お年寄りたちが住み慣れた地域で自立した生活を送れるよう有識者から意見を募るいわき市の「地域ケア会議」は、「市地域包括ケア推進会議」「中地域ケア会議」「小地域ケア会議」「個別ケア会議」の3層からなる主に4会議で構成されます(※1)。学校区など生活地域レベルで考える「個別ケア会議」は、高齢者ケースの課題解決を探るとともにその地域で不足している支援資源を見つけるのが目的です。ここで掘り起こされた課題は、もう一段広範囲の7地区内で開催される「中地域ケア会議」に持ち上げられ、議論の材料となります。今回の見学は、「個別ケア会議」の様子を見て「サービス担当者会議(ケアカンファレンス)」(※2)とは異なる新しい視点を身に着けようと「平地区介護支援専門員交流会」が企画しました。
※1 いわき市のホームページで公開されている「市地域ケア会議」の構成図
※2. サービス担当者会議とは(独立行政法人福祉医療機構HPより):http://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/kaigo/caremanager/caremanagerworkguide/caremanagerworkguide_10.html
● 精神障害を抱える二人暮らし夫婦 どう支える
17日夜に開かれた今回の交流会は「地域との繋がりが薄い高齢者夫婦への支援」がテーマ。平地区のケアマネジャー約40人が個別ケア会議を見学しました。会議ではともに精神障害を抱える二人暮らし夫婦の介護支援を考えました。出席者は、その夫婦の担当ケアマネジャー、訪問介護事業所、福祉用具事業所、配食サービス事業所、民生委員ら関係者を含め、医師、薬剤師、作業療法士、在宅支援のNPO法人、平地区保健福祉センター、平地域包括支援センターの職員合わせて14人。担当ケアマネジャーが夫婦の生活や支援状況、身内が近くにおらず近所と交流が少ない環境などを説明した後に意見を出し合いました。ヘルパーや配食サービス、民生委員らは普段の夫婦の様子を語ります。医師が精神病の症状から「叱ってはダメ。我慢強く対応することが必要」「薬の副作用でふらつきが出ているかもしれない」とアドバイス。作業療法士は「生活環境を整えることが優先で、リハビリまではできない状態だろう」と病状改善の優先を訴えました。
● 見学者が感想を共有
グループワークでは、見学したケアマネジャーが感想を共有。「主治医以外の医師からアドバイスを受けるのは次回主治医に相談する際に良いと思う」「関わっている事業者間で同じ方向を向ける意見が参加者から出てよかった」「解決策が出ていてスッキリした感じがした」「担当ケアマネジャーが集中して意見を求められていなかったので安心した」などの声が聞かれました。
※ ほかの地域ケア会議では「体操教室」誕生などにつながった例も
会議後、「個別ケア会議」を主催した平地域包括支援センターの担当者は今回の会議について「事例の内容が重過ぎたため議論がケース内容に集中してしまい、地域の課題について深い話し合いができなかった」と話していました。ほかの「地域ケア会議」では、掘り起こされた課題が地域づくりに結びついた例もあるといいます。平地区北白土では「体操する集いの場がない」という課題から「北白土(37区)健康体操教室」(※3)が誕生し、毎月多くの住民が健康づくりに励んでいます。
※3 北白土(37区)健康体操教室の記事
「山内クリニックの山内院長が健康講話」(2017年6月28日投稿):http://ymciwakikai.jp/blog-entry-221.html
「当法人理学療法士の健康測定指導」 (2017年10月19日投稿):http://ymciwakikai.jp/blog-entry-318.html
【関連情報】
「『地域ケア会議』を分かりやすく紹介しているNPO法人地域福祉ネットワークいわき(いわき市地域包括支援センターの運営団体)の広報紙『結い』14号」:http://npo-fukushinetiwaki.com/yui/014.pdf