医和生会グループの専門職員が看護や介護の成果を紹介した「ケア事例発表会」。社会福祉法人いわきの里の介護支援専門員(ケアマネジャー)の坂本香菜と看護師の大和田千鶴は「ケアガイドライン制作プロジェクト(ケアプロ)を起点とした自立支援」について語りました。職員有志でプロジェクトを始動し、入居者様の意向の聞き取りを経て、おしゃれ好きの入居者様には「女子会」を企画し、長い施設生活でやりたい事をあきらめていた入居者様にはドライブの夢をかなえました。看護師、ケアマネジャー、介護士、生活相談員、管理栄養士ら様々な職種のメンバーが同じ方向を向き、入居者様の思いを実現させた取り組みが紹介されました。山内医師の基調講演と3つの事例発表を4回続きでお伝えする最終回。
↑「ケアプロを起点とした自立支援」と題して発表したいわきの里の大和田(左)と坂本
● ケアプロの始まり
研修マニュアルが形骸化して新入職者に共通した指導ができないため、ガイドラインをリニューアルしようと始まったのがケアプロ。職員有志を募り、職種の異なる約10人が集まって、今年3月から週1回話し合いが始まりました。自由に問題を出し合い「マニュアルの形骸化」以外にも、「職員間のコミュニケーション不足」「経営理念内の『よりよき老後』の共通イメージがない」といった課題も浮き彫りに。「みんなで同じ方向を向いたケアをしよう!」というプロジェクト目標を設定。そのために、まず入居者様をよく知ろうと本人や家族も含めて志向や意向を聞き取り。1日の生活サイクルをチェックする「24時間シート」などを作成し、「入居者様の意向を聞いて実現させる」という共通の目的を職員同士で持って取り掛かりました。
● 「おしゃれしたい」女性入居者様へ 「女子会」企画
発表者は、入居者様の意向を聞いて実現させた2人の事例を紹介しました。一人目は嚥下(えんげ)障がいのある要介護5の女性(60)。窒息のリスクがあったため、ソフト食、プリン、ゼリーなどを食べていましたが、おしゃれが好きで「マニキュアがしたい」「クレープが食べたい」という要望を聞き取りで確認。ケアプロの会議で「女子会」を開こうと企画しました。「女子トーク」を楽しんでもらおうと参加は女性入居者様限定で、会場は市内のスーパーマーケットのフードコート。ケアマネジャー、看護師、運転士が同行しました。見守りながらクレープや今川焼き、チキンナゲットを召し上がっていただきました。ケアマネジャー、看護師が女性の飲み込みを確認し、声を掛けることでゆっくり食べてもらえ、嚥下の危険性が少ないと気づきました。食べられない物は吐き出すという発見も。職員がラメ入りのマニキュアを施すと気に入ってもらえました。「また外食したい」「ネイルやお化粧がしたい」と新たな目標を口にするように。発表者は「女性としての生きがいを取り戻していただけた」と振り返りました。
● 「ドライブしたい」男性入居者様へ 車で海に
二人目の事例は、車いす生活で両手にしびれのある要介護4の男性(82)。ケアプロの聞き取りから、男性は6年間の施設生活が続いてやりたい事をあきらめていると気付きます。仲の良かった施設長にやりたい事を聞いてもらうと、男性は「助手席に乗ってドライブしたい」と話しました。介護士や看護師らが付き添って車の乗り降りの練習をして成功。自信をつけていただいてから、塩屋崎灯台と四倉に行くドライブを計画。当日は「施設にいた6年分、いわきを楽しんでくる」と張り切って出発。灯台ではかつての同僚と奇跡的に再会し、思い出話に花を咲かせました。「次は小名浜の橋に行きたい」と男性。その後は笑顔が増えて、生活が意欲的になったといいます。
● 入居者様が笑顔、職員も笑顔に
ケアプロの結果、職員間のチームワークが深まり、情報共有や会話の機会が増えたといいます。さらには入居者様、ご家族とコミュニケーションの機会がさらに増えたといいます。入居者様の笑顔が増え、職員にも笑顔が増えるという好循環が生み出されています。発表者は「これからも多職種連携で同じ方向を向いて、様々な課題を一つ一つ解決して自立支援をしたい」と力強く述べました。
「ケア事例発表会」は9月3日、いわき市総合保健福祉センターで開かれ今年で4回目。
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