音協会五十周年記念誌 いわき福音」 発行・社会福祉法人いわき福音協会

 

【この道をゆくバックナンバー】

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