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投稿:2017年08月17日更新:2021年05月12日

多職種連携・地域連携

120. 介護職志願者は家族の影響大?・課題の人材不足

全国的に人手不足が喫緊の課題とされている介護職。超高齢化社会を迎えるに当たり介護職を志す若者が少なくなれば、将来介護サービスの縮小や質の低下にもつながりかねません。福島県の介護分野の求人倍率は全国的に高く、人手不足は著しい。いわき市内のある高校では、介護職を希望する高校生は減っているとの声。その高校や当法人の高卒新入職者の意見をまとめると、介護職志望の生徒は家族の影響を受け、家庭での祖父母との触れ合いが動機に関連している傾向が見受けられます。人材不足の問題は全国各地でも見られ、介護職員の安定的な人材確保に向けさまざまな取り組みが展開されています。

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↑ご利用者様が輪投げを楽しんだ医和生会「やがわせデイサービス」=2017年8月1日

● 介護の人手不足が顕著な福島県
厚生労働省の「職業安定業務統計」によると、2014年7月の有効求人倍率で、全分野と介護分野の全国平均がそれぞれ、0.95倍と2.19倍。全国的に介護職の人材不足がうかがえ、その中でも福島県の介護分野の求人倍率は、2.5倍を超えて全都道府県で上位に記録されています(※1)。その解決に向けた全国的な動きも出ており、厚生労働省は、質の高い人材の安定的な確保をめざした「介護人材確保地域戦略会議」(※2)を2014年から定期的に開催しています。最新の県内の有効求人倍率は、ことし6月の福島労働局の発表で、全体と介護の倍率がそれぞれ、1.18倍と2.83倍(※3)。いわき市の雇用情勢は、市商業労政課が管理する市就職応援サイト(※4)によると、ことし6月の求人倍率は1.46倍です。

※1
都道府県別有効求人倍率 (640x329)

※2
介護人材確保地域戦略会議(厚生労働省のホームページ)

※3
福島県 求人数 (640x398)

※4
いわき市就職応援サイト

● 高校の進路指導者 「介護職希望の生徒は減っている」
3年生の約半分は就職するといういわき市内のある公立高校の進路指導担当者は、介護福祉職を希望する生徒について「間違いなく減っている」と話します。例年、大半の男子、女子はそれぞれ製造業、事務系の職種を希望し、介護福祉職をめざす生徒はわずかのようです。その理由について「介護職員による虐待のニュースや、『大変な仕事』というマイナスのイメージがあるのではないか」とその担当者。介護福祉を志す生徒は、介護職に携わる親や知り合いから話を聞いている傾向があると話します。さらに、求人倍率が高い時期はいろいろな職種に目を向ける生徒は少ないといい「この状況はしばらく続きそう」と予想していました。

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↑ご利用者様と会話を楽しむ猪狩さん=2017年8月16日、いわき市の医和生会「やがわせデイサービス」

● 将来祖母を介護したいと介護士に
その高校の話に沿うように、医和生会への高卒介護職受験者は少ないのが現状。採用担当の企画課・飯塚大輔課長は「求人倍率が低かった東日本大震災直後は志願者が増えたが、その後減っている」と語ります。医和生会に今春高卒で入職し、現在「やがわせデイサービス」で働く猪狩翼さんは、将来祖母が介護を必要となった時に力になりたいと介護士を志しました。中学3年生時に曽祖母が亡くなり、生前何もできなかったという無念さが原動力。介護職に携わり、猪狩さんは「ご利用者様からお礼を言われた時に、『力になっている』と実感でき、充実を感じる」と話します。社会福祉法人「いわきの里」の新入職者の介護士・田子大地さんも5月の取材時、志望動機について祖父が倒れた時に介護ができなかった悔しさを挙げました。介護職への志望動機と子どものころの祖父母との関わりは、大きく関連しているようにも思えます。

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↑ご利用者様を前に体操する田子さん=2017年5月30日、いわき市のいわきの里地域密着型特別養護老人ホーム「サンシャインよしま」

● 全国でもさまざまな取り組み
3年前から定期的に開催している厚生労働省の「介護人材確保地域戦略会議」。同省のホームページによると、ことし6月の会議では、長野、島根、京都の1府2県の介護人材確保の事例発表がありました(※4)。長野県は、都内の銀座にあるアンテナショップと連携して説明会を開き、県外から介護人材を6人誘致した例を紹介。島根県は、介護職への再就職を支援するコーディネート事業を展開。県内東西に各2人のコーディネーターを配置し、元介護職者、転職者、子育てが落ち着いた主婦らに向けて相談支援しました。京都府は、福祉業界のイメージアップのため人材育成に積極的な事業所に府のお墨付きを与える「福祉人材育成認証制度」などの取り組みが紹介されました。介護職の人材確保は全国的な課題。人手不足解消へ、今後も取り組みが続きそうです。

※4
長野県の事例
島根県の事例
京都府の事例