避難に助けが必要な災害弱者の居場所を事前把握して備えようと、いわき市内の選ばれた地区で毎年「避難行動要支援者マップ」づくりが行われています。各住民が知っている「要支援者」宅を共有して地図上で“見える化”し、話し合いを通して支え合う意識を高めています。完成したマップは住民役員や消防団が共有し、防災や平時の見守り活動に役立てられます。市から受託してマップづくりを進める市社会福祉協議会(市社協)は、令和元年東日本台風の水害に見舞われた地区にも対象を拡大しながら展開していく計画です。
● 東日本大震災を機に開始
このマップづくりは東日本大震災を機に、2013(平成二十五)年度に始まりました。目的は災害に備え、お年寄りや障がい者などの居場所のほか、避難所、避難ルート、支援者などを事前に把握し、住民同士で支え合う仕組みをつくること。2015年度までは国の復興予算で行われ、翌年度以降は市が主催。主に津波や土砂の被害に見舞われた地区を対象に、毎年約10地区で作成・更新してきました(※)。
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● 援護が必要な世帯を色分け
マップの作成には、対象地区の区長、民生児童委員、老人クラブ、消防団、自主防災組織の住民代表ら、市社協や行政の関係者らが集まって情報を共有。拡大コピーした住宅地図を基に、「一人暮らし高齢者」「高齢者のみ世帯」「寝たきり高齢者」「障がい者」「小学生以下」など援護が必要な世帯を色分け。「民生児童委員」「区長」などの支援者世帯、「公民館」「避難所」「集会所」といった社会資源、避難ルートや危険カ所もチェックします。作成されたマップは地区役員や消防団らで共有され、災害時だけでなく、見守り活動や避難訓練といった平時でも役立てられています。災害弱者の居場所が“見える化”されたことで、これまで名簿だけだった役員の引き継ぎも効率的になっているという。
● 住民同士で情報交換 支え合い考える
市社協平地区協議会のマップ作成担当者は、住民各々が把握している情報を地図上で一つに集約する情報交換を行うことで支え合いを考えるようになり、知っているようで知らなかった住民の現状に気付ける、と話し合う効果を感じています。本年度の作成は現在、去年水害に見舞われた地区を対象に実施を呼び掛けているところ。同じ担当者は「今年は新型コロナウイルスの影響で、多くの地区が総会や役員会も開けていない状況。マップ作りができるかどうか…」と不安視するも「去年大きな水害に見舞われ、住民に危機感がある今だからこそ進めなければいけない」とマップ作成の意義を語っていました。
【避難行動要支援者マップ作成事業(いわき市社協ホームページ)】
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