詐欺被害の報道が後を絶ちません。特にお年寄りが狙われ、被害に遭わないためにも知識と心構えが必要です。そこで最近の詐欺被害の傾向を取り上げて対策を学べる「消費者トラブルの現状と対処セミナー」(※・2020年11月14日開催・いわき市のいわき産業創造館)におじゃましてきました。講師は元いわき市教育部長・消費生活センター所長で、現在は県金融広報委員会の金融広報アドバイザーを務める柳沼広美さん。新型コロナ禍やネットショッピングでよくあるトラブル例や、認知症の方を介護するご家族がだまされやすい事例、その対策を聴講できましたので、一人でも詐欺被害に遭わないようお伝えいたします。(事業推進室・西山将弘)
※「消費者トラブルの現状と対処セミナー」:主催は保険や終活などに関する講座を開いている「くらしとお金の相談室いわき」(飯田教郎代表)。このセミナーは昨年に続き2回目。今回は新型コロナの感染予防の下、来場者24人が聴講しました。
● 事例の前に、知っておこうクーリング・オフ制度!
「クーリング・オフ制度」とは、特定の取引に限り、一定の条件の下で、消費者が契約を解除できる制度です。訪問販売や電話勧誘販売などは購入から8日間以内、いわゆるマルチ商法や内職商法、モニター商法(※)は20日間以内で返品が可能。考える間もなく勧誘されて購入に至った消費者を守る制度になっています。ただ、すべての物に適用される訳ではなく、クーリング・オフできない代表例は、自動車、3000円未満の現金取引、開封した健康食品や化粧品、さらに、返品特約が明記されている通信販売での購入物など。
※
マルチ商法とは:以下の例で紹介
内職商法とモニター商法とは(長野県消費生活センターホームページ):https://www.nagano-shohi.net/akushitsu-syoho/monitor/
セミナーで取り上げられたトラブル例と対処法をご紹介します。
★ コロナ禍で起こった「送り付け商法」
コロナ禍のマスク不足で不安を抱えた消費者を狙った商法。「特別にマスクをお売りします」と1箱勧める電話が掛かってきて、了承したら粗悪品と高額の請求書が届いたケースです。「1箱」と言ったのに「10箱」届くなど、電話の内容と異なる場合もあるようですが、「自分で了解したから仕方ない」と泣き寝入りする人もいるようです。
対策:この商法は「クーリング・オフ」ができるので、トラブルが出た時には「消費生活センター」に相談する。
★ 「点検商法」 認知症者を介護するご家族は注意したい例も
訪問してきた作業員が「排水管の無料点検をします」「すぐに修理しないと水漏れします」と不安をあおり、修理を依頼したら高額な請求をされたケースです。
対策:8日間以内ならクーリング・オフでき、期間が過ぎても「修理が必要」というのが虚偽なら契約を解除できる。
これに関連したトイレの「緊急出張修理」でのトラブルが最近急増しているようです。トイレが詰まってしまい、慌ててインターネットや投函されていたチラシで見つけた業者に電話し、見積もりや契約内容をよく確認しないまま急いで修理を頼んで高額請求を受けるのがこの例。認知症の方がトイレに物を捨てて詰まらせた時に、家族が慌ててしまって慎重な判断ができず、ネットやチラシ広告の「業界最安値」といったうたい文句につられてしまうことが多いようです。
対策:慌てない。水道局に電話して相談する。
★ 困窮している学生は注意したい「マルチ商法」
化粧品や健康食品といった商品やサービスを購入して、次に自分が新たな買い手を見つけると利益が入る販売方法が「マルチ商法」です。違法のねずみ講と似ていますが、マルチ商法は合法。生活が苦しい学生は、友人や先輩に紹介され「これを買えばバイトしなくても儲かる」という誘いに乗ってしまいやすいようです。
対策:クーリング・オフができる。「友達を誘うだけで簡単に儲かる」という話は要注意。
★ お試し無料のはずが、翌月に請求書 「ネットショップトラブル」
ネットショッピングでお試し無料の健康食品を購入したところ、「定期購入で返品不可」の注意書きに気付かず、翌月にも請求書と一緒に届いたケース。最近増えているようです。この場合は、販売先が返品を認めない限り基本的に「クーリング・オフ」ができません。
対策:「お試し無料」でもすぐに飛びつかず、定期購入ではないかを確認する。ネットショッピングでは「返品ルール」を必ず確認。「返品不可」と記載していることもある。販売業者の住所や社名、連絡先などもチェック。通信販売はクーリング・オフの対象外ですが、返品既定の記載がない場合は、8日以内なら送料消費者負担で返品可能。
★ なりすましSMS(ショートメッセージ)を利用した「フィッシング詐欺」
携帯会社などを名乗ったメールを開くと、本物そっくりの偽サイトに誘導されてアカウントや電話番号、認証コードなどを入力してしまい、クレジットカードを不正利用される被害です。
対策:メールやSMSなどで送られたURLを安易にクリックしない。注意深くリンク先を確認する。金融機関が口座番号や暗証番号を電子メールで問い合わせることはない。
●
セミナーではほかにも様々な事例とともに対策が紹介されていました。柳沼さんが最新の事例を分かりやすく話し、来場者はメモを取って聴講していました。もし消費者トラブルに遭ったと思ったらすぐに、最寄りの「消費生活センター」にご相談ください。
【いわき市消費生活センター】
住所:福島県いわき市平字1-1 ティーワンビル4階
電話番号:0246-22-0999
ホームページ:http://www.kokusen.go.jp/map/07/center0180.html
【地域講演の関連記事】
https://iwakikai.jp/blog/?c=%e5%9c%b0%e5%9f%9f%e8%ac%9b%e6%bc%94