● 元気に体操して楽しいカフェ
16日のカフェ開始時間の午前10時前、玄関は送迎車や徒歩で来場するお年寄りであふれます。お迎えする職員は「元気でしたか?」などと明るくあいさつを交わします。この日のプログラムは、市シルバーリハビリ体操指導士との体操。主に80代の参加者43人はいすに座り、腕や脚のストレッチをします。嚥下(えんげ)体操の一環で、30秒間に何回だ液を飲み込めるかにも挑戦。参加者の一人が「(だ液をたくさん出すには)梅干しぶら下げればいいべ」と言うと会場は笑いに包まれるなごやかなムード。「暑い暑い」と上着を脱ぐ人もいました。汗をかいた後にカフェが始まります。コーヒーとともに職員手作りのカップケーキを味わい、その作り方や作った感想で盛り上がります。孫と一緒にきた参加者の姿も。夫婦で訪れた参加者は「家にこもっているよりいい」とにっこり。終了時間の正午になると、参加者は「楽しかった」「また来るね」と笑顔で職員と握手し帰っていきました。
● 今年5月にスタート
「コミュニティーカフェ」は、地域住民が介護や健康相談できる交流の場をつくろうと、「いわさき荘」が今年5月に始めました。運営スタッフは、同施設の介護支援専門員(ケアマネジャー)3人と事務員2人。毎月第3木曜日に開かれ、毎回主に80代の地区住民が集まります。介護保険を受けていない自立したお年寄りが多く、そのほとんどはカフェを機に初めて来所した方々です。プログラムは毎回変わり、これまで医師や歯科衛生士、作業療法士らの健康講話や脳トレゲームなど。カフェでは、地区内の和菓子屋のお菓子と職員手作りケーキを準備し、ケアマネジャーら専門職が介護や健康に関する悩みにも応えます。
● 地域の方々と直接会ってPR
来場者を増やすためまず取り組んでいるのは「カフェ」のPR。2カ月に1回、運営スタッフが昼休みや業務後に各戸訪問し、チラシ300部を配り回ります。さらに、カフェの時間に「近所に引きこもっている人がいる」という情報をキャッチすれば、スタッフは後日その情報提供者と一緒に家に足を運びます。そこでの紹介を機に、カフェが外出のきっかけとなって来所した一人暮らしのお年寄りも数人います。このほか、回覧板にチラシをはさみ、地区内の薬局にはポスターを張ってもらいます。地区を回る民生委員にも参加呼び掛けの協力をお願いしています。
● 大切な足の確保
坂の上にある「いわさき荘」。アクセス面でお年寄りは苦慮しますが、その難点を無料送迎でサポートします。当日は運営スタッフ以外の職員の協力も得て、送迎車5台を走らせます。足の不自由な方の家には回りますが、歩ける住民の方々には集合場所に集まってもらいピックアップします。阿野田さんは「運転免許を返納して引きこもる方もいる」と足の確保の重要性を語り、「送迎付きカフェ」は移動手段のない住民が外出するきっかけにもなっているようです。
● 要望を聞き実現へ
「参加者がやりたいことができるカフェ」をめざし「カフェの時間に知りたい情報ややりたい事を聞いています」と阿野田さん。来月にはクリスマス会を開催し、合唱など出し物を披露したい参加者のためにその舞台を準備します。発表会を企画することで地区住民の生きがいを引き出す狙いも。阿野田さんは「地区の方々の希望を引き出し、運営側は場所の準備や必要あれば地域への働き掛けなど、それを実現させるためのサポートに徹します」と「いわさき」スタイルのプログラムづくりを語りました。
● 喜ばれてモチベーション向上
PR活動や送迎、企画、準備などスタッフの負担は大きいです。継続するのは簡単ではないように思えますが、阿野田さんは「多くの人が来てくれて『楽しかった』と喜んでもらえると頑張れる」と話します。来場者が喜ぶことで次の準備に力が入り、さらに来場者の満足度が上がるという好循環が、スタッフのモチベーションに。運営費は、入場無料で送迎や提供するお菓子などに費用がかかりますが、地域貢献のためと施設が負担しています。
● 施設の雰囲気を体感
「施設は姥捨て山」と思うお年寄りは多いといいますが、「『施設がこんなに明るいとは知らなかった』と驚く参加者もいる。毎回来るたびにおしゃれをしてきて、カフェを楽しみにしている様子です」と阿野田さん。「今後も気軽に集える場所をつくりたい」と話していました。
【コミュニティーカフェいわさき】
場所:特別養護老人ホーム いわさき荘(福島県いわき市常磐上湯長谷町上ノ台88-1)
日時:毎月第3木曜日午前10時から正午
電話:0246-44-5660
参加費:無料
無料送迎:有り