食事をするとき、一人前で同じ飯の量なら、大きなオニギリ1個とお寿司(10個)のどちらを選びますか?普通はお寿司でしょうね。しかし、お薬の場合は逆になります。薬の数が少ない方(1錠:オニギリ1個)を好むようです。薬の数が10錠(お寿司)を処方すると嫌がられます。
高血圧治療の場合に、他の疾患(心疾患、慢性腎臓病、糖尿病など)があれば、その病態に合わせて投与する薬を少しずつ調整します。まず、1種類の薬を少量だけ投与し血圧の変化をみて、同じ薬を増やさないで別の薬をそれぞれが互いに副作用を打ち消してくれるように考えて追加します。お寿司を客の好みに合わせるのと同じです。副作用に気をつけながら少しずつ異なる薬を追加すれば錠数が増えます。
すると、患者さんは「こんなに沢山の薬を出して、薬漬けにするつもりか!?」と怒ります。そこで怒っている患者さんへ、「大きいオニギリ1個とお寿司10個、どっちが好きですか?」と聞きます。最初は、「?」となりますがきちんと説明すると大概の患者さんは納得してくれます。
もちろん、不必要な薬は投与しない方がよいので、白衣高血圧で薬の増えすぎを予防するため、家庭血圧(自宅で起床時と就寝前に血圧測定しその週毎の平均値)を教えてくれるなど、患者さんの協力も大切です。病気に負けないように、医者と患者さんが力を合わせて一緒に頑張りましょう!お大事に!
山内 俊明
※この記事は、朝日サリー(2015年1月号)「ハートでクリニック」に掲載されました