道に迷っている認知症者に声を掛ける訓練「ハイカイチュウ」がこのほど、いわき市のいわき芸術文化交流館「アリオス」で行われました。参加者は敷地内にいる認知症者役を探し回って声掛け体験。後ろから声を掛けず、親しみを込めて話すといった注意点を実践的に学びました。
● 声掛け訓練のフォーマットづくりも兼ねる
市民への認知症の啓発を目的に平地区中地域ケア会議が9月7日に主催。地区内にある「アリオス」で同日開催された市地域包括ケア推進課のイベント「いごくフェス」に合わせて企画されました。実践的に声掛け訓練できるフォーマットをつくり、ほかの地域に広めたい狙いもあります。訓練の方法は、家族役から捜索を依頼されて身体的特徴や身なりを聞き取り、敷地内で探し回ります。情報と一致する認知症者役を見つけたら声掛け。間違った人に声を掛けてしまう場合もありますが、それも訓練のうち。スタッフは主に平地区の介護支援専門員(ケアマネジャー)、民生委員、介護施設職員ら92人。参加者1人に認知症者役1人を探す“指令”が与えられ、各回の定員を10人とし5回に分けて計38人が訓練しました。
↑家族役のケアマネジャー(右)と一緒に認知症者役を探す訓練者
● 「後ろから声を掛けない」「ゆっくりと相手のペースで」
参加者はアリオス内のスタート地点で、DVDを見て訓練の流れを確認し、作業・理学療法士から認知症者への正しい声掛けを教わります。「後ろから声を掛けない」「親しみを込めた語り方」「語尾を下げる」「ゆっくりと相手のペースに合わせて問い掛ける」「やわらかい、日常会話を」を盛り込み、いわき市認知症初期集中支援チーム監修の「声かけ上手の五箇条」を学んでからスタート。ある参加者は、家族に扮するケアマネジャーから、「くまだまさこ」という名前、85歳という年齢、紫の花柄のブラウスとエプロンなどの特徴を聞き取ります。外に出て、その日夜のフェスイベント準備でにぎわう公園内を歩き回ります。「あっちの方かな」「花柄よね」などと確認しながらキョロキョロ。遠くの石段で花柄の服を着て横になっている人を発見すると「いた!」と近づきます。驚かせないように「まさこさんですか?」と尋ねると、「何?聞こえない」と耳が遠い認知症者役。再度ゆっくり名前を尋ね、何気ない会話をして安心感を与えていました。
↑電動車いすに試乗する平地区中地域ケア会議の山内俊明会長(当法人医和生会理事長)
● 健康相談ブースも設置
認知症者役から「ありがとうカード」を受け取った参加者は、スタート地点に戻って訓練終了。訓練についてのアンケートに答えた後、設置された「認知症」「薬」「福祉用具」に関するブースに立ち寄って相談していました。骨密度の測定機で健康チェックしたり、最新の電動車いすの乗り心地を体験する人も。市薬剤師会、市福祉用具推進協議会、グループホームまつの実、平地区地域包括支援センターのメンバーからアドバイスを受けていました。
【関連記事】
<声掛け訓練>
「金山地区で声掛け訓練」 2018年3月14日投稿:http://ymciwakikai.jp/blog-entry-427.html
<平地区中地域ケア会議など市地域包括ケア推進会議>
18年度:http://ymciwakikai.jp/blog-category-39.html
17年度:http://ymciwakikai.jp/blog-category-35.html