自治会や町内会の重要性を考える「地域自治フォーラム」がこのほど、いわき市の中央台公民館で開かれました。いわき明星大教養学部の高木竜輔准教授が、中央台地区住民のアンケート結果も交えながら「いわき市における地域コミュニティの実態と課題」をテーマに講演。パネルディスカッションでは区長経験者が登壇して取り組み事例を発表し、来場者は強いコミュニティをつくる方法を考えました。
● 地域コミュニティの必要性が高まる
高木准教授は、自主性と責任を自覚した構成員相互に信頼感のある集団という「コミュニティ」の定義を解説。「コミュニティ」という言葉は1960~70年代に国が使用するようになり、その理由を高度経済成長期に地方から都市部に人口が流入してコミュニティづくりが求められたからと説明しました。地域社会を取り巻く環境が変化した現在、少子高齢化や財政難の行政サービスの減少、民間サービスの撤退などで地域コミュニティの必要性が高まっていると語りました。
● ニュータウン「中央台地区」 住民アンケート結果
約40年前に開発されたいわき市のニュータウン「中央台地区」について、一斉に入居したため急速に高齢化となり郊外開発地特有の課題に直面している、と高木准教授は指摘します。中央台地区の全4517世帯を対象にして2037票の回答があったアンケート調査(2017年12月、中央台みらい会議実施)の結果も紹介。中央台地区内でも、世帯主の6割が60歳以上で単身者も多い「飯野」、夫婦のみ世帯が多い「鹿島」、若年層夫婦が多い「高久」と、エリアによる住民の特徴も様々だと明らかになりました。さらに、サークルやボランティア活動のニーズが高い一方で参加者は少ない、4割弱の世帯は自治会未加入、近所付き合いはある程度あるが溶け込めていない避難者の世帯も存在することも判明。少子高齢化や地域活動の担い手の不安、「のどかに暮らせる」「高齢者がいきいき暮らせる」街づくりの要望が高い結果も伝えられました。
↑「いわき市における地域コミュニティの実態と課題」をテーマに講演した高木教授
● 「地域の特徴を知る」「ワークショップで話し合う」
高木准教授はコミュニティづくりのアドバイスも。一つは「自分たちの地域の特徴を知る」。国勢調査などで年齢構成、家族構成などを調べて地域のニーズを部分的に推測することも可能。日本の統計が閲覧できる政府統計ポータルサイト「e-Stat」(https://www.e-stat.go.jp/)が情報収集に役立つと助言しました。二つ目は、「ワークショップで話し合う」。地域のデータを基にワークショップを行い、短期と長期の課題を抽出して共有化する大切さを語りました。高木准教授は「自治会・町内会は地域コミュニティを動かす重要なプラットフォーム。さまざまな立場の住民を巻き込めるかがうまくいく要因だ」と話しました。
● 飯野二区「部会を組織」 大熊・野馬形「住民一丸で盆踊り大会」
パネルディスカッションでは、中央台飯野二区自治会の鈴木庸夫前会長と大熊町の野馬形行政区の土屋繁男区長が登壇。鈴木前会長は「中央台飯野二区自治会の活動について」をテーマに語り、「総務」「環境保健」「安全防災」「教養文化」「レクリエーション」「広報・編集」という各部会を組織していると紹介。盆踊り、会報の発行、サロン、夜間パトロールといった活動も挙がりました。土屋区長は東日本大震災前に住民の力を結集させて盆踊り大会を開催した例を話しました。寄付を募ってたいこを購入し、山仕事の経験者がやぐらを建てるなどして実現し、子どもからお年寄りまでの交流も活発になったといいました。震災後には住民が全国各地にバラバラになったものの、仮設住宅で盆踊りを復活させたら住民が集まり、住民の絆を深めるイベントの大切さを語りました。
● コミュニティ強化のため 「あいさつ」「同じ空気を共有」
高木准教授がコミュニティの強さの理由を質問。鈴木前会長は「あいさつなどのコミュニケーション」と答え、土屋区長は「何気なく同じ空気を共有する」とし、スポーツ活動やリサイクル運動などを一緒に取り組む積み重ねが大事だと語りました。「役員の担い手育成」に関する質問には、鈴木前会長は「やってほしい人ほどやってもらえないので、やってもらえそうな人を狙う」「やりがいある環境をつくる」と回答。土屋区長は「『肩書きを付けないから手伝って』とお願いして渋々承諾してもらった。『口は出さず金は出す』ようにして任せればやってくれる」と答えました。
● 次回は11月18日
地域自治フォーラムは9月9日、いわき市が主催し、NPO法人S・Sプランニングが主管。第2回の地域自治フォーラムは11月18日、いわき市総合保健福祉センターで開かれ、首都大学東京の玉野和志教授が「町内会・自治会のこれまでとこれから」と題して講演します。
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