市民の悩みに耳を傾け気持ちを楽にさせるいわき市の「いわき傾聴ボランティア『みみ』」が先月、活動10年目に入りました。福島県初の傾聴ボランティア団体として発足以降、「また来てね」という感謝の声を糧に、福祉施設や個人宅を精力的に訪問。介護支援専門員(ケアマネジャー)を通して依頼を受け傾聴に行くケースもあり「医療や介護福祉事業所では支援しにくいが支えが必要」という場面で存在感を発揮し、住民ボランティアが地域住民を支えています。
↑活動10年目に入った「みみ」。オレンジカフェで傾聴するメンバー(右と中央)=2017年5月12日、いわき市平地区のスカイストア● 相手を受け入れて聴く
相手の話を熱心に聴くことを意味する傾聴。このボランティアは悩みを抱える人に寄り添って傾聴し、不安やストレスを少しでも解消させようという活動です。助言や答えを押し付けず、相手の話をただ受け入れることが特徴。悩みが解決する訳ではないが、話し手は「認められた」と感じて安心感や自信がわきます。
● 養成講座の受講生有志で結成
「みみ」は2008(平成20)年4月に誕生。2006(同18)年秋にいわき市勿来地区で開かれた傾聴ボランティアの講演が好評で、その翌年に養成講座が開講。受講後、実際に活動したいと有志で結成しました。現在は平と勿来の両方部に分かれて活動し、メンバーは養成講座を修了した主に介護福祉業に携わる29人。本業が忙しく活動できないメンバーもいますが、多い人では月5カ所ほど訪問。いわき市内の認知症カフェ「オレンジカフェ以和貴」(※記事後に紹介)全7カ所には「みみ」のメンバーも参加して悩みを聴いています。
● ケアマネから依頼も
「家族の悪口ばかり言ってイライラしているご利用者様がいる。気持ちを楽にしてあげられないか」と、ケアマネジャーから依頼を受けたケースも。メンバーが月1回訪問するうちに、ストレスを抱えたその相手も落ち着くとともに、その影響で家族も穏やかになったといいます。訪問からしばらく経つとまた元の状態に戻るというも、3回目の訪問時には、その相手は楽しみに待っていてくれたといいます。「みみ」の平方部事務局の小池典子さんは「最初はたわいもない話から入る。一つ悩みを口にしてくれたら次々話してくれる」といい「相手が元気になっていく姿を見るのが何よりうれしい」と、活動のモチベーションを語ります。
↑傾聴ボランティア養成講座の修了証(名前は加工して隠しています)
● 地域を支える一翼も担う
当初は勿来地区を中心に活動していましたが、2011年の東日本大震災後に平方部班を設置し、避難所などを回って避難者の心に寄り添いました。相手の悩みを聴くことでメンバーの精神的負担も大きかったといいますが、仲間同士で相談し合い互いの心のケアをする工夫をして続けました。当時から今も関わっている避難者もいますが、施設に入所したり入院したりする人が増え、依頼人は減っているといいます。それでも、急速な高齢化に伴い住民が地域を支える体制を整えることが全国各地で急がれる中、「みみ」も地域支援の一翼を担っています。小池さんは「メンバーはボランティアをしているのではなく、させていただいている」と敬意を持って活動していることを強調し「少しでも多くの人を支えたい」と話していました。
【「みみ」の問い合わせ先】
傾聴の依頼やメンバーになりたいなどのご相談はこちら。
ウメイ会長:080-4126-9636
【傾聴ボランティア活動を広めているNPO法人】
「みみ」誕生のきっかけとなった養成講座の主催団体です。
NPO法人「ホールファミリーケア協会」(東京都千代田区):http://www5d.biglobe.ne.jp/~AWFC/