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2019年12月04日

在宅診療 医和生会の研修・ケア事例発表 コラム - 岩井里枝子

721. ケア事例発表会2019 ①~訪問診療・岩井里枝子の基調講演

当法人医和生会はこのほど、日ごろの医療と介護を紹介する「ケア事例発表会」をいわき市競輪場サイクルシアターで開催しました。テーマは「在宅看取りの実践と課題」。当法人の岩井里枝子医師が「『笑って死ねる在宅療養』を目指して」と題し基調講演し、訪問診療科看護師、介護支援専門員(ケアマネジャー)、小規模多機能型居宅介護施設の看護職員の3人がそれぞれ体験したケアを発表しました。登壇した4人の講演・発表を4回に分けてご紹介いたします。初回は岩井医師の基調講演。

 

「笑って死ねる在宅療養を目指して」と題して基調講演した岩井里枝子医師

 

● 「笑って死ねる在宅療養を目指して」

「抵抗がある方も多いのでは」という演題「笑って死ねる在宅療養を目指して」を掲げた理由で、岩井医師は日ごろの在宅医療を通し「誰のための医療か」「目の前の患者様に何が最善か」「何を目標に在宅医療を継続すべきか」の考えに基づくと語りました。通院困難な患者様の家に医師が訪問する在宅医療と入院医療の違いを説明。在宅医療は患者様は自宅で過ごすため「生活」に制限がない一方、治療内容は医療機器や医師とのアクセス面に制限があります。逆に入院医療は「治療」を最優先にできる一方で生活に我慢を強いられます。「『生活の質の向上』を大切にしている」と語る岩井医師は、生活面の我慢や犠牲、身体的痛みを伴わないよう施すのが在宅医療だと説明しました。

 

● 「その人らしい生活が送れるように」

在宅医療で大切にしている事では、「治療・療養を受ける本人の思い」を一番に考え、そのために患者様とご家族が病状や現状をどれほど理解しているかを常に意識しているといいます。その理解の上で患者様とご家族の希望する治療のかい離に注意。我慢を強いる治療を望まない患者様と逆に希望するご家族の間で職員は悩む事があるといいますが、岩井医師は「治療を受ける本人の希望を尊重し、その人らしい生活が送れるよう医療を施したい」と語りました。

 

● 生活の質が低下する例

入院医療で病気を改善できたものの生活の質が低下してしまうよくある例も紹介。なんとか自宅で自立生活できている認知症の患者様が誤嚥性肺炎を発症すると、ご家族は点滴を希望します。ですが患者様が針を繰り返し抜いてしまい治療ができなくなると、ご家族は入院を望みます。入院すると慣れない環境のため暴れ、身体抑制を受けながら治療。結果、肺炎は治るも認知症が進行して寝たきりになって生活の質が低下。最終的に介護の限界を感じたご家族は施設入所を希望します。岩井医師は「人間らしい生活を犠牲にして病気を治しても、本人はそれを望んでいるのか。医療は何のためにするのか、私たちも悩む」。基本的に生活制限のない在宅療養は望みに応えられるといい、誰にでも訪れる人生の終末期を幸せに過ごすため、希望を聞き出し、ご家族は弱っていく患者様を見守る勇気を持ってほしいとも呼び掛けました。

 

 

● 本人の希望をかなえる医和生会の在宅医療の例1

岩井医師は「医和生会の在宅医療」が分かる2つの事例を紹介。点滴と投薬治療するも衰弱が進行したがんの80代男性が「生きているのが限界」と弱音を吐き、本人とご家族の希望に沿い延命治療を中止しました。ご家族から「元気なころは毎日近所のスーパーに出掛けていた」と聞き出した担当医師は「もう一度行きたいか」を尋ねると、患者様は「うん」と力強く答えたといいます。体力的限界が迫り、翌日に医師と付き添っての外出を決め、ご家族に「急変の可能性もある」と告げ準備を進めました。患者様は着る服を自分で決めて壁に掛け、久しぶりに親せきに電話したといいます。ですがその夜、外出を楽しみにしたまま他界してしまいました。ご家族は悔しさの一方、明日の希望を持ったまま亡くなったのを喜んでいたといいます。

 

● 本人の希望をかなえる医和生会の在宅医療の例2

2つ目は「懐かしの我が家へのお出掛け」の事例。寝たきりで胆石による胆管炎を繰り返し、仙骨部に重度の褥瘡(じょくそう)のある90代女性を紹介しました。次に胆管炎が起こったら最期だろうと判断した岩井医師は、相双地区の自宅に行きたいという女性の希望を聞き出します。東日本大震災によって転々と避難生活し、自宅が気がかりだったといいます。ご家族と相談し、車で1時間半かかる自宅まで外出。家で2、3時間過ごし、女性は「よかった。もっといたかった」と喜び。岩井医師も「私たちのモチベーションにもつながった」と喜び、その後女性は発作を起こさず、高年齢にも関わらず褥瘡も治ったといいます。

 

患者様の自宅で治療に当たる岩井医師(左)

 

● 医療に縛られない在宅療養を提供したい

岩井医師は今年亡くなった祖母の最期のエピソードも披露。小さくなった姿に涙し、「辛い事はない?」と尋ねても「大丈夫」と気丈に振る舞っていたという。「祖母の喜ぶ事は何か」を家族で話し合った結果、住み慣れた自宅で少しでも過ごしてほしいと、施設から自宅に一日だけ帰宅。施設に戻って落ち着いた生活を送り、穏やかに亡くなったといいます。岩井医師は医療に縛られない在宅療養を提供したい想いを述べ「一人一人の患者様やご家族と向き合い、笑って死ねる在宅療養を目指していきます」と目標を語りました。

 

「ケア事例発表会」は今年5回目で、11月18日に開催されました。今年の事例発表者は山内クリニック診療科の鈴木由紀子、居宅介護支援事業所の小林悟、小規模多機能型さらいの高山寿子の3人。

 

 

(続く)

 

【当法人の訪問診療ホームページ】

https://iwakikai.jp/service/homecare/

 

【ケア事例発表会の過去記事】

<2018年>

「『死に方を識(し)る』・山内宏之医師の基調講演」 2018年9月21日投稿:https://iwakikai.jp/blog/694/

「老老介護の患者にケア・コスモス訪問看護」 2018年9月22日投稿:https://iwakikai.jp/blog/692/

「在宅復帰を実現・小規模多機能型さらい」 2018年9月25日投稿:https://iwakikai.jp/blog/690/

「いわきの里のケアガイドライン制作プロジェクト」 2018年9月26日投稿:https://iwakikai.jp/blog/688/

<2017年>

「『こんにちは 家庭医です』・岩井里枝子医師の基調講演」 2017年8月22日投稿:https://iwakikai.jp/blog/2321/

<その他、当法人の研修>

https://iwakikai.jp/blog/?c=%e5%8c%bb%e5%92%8c%e7%94%9f%e4%bc%9a%e3%81%ae%e7%a0%94%e4%bf%ae