医療や介護福祉関係者がつながりをつくる「平在宅療養多職種連携の会」が18日夜、いわき市の医和生会山内クリニック会議室で開かれました。訪問看護師と介護支援専門員(ケアマネジャー)が、様々な職種が連携してケアした事例を紹介。連携により在宅で暮らせることを市民に伝える劇「地方公演」のキャストや初公演の案内もありました。いわき明星大看護学部教授やいわき市議会議員も訪れ、参加者数は過去最高の50人以上に上り、つながりの活発化がうかがえました。
● 52人が出席、市議や教授も
勉強会を通し、医療や介護福祉の多職種連携を深めるのを目的に毎月1回開催されている「連携の会」(※詳細は記事後)。この日は、医師、歯科医、薬剤師、看護師、ケアマネジャー、管理栄養士、行政関係者ら52人が出席し、いわき明星大看護学部の小林紀明教授やいわき市議会の吉田実貴人議員も訪れました。勉強会では、いわき市初の訪問看護ステーション「おりづる訪問看護ステーション」の所長・仲居美千子さんと、今年で設立20年目を迎えた「愛心会居宅介護支援事業所」の管理者・樫村恵美さんが、それぞれ事例を発表しました。
↑人工呼吸器をつけて患者を外出させた連携などを振り返った仲居さん
仲居さんは、開設から22年が経った「おりづる」での活動を振り返りました。介護保険制度が始まる前には訪問看護師が買い物、調理、掃除などをしていたケースもあったといい、当時訪問看護師の中には「なぜ家事援助するの?」「これはヘルパーの仕事だよ」という声もあったといいます。「必要あれば看護も介護も同じ」という思いでケアに当たっていたという仲居さんは、医師らとの連携不足や在宅看取りが一般的ではなかった当時、看取り希望の患者の思いに応えられなかったという悔しさも語りました。介護保険制度の開始後、医師やケアマネジャー、訪問介護士らとの連携も生まれ、それを生かしたケアの事例を紹介。人工呼吸器や胃瘻(いろう)などを施した50代女性患者を外出させたいと、「アクアマリンふくしま」に福島県で初めて人工呼吸器をつけて外出させた連携支援を紹介しました。
↑帰宅願望のある患者と不安を抱える妻への連携したケアを話した樫村さん
樫村さんは「施設から在宅復帰を目指す方への支援」と題し、妻と暮らす79歳男性の事例を発表。脳出血により重度の左まひなどを患ったその男性は、退院後リハビリテーション病棟で生活するも「自宅に帰りたい」と願いつつ、妻は「在宅介護は難しい」と悩んでいたといいます。男性の希望をかなえ妻の悩みを解消させようと、退院前に妻、看護師、作業療法士、ケアマネジャーらと会議し、男性の心身の状態を確認。妻は「排せつが自立すれば家で看てもいい」と考えるようになり、看護師や介護福祉職らと連携して自宅の環境を調べ、福祉用具を導入し訪問診療を開始、改善したと語りました。樫村さんは患者の病状や情報を家族や事業所間で連携し共有することの大切さを訴えていました。
事例発表後、市地域包括ケア推進課の猪狩僚主査が、「地方公演」のキャストを紹介し「連携の会」メンバーの医師や薬剤師、看護師、歯科衛生士、理学療法士、介護ヘルパーら計12人が出演すると発表。老老介護する夫婦を在宅支援する連携の様子を、実際の職種の出演者が演じる。“座長?”の猪狩主査は、その初舞台が草野地区の草野公民館で7月13日に開かれ、次回の「連携の会」でけいこを行うと案内しました。最後、初参加者の自己紹介もあり、若手医師をねぎらう「いわきの医師を応援するお姉さんの会」に携わる吉田市議や、地域連携も研究テーマという小林教授らがあいさつしました。次回の「連携の会」は6月15日。
【「平在宅療養多職種連携の会」とは】
いわき市平地区の医療・福祉関係者らがつながりをつくり、情報交換する集まり。毎月一回勉強会や事例を紹介し合って研さんを積んでいます。事務局は平地域包括支援センター。