いわき市平地区の医療・介護関係者が情報交換する「平在宅療養多職種連携の会」がこのほど、オンラインで開催されました。歯科医師が入れ歯ができるまでの工程を説明し、訪問診療での経験談を共有。認知症になる前の早めの入れ歯装着のすすめや、薬剤師との有意義なやり取りもありました。
● 入れ歯の製作工程
参加者は医師、歯科医師、薬剤師、看護師、介護支援専門員(ケアマネジャー)、リハビリ職ら21人。2月18日に開催されました。発表者の歯科医師は、入れ歯のできるまでの5つの工程を紹介。おおよその形やバネの取り付けを考える「概形印象(印象とは型取り)」、さらに正確な型を取る「精密印象」の過程を経て、最も重要という工程が「かみ合わせ」。うまく噛める入れ歯に調整するにはコミュニケーションが重要で、認知症の方に調整するのは難しいといいます。その後、ろう義歯を作っての試着で歯並びを確認。完成品を装着するまでに1カ月ほど掛かると説明しました。
● 訪問診療で緊急事態
発表者は、病院への訪問診療で入れ歯の治療中に患者が遠くの病院に転院し、継続が危ぶまれた出来事を共有しました。入院中に入れ歯の製作を依頼され、最初は近くに転院する予定が訪問診療の条件から外れる16キロ以上離れた病院に行くことに。患者とは意思疎通が取れ、かみ合わせを調整し義歯の製作を業者に依頼している段階でのタイミングだったという。転院先近くの歯科医であらためて作り直すにしても患者は経済的な負担になります。行政関係者らに相談した結果、完成した入れ歯の装着まで訪問診療の条件が認められ、その後は近くの歯科医師に引き継ぐことができたといいます。
● 入れ歯使いこなすのに慣れが必要
ほかの歯科医師は「認知症になると入れ歯を使いこなすのが難しくなる」と、早めに装着して慣れておくのをおすすめ。歯科医師から「コロナ禍でも施設が受け入れ可能なら訪問診療できる」とアドバイスを受け、ケアマネジャーは「食べることは人生の楽しみ。コロナ禍でも来てくれて助かる」とメッセージ。さらに歯科医師は「訪問歯科診療の条件は介護度ごとに決まっておらず、体が不自由で通院が困難な場合に利用できる」と説明しました。
● お年寄りの口の中に残薬を見かけることも
薬剤師からの「事例ではご家族が介入していない印象だった。訪問診療中に家族や付き添いがいると助かるか?」という問いに、歯科医師は「補助してもらったり、入れ歯を外した時の管理指導、日常で入れ歯が合っているかの情報交換ができる」と答えました。歯科医師からは「高齢者の診療で口の中に残ったままの薬を見かける。薬局から声掛けすると気付けるのではないか」と、薬剤師側にアドバイスしました。参加者からは、入れ歯の製作過程を初めて知ったという声が多く聞かれ、多職種で情報交換する意義を感じていました。
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