医和生会グループの専門職員が看護や介護の成果を紹介した「ケア事例発表会」。小規模多機能型居宅介護さらいの菅沼智子は「家に帰りたい~すまい方 在宅生活の可能性を考える」をテーマに介護事例を発表。当初は施設での看取りも考えられた女性の体調を改善させ、本人とご家族の望み通り在宅復帰に導いた介護を伝えました。山内医師の基調講演と3つの事例発表を4回続きでお伝えする3回目。
↑「家に帰りたい~すまい方 在宅生活の可能性を考える」をテーマに発表した菅沼=2018年9月3日、いわき市総合保健福祉センター
● 急変も考えられたAさん
事例は要介護5の女性のAさん(85)。心不全や腎不全などの既往歴を持ち、弟さん家族と同居していました。昨秋、心不全が悪化し山内クリニックに救急搬送。Aさんは積極的治療や入院を希望せず、主治医から急変もありえると告げられて看取りも視野に「さらい」に登録しました。しばらく入浴しておらず、食欲も低いためにスタッフは「清潔を保ち、栄養を摂って回復してほしい」と目標を立てました。
● 回復に導き、目標を在宅復帰に
Aさんに負担を掛けずに体を拭く「清拭」を行い、体調が良くなってからリフト浴で半身浴も始めました。入浴後に「気持ちよかった」の声も。次第にスタッフに心を許すようになって信頼関係が生まれ、自力で口腔ケアに取り組む変化も見られました。栄養補助剤以外の食事はおかずを避けておかゆしか食べませんでした。そのため、おかずも食べてもらえるよう試行錯誤を繰り返し、どんぶりにおかゆとおかずを盛り付けると、4カ月後には毎食完食できるまでになりました。体調は改善し、部屋にこもらずホールで過ごす時間が長くなり、レクリエーションや体操に参加できるまで回復。在宅復帰も考えられるまでになり、Aさんに意思を尋ねると「自宅で過ごしたい。でも弟夫婦に迷惑は掛けたくない」という想いを確認しました。弟さんに相談すると「自宅で過ごしてほしい、けど歩けないと心配」という返事。歩行改善と安全な自宅環境の見直しを新たな目標に立て、在宅復帰を目指しました。
● リハビリ、住環境整備、帰宅準備
歩行改善をめざして下半身の筋力をつけるため、立ち上がりや足踏み運動などを開始。全身運動ではラジオ体操、介護予防体操も行ううち、手引きでホール内を移動できるまでに改善。そこから4点杖歩行の練習も始めました。歩行改善に取り組み4カ月後には必要レベルの自立歩行が可能になりました。自宅の住環境の見直しでは、福祉用具事業所が家屋調査し、段差を解消、4点杖を使用しても生活できるよう整備しました。歩行改善と住環境が整い、帰宅への準備に挑みました。最初は宿泊は「さらい」で日中は自宅で6時間過ごす生活を1日おきに計6日実施。2週間後に夜は自宅で過ごす生活に移しました。少しずつ自宅生活に慣らし、看取りの可能性も考えられた入所から214日後、週3日は自宅で生活できるまでになりました。
● ご利用者様の想いを知り、それをかなえるために
菅沼は「自宅に帰りたいと願うご利用者様の想いを知り、それをかなえるためにどんな支援が必要かをスタッフが考え、ご家族の協力があって実現できた」「地域を拠点に『通い』『訪問』『泊り』の複数のサービスを組み合わせ、地域の住まい方を考えて実践できた」と振り返りました。「一人でも多く慣れ親しんだ地域で過ごし続けられるよう、今後も取り組んでいきたい」と語りました。
「ケア事例発表会」は9月3日、いわき市総合保健福祉センターで開かれ今年で4回目。
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