● 10年以上前から在宅医療
「わかば」は神奈川県を中心に、首都圏や東海地方に計40店舗を構えるチェーン店の薬局。10年以上前から在宅医療に取り組み、現在約110施設の訪問を通して患者約4500人に服薬支援をしています。講演会はその全国的に注目されている取り組みを学ぶために企画され、講師の臼井社長が「特定施設在宅から始まるわかば的フィジカルアセスメント~『あっかんべぇ』と薬局スタッフ職能の拡大への試み」と題して講話しました。
↑施設訪問を通した在宅医療に取り組む薬局「わかば」の臼井社長
● 患者を見る薬剤師へ
臼井社長は、薬剤師ではなく特定看護師に薬剤業務へ積極的な関与を求めている臨床現場の動きを語り、「薬剤師は本当に患者様を見ていたか」と訴えます。カウンターで薬を手渡して業務終了ではなく、患者の服薬状況を確認、薬の効果や副作用などの情報を医師らと共有し、医療チームに加わることの大切さを主張。薬剤師の仕事は、人工知能(AI)によって10年後に消える仕事にも生き残る仕事にもリストアップされていないとし、「何かをすれば残る。残さねばならない」と活躍の場を広げる攻めの姿勢を強調しました。
● 大切な介護士との連携
薬剤師がより患者を見るため、介護士と薬剤師の連携を紹介。患者を見る頻度は、訪問医師が月2回、訪問薬剤師が週2回以上なのに対し、施設介護士は毎日で、日ごろの体調を把握するためには施設との連携が欠かせないと説明します。「わかば」は積極的に施設で勉強会を開き、薬剤師が講師となって施設職員に服薬指導。そこで交流を深めながら、患者の情報を共有しケアしています。
● 独自のフィジカルアセスメント
「患者の体調が変化しないことにも気付くのが大事」と臼井社長。慢性疾患の患者に医師が変化に気付くのは当然とし、変化のない確認を含めた「フィジカルアセスメント」にも取り組んでいるといいます。その一例で、商標登録もしたという「あっかんべぇ運動」を紹介。体調をチェックするためのシートには、下まぶた裏の結膜の色を「白~薄ピンク」から「濃赤色・濃血色」まで見る濃淡の5段階と、舌の表面を「濃赤色でブツブツ斑点」「灰色~茶色」「白色」「黄色(乾燥)」「黒色(乾燥)」の5種類で分析するスケールが記載されています。患者にあっかんべぇをさせ、このシートを基に、結膜の色で貧血の具合を確認、舌の色や状態から、胃炎、肝炎、肺炎といった病気の予兆や水分不足などを見ます。この活動から早期治療に生かされた事例もあったといいます。このほか、臼井社長は薬剤師以外の職員も活躍する「居宅療養事務支援センター」の役割についても紹介しました。