在宅緩和ケアに理解ある地域をつくろうと、「在宅緩和勉強会」の設立準備がいわき市内で進んでいます。末期患者の意思を尊重し、延命処置を施さず痛みを和らげる緩和ケアを学ぶ「いわき緩和医療研究会」の松田徹医師(竹林貞吉記念クリニック)が音頭を取っています。医師や看護師、介護支援専門員(ケアマネジャー)など6職種ごとに部会を設置したい考えで、末期患者を苦しめず人生の最期を支えるケアを職種ごとに探っていきます。将来的には部会を増やし、専門職ではない市民も巻き込んで「在宅緩和」を考えてもらおうという青写真も描いています。
↑「いわき緩和医療研究会」で「勉強会」設立の進ちょく状況を報告する松田医師=2018年9月10日、いわき市医師会館
● 患者の望む人生最期の生活実現へ
医療技術の発展によって末期患者は延命できるようになってきているものの、その処置と引き換えに心身に負担を負い“生かされる”状態になるリスクもあります。「在宅緩和」は人間の尊厳を守り、患者の望む人生最期の生活を実現させるケアです。ですが末期患者に「在宅緩和ケア」の選択肢を提示するには、退院して自宅で過ごせるのを市民や専門職がより理解を深め、支援する体制を整える必要があります。医師も「痛み止め」となる麻薬の量のコントロール、副作用の素早い対応、患者の恐怖を取り除くコミュニケーション力など技術の向上が求められます。そこで各専門職が学び合い、在宅緩和ケアのためにそれぞれ何ができるかの議論をしようと、松田医師が2017年秋に「いわき緩和医療研究会」の医師メンバーに「勉強会」設立を呼び掛けました。
↑「在宅緩和勉強会」設立に向けて音頭を取る松田医師=2018年10月23日、いわき市の竹林貞吉記念クリニック
● 「医師」「看護」など6部会設置を検討
勉強会は「医師」「看護」「薬剤師」「メディカル・ソーシャルワーカー(MSW)」「ケアマネジャー」「地域包括支援センター・行政」の6部会の設置を検討。現在は各職種の関係団体に協力を依頼している段階です。各部会は「がん」「非がん(慢性心不全や呼吸不全など)」「グリーフケア」「宗教」などテーマを決めて勉強。竹林貞吉記念クリニックを候補に考えている事務局が各部会から勉強会での学びを集め、全員に共有する方針です。年に数回、全部会が集まって情報交換し、多職種連携の強化にもつなげたい考え。「体制整備や連携の強化、広報など課題も多い」と松田医師。6部会が立ち上げられるか関係者とまだ調整中ですが、無事に体制が整えば来秋にシンポジウムを開いてスタートさせたい計画。軌道に乗れば「リハビリテーション」「栄養」「ヘルパー」「施設」「病院」「市民」といった部会も増やしていきます。
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