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投稿:2020年12月17日更新:2021年05月11日

いわきの医療 多職種連携・地域連携

892. 「初代優勝の目標達成できた」・いわき市中体連ボッチャ団体Vの錦中

福島県内の中学大会初となる、特別支援学級生が出場した「いわき市中学校体育大会ボッチャ競技」で、団体戦の初代優勝に輝いたのが錦中学校。選手4人は、目標と反省を記録しながら毎日練習を積み重ね、ショットとチーム連携に磨きをかけました。本番では「奇跡のショット」と呼ばれた逆転劇で初戦を突破し、度重なる緊迫した接戦を制しながら見事頂点に上りつめました。選手は「初代優勝の目標が達成できてうれしい」と笑顔。学級担任の寺島大地教諭は「一戦ごと精神的に強くなった。これをきっかけに色んなことにチャレンジしてほしい」とエールを送っていました。

 

いわき市中体連ボッチャ競技団体で初代優勝に輝いた錦中の選手4人。右から目黒君、岡澤君、大河内君、西田さん

 

● 県内初の中体連ボッチャ競技

「ボッチャ」は「地上のカーリング」と呼ばれるパラリンピックの正式種目で、障がいの有無や年齢に関係なく技を競い合えます(※)。いわき市中学校体育大会(通称・中体連)ボッチャ競技は今年10月12日、いわき市総合体育館で初開催。運動能力や障がいに関係なく練習の成果を発揮できる場をつくろうと県中学校体育連盟いわき地区が開催準備し、市教育委員会は市内の全中学校にボッチャ用具を配って練習環境をつくってきました。中学大会のボッチャ競技は全国的に珍しく、福島県では初。

 

※「ボッチャとは(日本ボッチャ協会ホームページより)」:https://japan-boccia.com/about

 

● 4人一丸 接戦乗り越えて優勝

優勝した錦中の選手は、司令塔の目黒彪雅(ひゅうが)君(3年)、防御ショットが得意の岡澤伶音(れお)君(同)、攻撃ショットが持ち味の大河内雅仁(まさと)君(1年)と、応援でサポートした西田美穂さん(2年)の4人。試合当日、ユニホームを着た相手チームが強そうに見え、目黒君は「不安だった」、岡澤君は「優勝できないと思った」とそれぞれ振り返ります。それでも初戦、大河内君が目標球にぴったり寄せた相手ボールを狙って弾き飛ばした「奇跡のショット」を披露して勝利。観客から歓声も上がりました。岡澤君は相手に目標球に近づけさせないためのブロックショットがさえわたってチームに貢献。準々決勝を接戦で制し、続く準決勝戦でも激闘に。延長タイブレイクまでもつれ込み、勝敗を託された目黒君は不利とされる後攻の投球で勝利に導くショットを決めました。西田さんは「頑張れ!」と声援を送り続けて仲間を鼓舞。選手4人は一丸となって一戦一戦力をつけ、決勝戦でも見事勝利を収めました。

 

観客に見守られて投球する錦中の選手=2020年10月12日・いわき市総合体育館(錦中の提供写真)(相手チームと観客はモザイク加工しています)

 

● 目標と反省を繰り返して練習

チームは夏休み明けから本格的に練習。ほぼ毎日、1日1回は必ずボールに触っていたといいます。ルールも分からないまま、実践的に練習して覚えていきました。成長の工夫は、毎回「今日の目標」とやってみての「反省点」を書き残し、次回の課題を見つけながら日々練習に取り組んでいました。「強く投げないようにする」「コントロールをしっかりする」「連携が取れるようにする」といった目標を記録。担任の寺島教諭はボッチャ経験がありませんが、選手の反省にアドバイスを送って成長をうながしました。本番では他校の先生から「錦中の選手は良くコミュニケーションを取っている」と、チーム連携をほめられたといいます。圧倒的有利な場面では不利な状況をつくらないよう、目黒君は仲間に無茶なショットをしないよう声掛けするなど、チームワークの良さも勝因の一つでした。

 

試合する錦中の選手=2020年10月12日・いわき市総合体育館(錦中の提供写真)

 

ショットする錦中の選手=2020年10月12日・いわき市総合体育館(錦中の提供写真)

 

● 大会が自信に

優勝の感想で「最初は実感が無かったけど、学校に戻ってみんなから『おめでとう』と言われてうれしかった」と目黒君。岡澤君は「『初代優勝』が目標だった。それが達成できて、正直にうれしい」と満面の笑み。「奇跡のショット」を決めた大河内君は「おれ、めっちゃすごいと思った」と自信をつかんだ様子。一緒に練習をしてきた西田さんは「勝てるか心配していたけど、見ていて上手だった。優勝できてうれしい」と喜びを分かち合っていました。担任の寺島教諭は「目標を立てて意識付けし、反省を繰り返してうまくなった。試合を乗り越えるたびに生徒は精神的に強くなった」とたたえ「これまで活躍の場が少なかったが、この大会は生徒の自信につながった。これからも色んなことにチャレンジしてほしい」とエールを送りました。来春卒業する目黒君と岡澤君は「次も頑張ってほしい」「2連覇を目指してほしい」と後輩を激励。西田さんは「来年も優勝したい。でもやってみないと」と微笑み、大河内君は「来年も優勝する。自信はある」と、いわき市王者としての風格を漂わせていました。

 

生徒が目標と反省を記録したノート

 

<記者のひとこと>

取材後、先生から「普段話さない子がインタビューで積極的に話していた」と聞き、その子が普段静かだとは思えなかったので驚きました。大会で練習の成果を発揮でき、自信につながったのか。受験の面接を心配していましたが、みんなしっかりと答えてくれてこの調子なら大丈夫だと感じました。大会では当然優勝チーム以外は敗戦を経験することになりました。それでもきっと一人一人がうまくショットできた喜びや負ける悔しさなどを味わい、青春の一ページを彩れたはずです。この医和生会(いわきかい)での記事で一人でも「いわきでこういった大会があって、生徒の成長につながっているんだ」と伝わって、盛り上がっていけばうれしいです。さらにボッチャは年齢関係なく楽しめるので、コロナが落ち着いてから医和生会の施設のお年寄りが生徒と対外試合できれば、生徒の練習、お年寄りの生きがいづくり、地域交流につなげられるのではないかとも思いました。ということで、来年は今年以上に腕を上げた選手が出場するでしょうし、この大会が生徒の憧れの舞台となって成長できる機会になってほしいと願っています。(事業推進室・西山将弘)

 

【関連記事】

「福島県初のいわき市中体連ボッチャ競技」 2020年10月20日投稿:https://iwakikai.jp/blog/4769/

 

「大会開催に向けて検討を続けた県中体連いわき地区ボッチャ専門部会」 2020年7月7日投稿:https://iwakikai.jp/blog/4268/

 

「障がい福祉関連記事」:https://iwakikai.jp/blog/?c=%e9%9a%9c%e3%81%8c%e3%81%84%e7%a6%8f%e7%a5%89