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投稿:2018年12月06日更新:2021年05月15日

いわきの医療

461. がん研究、がん患者、遺族の経験を語る・日本対がん協会の垣添会長が講演

日本対がん協会の垣添忠生会長を招いた「在宅医療市民公開講座」がこのほど、いわき市総合保健福祉センターで開かれました。国立がん研究センターの名誉総長でもある垣添会長はがんの基礎研究者でありながら元がん患者で、さらに愛妻をがんで亡くした経験も持ちます。それぞれの立場から講話し、がんの医学的解説のほか、妻を失った絶望から立ち直った体験談を伝え、人間のはかなさと力強さを説きました。講演の前には、市内の医療福祉関係者らでつくる「劇団たっしゃか」が寸劇を披露し、がん患者でも在宅生活でき、悔いのないよう検診を受ける大切さを訴えました。

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↑「人はがんとどう向き合うか」をテーマに講演した垣添さん

● がんの受け止め方 人それぞれ
垣添会長は「人はがんとどう向き合うか」をテーマに講演しました。日本では2人に1人ががんにかかり、年間100万人のうち38万人超が亡くなっていると説明。がんは細胞の病気で、がん遺伝子の活性化やがん抑制遺伝子の不活化によって発症すると解説しました。がんの原因は食事が35%、たばこが30%、感染症ウイルス細菌が10%で、生活の習慣や環境が大きく影響するとも話しました。がんを受け止める多様な患者の価値観も紹介。芸術的エネルギーを維持するため性機能を保ちたいと前立腺がんの手術を拒否する画家や、逆に潜在がんでもどうしても手術してほしいという85歳の患者、早期がんと知って失禁、失神した患者もいれば、体中に転移しても淡々と化学療法を受ける患者もいたといいます。垣添会長は「人間の強さ、弱さをすべて包摂して医療はある」と述べました。

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● 愛妻を亡くし絶望 登山と出会い前向きに
垣添会長は愛妻の1年半のがん闘病を振り返りました。亡くなる間際、意識がなかった妻が半身を起こして垣添会長の手を握り、目を見つめて倒れ、息を引き取ったといいます。「心の通い合いが最後にあった」と妻に感謝する一方、それから失意のどん底に。ひたすら泣き、アルコールにもおぼれたエピソードも披露。「覚悟はしていたが、会話できなくなったのが辛かった」と3カ月間の苦悩を語りました。生きることに前向きになったきっかけは登山。飲み屋で偶然出会った客に誘われたのを機に始め、それからカヌーや居合、執筆など様々なことに挑戦するようになり「悲しみを抱いたまま生きる術を身に着け始めた」と語りました。人間は10の27乗メートルの宇宙と10のマイナス35乗メートルの素粒子の自然界の間に漂うはかない存在とも。そんなちっぽけな存在でも「意志を持つと強い」と話し、エベレストを登頂した登山家メスナーや月面着陸したアームストロング、世界最深のマリアナ海溝に到達したトリエステを例に人間の強さを説きました。

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↑「家族ががんで在宅療養するとき」をテーマにした寸劇

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↑寸劇を披露したメンバー

● がんを患っても自宅で暮らせる 寸劇で紹介
講演の前段では、劇団たっしゃかのメンバー8人が「家族ががんで在宅療養するとき」と題した寸劇を披露。当法人からコスモス訪問看護ステーションの訪問看護師が訪問看護師役、鈴木直樹(居宅介護支援事業所)がケアマネジャー役でそれぞれ出演しました。精密検査を受けずにいた結果、大腸がんで救急車に搬送された患者を在宅で支えるストーリー。患者は退院を希望するものの家族は不安を抱える中、退院に向けて本人と家族、医師、医療相談員、薬剤師、ケアマネジャー、訪問看護師が話し合い。がんを患っても在宅で暮らせると安心し、入院時よりも穏やかに過ごせるようになりました。看取りの場面で家族は「あっけない最後だったけど、充実した時間を過ごすことができました」と医師らに感謝。最後に家族は「検診は定期的に受けるべきだった」「精密検査に行かせず、後悔してもしきれない」「エンディングノートを元気なうちから用意して」と観客に呼び掛けました。公開講座は市と市医師会が11月17日に共催しました。

【関連情報】
「日本対がん協会ホームページ」:https://www.jcancer.jp/

「垣添さんの体験談(アストラゼネカ株式会社ホームページより)」:https://www.az-oncology.jp/experience/message/09/profile.html

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