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コラム

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2020年05月02日

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【コラム24・雑談】名著から考える外出自粛を乗り切る心得(事業推進室・西山将弘)

新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、「不要不急」の外出自粛を余儀なくされています。ゴールデンウイーク中に家で過ごし続けるのは社会のためとはいえ、まさに“苦行”という方もいるのでは。これを乗り越えるための物の考え方、絶望から希望の光を見出す心得を、名著を参考にして考えます。(事業推進室・西山将弘)

 

取り上げる本は「夜と霧」。精神科医のヴィクトール・フランクルが、第二次世界大戦中、ナチスのアウシュヴィッツ強制収容所に送られた体験を心理学の視点で綴ったものです。強制収容所では名前でなく番号で呼ばれ、食料もろくに与えられず、寒い冬も防寒着もなく強制労働させられます。いつ毒ガス室に送り込まれるか分からない、心身の極限状態の日々が前半に記録されています。この名著の興味深いところは、この非情の世界を最後まで生き残れた人はどういう特徴があったかを、冷静に分析しているところにあります。

 

フランクルはこんな趣旨を書いています。最後まで生き残った人は体が屈強で体格のいい人ではなかったと。それはどんなに絶望しても感動できる人だったという。一部抜粋します。

 

「われわれが労働で死んだように疲れ、スープ匙を手に持ったままバラックの土間にすでに横たわっていた時、一人の仲間が飛び込んできて、極度の疲労や寒さにも拘らず日没の光景を見逃させまいと、急いで外の点呼場まで来るようにと求めるのであった。そしてわれわれはそれから外で、西方の暗く燃え上がる雲を眺め、また幻想的な形と青銅色から真紅の色までのこの世ならぬ色彩とをもった様々な変化をする雲を見た。〜中略〜 感動の沈黙が数分続いた後に、誰かが他の人に『世界ってどうしてこう綺麗なんだろう』と尋ねる声が聞こえた。」

 

どんなに苦しい環境に置かれても、世界を美しいと感じられる心に胸を打たれます。収容所では時々臨時の演芸会が催され、笑ったり泣いたり、歌や詩、収容所生活の風刺的な冗談が支えになっていた点も書かれています。疲れていても、スープの分配にあずかれなくても演芸会に行く囚人もいたという。心の豊かさが生きる支えになっていました。

 

さらにフランクルは絶望との戦いを書いています。ある時、囚人の仲間が「3月30日に戦争が終わる」と告げる夢を見た話をしました。彼は希望に満ちていたといいます。ですが、どんどんその日が近づくも入ってくる情報は一向に解放の可能性を感じさせないものでした。すると3月29日に発病して翌日亡くなってしまったという。クリスマスと新年に大量の死亡者が出たのも、「きっとクリスマスには家に帰れるだろう」という希望に身を委ね、かなわなかった失望が囚人を打ち負かしたとも綴っています。絶望している人間に教えなければならないことを、フランクルはこう言います。「人生から何をわれわれはまだ期待できるかが問題なのではなくて、むしろ人生が何をわれわれから期待しているかが問題なのである」。

 

話を現代に戻します。この外出自粛の中、窓の外に映る自然に目をやって感動を探してはどうでしょう。移りゆく雲や光を見つめて自然の美しさを感じる。昭和のドラマのシーンにありそうな、ちゃぶ台を囲んで家族みんなで歌を歌って笑い合うとか、絵を描いてみるとか、詩を書いてみるとか。たわいもないことでも豊かな心が非情の世界で我々を支えてくれるはず。人生の目的を見つめ直して生きる力が得られれば、絶望に耐える勇気が生まれるはずではないでしょうか。