「医師不足」「医師の高齢化」「いわき市民は不健康」…。いわき市の医療の苦しい現実を共有し、医師と市民が解決策を考え合うイベント「じっくり、いわきの医療を語ろう」がこのほど、いわき市のいわき明星大学で開かれました。医師4人がいわき市の「救急医療の概要」や「医師獲得の取り組み」などをテーマに講演した後、市民と一緒にグループワーク。「医師同士で壁があるのでは」「医師に感謝を伝える場づくり」など、いわきの医療の不満や医師を増やす対策などを遠慮なくぶつけ合いました。
● 医療関係者や一般市民約50人が参加
医師と意見交換する場を設けて市民みんなでいわきの医療を守っていこうと「いわきの医師を応援するお姉さんの会」が1月26日に主催。医師ら医療関係者と一般市民約50人が集まりました。清水敏男市長は「今年はいわき市の健康元年にする」と決意を込めあいさつ。「お姉さんの会」の宮野由美子代表は、救急救命センターで長い時には38時間働く医師がいる一方、市民が「病院で待たされる」と不満を口にする現状に触れ、「わたしたちのために頑張る医師がいなければ医療を守れない」と、市民が現状を理解し応援する必要性を訴えました。
● いわきの現状 「ヨボヨボの医師がヘロヘロで働いている」
登壇者と講演内容は、石井敦医師(かしま病院総合診療科・家庭医)が「いわきの救急医療の概要」、緑川靖彦医師(呉羽総合病院院長)が「いわき市の二次救急病院の役割」、入江嘉仁医師(いわき市医療センター心臓血管外科主任部長)が「ドクター獲得の取り組み いわき市医療センター心臓血管外科の場合」、木村守和医師(市医師会長)が「専門医療機関とかかりつけ医の連携について~在宅医療に関連して」。石井医師は市内の勤務医数は国と福島県と比べても極端に少なく、医師の平均年齢は55.5歳で高齢だとデータで示し「いわきはヨボヨボの医師がヘロヘロで働いている」と表現。切羽詰まった現場で、救急搬送される42.3%は軽症で緊急を要する患者の治療に影響が出ている課題も共有しました。緑川医師はいわき市民の不健康なデータを挙げました。福島県民の平均寿命は男女それぞれ全国41位と43位で、いわき市民はさらに県内で悪いと説明。福島県の急性心筋梗塞での死亡数は男女ともに全国ワーストだとし、市民の健康意識の改善を訴えました。
● 市民「医療の危機を病院内で共有している?」
グループワークでは参加者が9組に分かれ「いわきの医療のここが不満」「どうすれば医師が増えるか」「急病への備え」をテーマに議論。15分ごとに2回席替えし、多くの参加者と意見を交わしました。一般市民から「『地方は患者レベルが低いから医師が行きたがらない』と聞く」「医療の危機を病院長は院内で共有しているの?」という率直な意見や、医師からは学閥頼みで呼び込む医師のターゲットを狭めている点や「(市外の自宅に通うための)交通費が安くては医師を呼び込む熱意を伝えられない」といった声も挙がり、本音で語り合っていました。
● 医師不足対策、急病の備えも考える
「ここが不満」の発表では「病院内で『ほう・れん・そう(報告・連絡・相談)』ができていない」「薬で対応できる風邪でも市民が簡単に病院に行く」「医師同士で壁があるのでは」など遠慮のない意見。医師不足の対策では「子どものころから医師になるよう育てる」「医師に感謝を伝える場づくり」「医師が疲弊しない環境づくり」「医師の妻の交流」など、急病の備えでは「普段の体調管理」「お薬手帳に既往歴を記録するなどもっと活用する」「冷蔵庫に緊急連絡先を貼っておく」などの意見が共有されました。
【関連情報】
「いわきの医師を応援するお姉さんの会フェイスブックページ」:https://www.facebook.com/pages/category/Community/%E3%81%84%E3%82%8F%E3%81%8D%E3%81%AE%E5%8C%BB%E5%B8%AB%E3%82%92%E5%BF%9C%E6%8F%B4%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%8A%E5%A7%89%E3%81%95%E3%82%93%E3%81%AE%E4%BC%9A-2107504196167517/
「いわき市地域医療を守り育てる基本条例(いわき市ホームページ)」:http://www.city.iwaki.lg.jp/www/contents/1505196310753/index.html
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「かしま病院とコラボした際の『お姉さんの会』」 2017年11月22日投稿:http://ymciwakikai.jp/blog-entry-342.html