多機能型重症心身障がい児(重心児)者デイサービス「かむ」が、いわき市平地区にオープンしました。NPO法人ままはーと(同市好間地区)が運営する2事業所目で、重心児者が高校卒業後も通える、いわき市で数少ない施設です。オープンから1カ月が経過したこのほど、今春高校を卒業して通い先が無くなる恐れもあった子が楽しい時間を過ごしていました。同法人の笠間真紀理事長は「重心児者や介護する家族の存在をもっと地域住民に知ってほしい」と話しています。
● ままはーとの2事業所目
「かむ」は2018年2月に好間地区で開所した多機能型重心児者デイサービス「どりーむず」(※1)に続く「ままはーと」の2事業所目。「どりーむず」は小学生から高校生までが通える「放課後等デイサービス(放デイ)」施設ですが、「かむ」は「放デイ」に加えて高校卒業後も通える「生活介護」も提供します。5月1日にオープンした2階建て住宅。1階にカウンターキッチンの付いた指導訓練室16平方メートルと風呂、トイレ、2階は相談室とスタッフルームがあります。利用登録者数は6月8日現在で7人(うち「生活介護」1人)。1日5人定員で、看護師、作業療法士らスタッフ8人が支援しています。
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「どりーむず開所」 2018年2月19日投稿:https://iwakikai.jp/blog/1595/
● 高校卒業すると通える施設が少ない地域課題
「かむ」誕生の背景には、重心児が高校を卒業すると通える施設が少ないいわき市の課題がありました。重心児はたん吸引など24時間付き添いのケアが必要で、家族は寝る時間も削る生活をしいられます。その家族がリラックスするためにも子どもを一時預かる施設の期待は大きいのですが、医療技術の発達による重心児者の長寿命化もあり施設数が不十分だと「ままはーと」の笠間理事長は指摘します。そのため、高校卒業時に施設の空きがないと、家族が協力して24時間付き添いのケアをしていくか、市外に入院・入所させて離れ離れになるかが主だという。そういった高校卒業後の受け皿を増やそうと「かむ」が誕生しました。
● 「かむ」で楽しい時間過ごす
オープンから1カ月が過ぎた6月9日の午前、「生活介護」サービスを受ける利用者1人が来所。今春高校を卒業するまで「どりーむず」に通っていたこの子は、「かむ」がなければ週の半分以上を自宅で家族が付き添う状況でした。この日は「どりーむず」に音楽ボランティアが来所するため、そちらで午前中を楽しみました。昼前に車送迎で「かむ」に戻ったその子は、スタッフから「音楽どうだった?」と笑顔で迎えられます。「七夕の歌は歌った?」と質問されると、目をキョロキョロ、足を上げて応えていました。お昼時間は看護師スタッフから胃ろうで食事をいただき、指導訓練室には大好きなK-POP音楽が流れます。食事が終わると、エアレースパイロットの室屋義秀さんが「かむ」の上空に「にこちゃんマーク」を描く“サプライズ”も。「室屋さーん!」と上空を指差すスタッフと一緒に、窓際に近づいて快晴の空を見上げました。午後はお風呂やリハビリで過ごし、放デイを利用する子2人も加わり楽しい時間を過ごしました。
● 「重心児と支える家族の存在を知ってほしい」
笠間理事長は、重心児と介護する家族の高齢化、「医療的ケア児」(※2)の支援不足の課題を挙げ、今後さらなる支援施設が必要だと考えます。「ままはーと」は「生活介護」する3事業所目「とぅるー」の立ち上げも計画中。笠間理事長は「重心児と支える家族の存在を地域住民に広く知ってもらいたい」と、今後の課題も話していました。
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「医療的ケア児の地域支援を考えた『医ケアカフェ』」 2020年3月4日投稿:https://iwakikai.jp/blog/3552/
<「かむ」スタッフ募集>
「かむ」は看護師、リハビリ職、保育士を募集。詳しくは以下よりお問い合わせください。
【多機能型重心児者デイサービス「かむ」】
住所:福島県いわき市平久保町47-5-B
営業時間:午前9時~午後5時
休業日:土日祝日、年末年始
電話:0246-38-7759
<ままはーと>
ホームページ:http://mamaheart-iwaki.com/