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投稿:2019年09月03日更新:2021年05月11日

多職種連携・地域連携

658. 個人宅の手作り図書館が子どもの居場所に・八ツ坂こども文庫

いわき市平南白土の個人宅で開館している「八ツ坂こども文庫」は、学区内の児童の憩いの場になっています。「ちー館長」こと瀬川千佳子さんが自宅の一室を開放し、今年で15年目。これまで共働き世帯など様々な家庭環境の子らも含め、帰宅後に読書やピアノを楽しみに立ち寄ります。ここで過ごした時間は幼少期の思い出になり、いわきを転出してから10数年ぶりに訪ねてきた卒業生も。東日本大震災で活動が低迷したといいますが、民生児童委員も務める瀬川さんは忙しいと葛藤しつつ「もう一度かつてのように盛り上げたい」という思いでいます。

 

八ツ坂こども文庫の「ちー館長」こと瀬川千佳子さん

 

● そもそもの始まりは約30年前

「八ツ坂こども文庫」の前身となる「南白土文庫」が誕生したのは約30年前。当時子ども会の会長だったご主人とともに、賛同した近所住民の離れ家で開設したのがそもそもの始まりでした。「子どものころ、母親が給料が入る度に本を買って読み聞かせをしてくれた」という思い出が動機。6畳ほどのスペースに、瀬川さんが購入した図書も含め約1000冊を配架。学区内に児童が240人以上いた時代でにぎわっていたといいます。子ども会の会長を退任して継続が困難となり閉館しましたが、その後瀬川さんが自宅で開館するのを決意。再び集めた図書を10畳ほどの和室に備え、2005(平成十七)年7月に「こども文庫」が誕生しました。現在は3000~4000冊の絵本や児童書、漫画、小説などがずらりと並んでいます。

 

● 読み聞かせイベントも企画

東日本大震災前には、児童が毎日のように来館していたといいます。読書以外にも、瀬川さんが知り合いのピアノや英語の先生に声を掛けて読み聞かせイベントを企画。子どもたちが読み手を務めて地元お年寄りの前で紙芝居する催しも瀬川さんが企画し、児童は「こども文庫」で本番に備えて練習したり。時には、あまりに居心地がいいのか「帰りたがらないお子さんもいた」と瀬川さん。「(こども文庫で)おにぎり食べていい?」という子に「家で食べな」と帰したら、公園で一人で食べていたということもあったといいます。瀬川さんはそういった様々な家庭環境の子と触れ合いながら、安心して過ごせる場所を提供していきました。

 

 

● 久しぶりに訪ねてくるOBも

震災後は児童が少なくなって活動が停滞。現在は児童が週数回訪れる程度になり、読み聞かせイベントも最盛期より少なくなったといいます。それでも読書以外にもピアノを練習したりする子もおり、いまだ「こども文庫」は児童のよりどころ。引っ越していわきに実家のない卒業した女性は大学生になり、今年「思い出の場所をたどりたい」と瀬川さんに電話。「こども文庫」を10数年ぶりに訪ねて一泊し、幼少時代を懐かしんだといいます。

 

● 転校生に紹介

取材に行った8月27日午後3時半ごろ、小学3年生3人が来館。瀬川さんは「上がっていいよ」と声を掛けます。1人は夏に転校してきたばかりで、2人が「こども文庫」を紹介しに連れてきたという。3人は縁側の入り口から入って中を見て回り、瀬川さんとあいさつしてすぐ帰っていきました。子どもたちが別の新しい子を連れてきた出来事に、瀬川さんは喜んでいました。

 

● 子どもからお年寄りが集える場をつくりたい

瀬川さんは民生児童委員を辞めて「こども文庫」の再興に力を入れる気持ちでいましたが、再任が決まってまたしばらく様子見しているのが現状。瀬川さんは「古いバスを公園に置いて、おじいちゃんやおばあちゃんのお茶飲み場にしたい。そこに本もたくさん並べて子どもも集まれば一緒に触れ合える」と夢も語っていました。

 

【八ツ坂こども文庫】

場所:福島県いわき市平南白土八ツ坂18-1

開館時間:10:00~16:00

休館日:不在時

図書の貸し出し期間:1週間

問い合わせメール:yatusaka2007@yahoo.co.jp

 

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