今回は皆さんには馴染みのない病気かと思いますが、感染性心内膜炎とは、心臓の中の弁や、内膜に細菌などがつき、高熱や心不全、脳梗塞、脳出血などを起こす恐い病気です。感染性心内膜炎になりやすい心臓病があり、それを持っているとハイリスク患者といわれ注意が必要です。また、この病気の誘引となる医療処置も分かっており、これらを理解していれば予防や早期発見も可能です。さらに日常生活での注意点などについても知っておくと良いでしょう。紙面の都合でハイリスク患者の詳細については循環器科で聞いて下さい。
ハイリスク患者の場合には抗菌剤の予防投与が必要とされる医科や歯科の処置については記載しておきます。
(1)出血や根尖を超える大きな侵襲を伴なう歯科手技(抜歯、歯周手術、スケーリング、インプラントの植え込み、歯根管に対するピンなどの植え込み、など)
(2)人工弁や人工物を植え込む開心手術
(3)耳鼻咽喉科手術(扁桃摘出術、アデノイド摘出術)
になります。また、抗菌剤の投与をしても良いと思われる手技として、呼吸器、消化管、泌尿生殖器(産婦人科も含む)、循環器、皮膚科などの手術や処置が言われています。循環器学会では手遅れになる症例を減らす目的でハイリスク患者への次のようなガイドメモも提案しています。御希望の方は循環器科へ相談して下さい。お大事に!
※ガイドラインの一部のみ記載しております
「あなたは、感染性心内膜炎(…)をおこしやすい心臓病があります。
1:必ず、主治医の視界にそのことを伝えて、適切な予防処置を受けてください。
2:歯槽膿漏や、歯の根まで進んでしまった虫歯などを放置しておくと感染性心内膜炎を引き起こしやすくなります。定期的に歯科医を受診して口腔内を診察してもらいましょう。
3:口腔内を清潔に保つために、歯ブラシや歯ぐきのケアを怠らないようにし、正しく歯科医の指導を受けてください。
4:手技や手術を受ける前に、実施医に感染性心内膜炎になりやすいことを伝えてください。
5:高熱が出た場合、その熱の原因が特定出来ない場合や、すみやかに解熱しない場合には、安易に抗菌薬を内服してはいけません。その場合には、循環器科の主治医に相談してください」
山内 俊明
※この記事は、朝日サリー(2010年10月号)「ハートでクリニック」に掲載されました