医和生会グループの専門職員が看護や介護の成果を紹介した「ケア事例発表会」。コスモス訪問看護ステーションの訪問看護師は「2人暮らしの高齢姉妹への訪問看護のかかわり」と題してケアの取り組みを発表。お年寄りがお年寄りを支える「老老介護」世帯の患者のケアと介護者のサポートを通した学びを共有しました。山内医師の基調講演と3つの事例発表を4回続きでお伝えする2回目。
↑「2人暮らしの高齢姉妹への訪問看護のかかわり」をテーマに発表した訪問看護師=2018年9月3日、いわき市総合保健福祉センター
● 老老介護 ご家族様も考慮したケア
訪問看護師は、日本の在宅介護世帯の約7割は老老介護で年々増加している、と説明。老老介護は介護者の負担が大きいため共倒れになる懸念があり「ご家族様の負担も考慮して関わらなければならない」と述べました。事例で取り上げた女性Aさんは、発作性心房細動などの病気を抱える要介護4の86歳。杖で歩き、一日のほとんどをいすに座って過ごしています。介護のキーパーソンで同居するお姉さんは90歳で体調は良好ですが、腹部に人工の排泄口「ストーマ」を造設しており、排泄を受ける袋「パウチ」の交換はAさんが手伝っています。通院や買い物を市内に住むおいに協力してもらい、Aさんは週2回の訪問介護を受け、週1回デイサービスに通っていました。
● 目標は「褥瘡ケア」「清潔を保つ」「高齢の姉の支援」
Aさんが訪問診療・看護を受けた理由は、おしりに褥瘡(じょくそう)ができ、通院困難な上、お姉さんも処置ができないため。介入開始時、褥瘡の原因は背中が丸まり、いすに座りっぱなしの生活、少ない食事量だと考えました。さらに入浴の習慣がなく、腹部などのしわに汚れやただれがあることを確認。ですが入浴を勧めてもお断りされました。そこで「褥瘡ケア」「清潔を保つ」「高齢の姉の支援」の看護目標を立てました。初めは毎日訪問。褥瘡対策は洗浄し軟膏をぬって特殊なガーゼでケアしたほか、低反発クッションによる患部の除圧、血流促進のために足浴も行いました。ただれは体を拭き、軟膏をぬってケア。お姉さんから「やってあげたいけどできない。来てくれてありがたい」と声を掛けられました。
● 家族は「もっと早く利用すればよかった」
3週間後、4週間後にそれぞれケアを改善。拒否していた栄養補助剤も繰り返しの説明で理解を得て、飲んでもらえました。お姉さんからは「こんな制度があればもっと早く利用すればよかった」と言われ、安心された様子を感じました。2カ月後には褥瘡は治癒し、再発予防の座り直しも覚え、訪問時に歩行訓練も実施。お姉さんには健康状態を確認し血圧測定も勧めましたが、Aさんを優先し自分の健康を後回しにするように拒否されました。4カ月が経過するとデイサービスを再開できるようになり、春になって温かくなり入浴も希望されるようになりました。
● 拒否されても無理に勧めずに意思を尊重
4カ月間の訪問を通してお姉さんに対しては、Aさんの褥瘡処置、体を拭くなどして介護負担を軽減し、会話では健康や精神状態の把握を心掛けました。緊急時でも24時間対応できると伝えて安心してもらい、お姉さんにもフレイル予防として栄養補助剤を勧めました。栄養補助剤や入浴を拒否されても無理に勧めず、Aさんやお姉さんの意思を尊重して、必要性を丁寧に説明して少しずつ理解を得ていきました。座り直しや立ち上がりの除圧の指導では、Aさんにだけでなくお姉さんにも説明。除圧の運動をお姉さんから勧めてもらうことでAさんが実行するようになり、「お姉さんの協力が大きいと感じた」と振り返りました。
● 多職種連携で介護者の負担軽減へ
訪問時、お姉さんの声にも耳を傾け、介護の悩み相談にも応えました。このように訪問看護が介入することで、お姉さんからも「ありがたい」と感謝され、不安や負担を軽減させ安心感につながったと話しました。「老老介護でも医療福祉サービスなどの社会資源を活用し、多職種連携で介護者の負担を軽減し、共倒れを防げると思う」と感想。「頑張ってしまう介護者は多く、訪問看護師として本人だけでなく家族にも寄り添い、きめ細やかな対応をしていきたい」とまとめました。
「ケア事例発表会」は9月3日、いわき市総合保健福祉センターで開かれ今年で4回目。当法人医和生会理事の山内宏之医師(福島労災病院循環器科部長)が基調講演し、ほかの事例発表者は、小規模多機能型居宅介護さらいの介護士・菅沼智子、社会福祉法人いわきの里のケアマネジャー・坂本香菜と看護師・大和田千鶴。
<つづく>
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