「死ぬためではなく、生きるためのノート」。いわき市の女性(66)は余命3年の宣告を受け、エンディングノートに思いのすべてを書き残しました。「元々ポジティブ」と自認しますが、「死ぬ恐怖もちょっとある」と本音ものぞかせます。それでもノートには趣味の旅行を楽しもうと行きたい国、やりたい事など前向きな目標がつづられ、娘らへの感謝の気持ちもしたためられています。「2歳の孫が20歳になるまで生きる」。死と向き合う女性は、人生楽しく悔いを残すまいと生きています。
● 突然の余命宣告 6日間掛けて執筆
女性が余命宣告を受けたのは2017年の秋。医師から「死をどう考えているか」と問われ、必ず誰にでも訪れるものだと気丈に振る舞いました。ですが「通院する度に医師から『間違いでした』と言われるのを期待します。帰り道はがっかりして歩いて帰る」と胸の内を明かします。そんな女性に長女は、終活アドバイザーと一緒に作成するサービスを受けてエンディングノートの執筆を勧めました。女性は1日2時間の計6日間掛けて書き上げました。
● 派手な葬儀を希望 すでに葬儀場に行き見積もりも
「葬儀は明るくしてほしい」と望む女性は、教会で葬儀を行い、参列者には派手な服を着てほしい、○○さんから死に化粧を施してほしいなどと希望しています。ノートには亡くなった後に連絡してほしい人の名前と連絡先も記載。流してほしい讃美歌も書き残し、自分らしい最後の演出を考えました。ノートを書く中でアドバイザーと一緒に葬祭場にも足を運び、その見積もりももらいました。「その分のお金は自分で稼ぎたい」と女性。必要金額がはっきりしたことで働く意欲もわいています。
● あれもしたい、これもしたい
登山や旅行が好きという女性は、具体的に行きたい都道府県や国の名前を書いています。中には南米の国も。今月は山梨県に旅行する計画で、また一つ夢が達成されます。女性は「時刻表を見て計画するのが楽しい」とニコニコ。ウインドーショッピングも大好きといい「小名浜に新しいショッピングモールができたら行きたい」とも。息子から「ユニバーサルスタジオジャパンに行きたい」と言われ、一緒に行くプランもノートに加筆するつもり。「こうされたい」という受け身ではなく「これがしたい」と能動的な思いを次々と口にします。長女は「ノートを書いて前向きになった」と話したそうです。
● 厳しく育ててしまった長女へ 誤解させないよう感謝の言葉
感謝を伝えたい人はたくさんいます。3人の子ども、夫、家族以外にも、「新薬ができて高価だったらお金を出す」と言ってくれた友人らにも感謝の言葉を残しています。市内に住み闘病を支えてくれる長女には特別な思いも。「一番厳しく育てて、2番目3番目の子には優しくしていた。気づいてはいるでしょうけど、勘違いされたくない」。いつも感謝の言葉を伝えているといいますが、後悔しないためのラストメッセージはノートにしたためています。
● 「病気の事ばかり調べてもつまらない!」
人生でやりたい事の欄には「フラダンス」「ボランティア」「富士登山」「病気になって働く場所がない人が働ける場所を作りたい!!」と力のこもった文字が並びます。女性は「病気の事ばかり調べていてもつまらない。やりたい事を考えた方が得でしょ」と頬が緩みます。「書いてスッキリした」とその表情もすがすがしい。「これからの人生を漢字で表すと」という欄には「楽しい」。孫から好評のスパゲッティとから揚げをつくるのが得意で、料理するのも至福の時間。楽しい計画がたくさんあって、今後の人生が忙しそうです。
<ご協力の感謝>
終活を支援するいわき市の「おはなし聴き屋オリーブ」さんのご協力で女性を紹介していただきました。プライベートな事をお話してくださった女性にも厚く御礼を申し上げます。誠にありがとうございました。
おはなし聴き屋オリーブホームページ:http://ohanashi-olive.com/
「おはなし聴き屋オリーブ」の終活アドバイザー・佐藤さん(2018年5月8日投稿):https://iwakikai.jp/blog/1055/
【終活関連記事】
「ケアマネジャーを対象にした『終活とエンディングノート』研修会」 2018年5月26日投稿:https://iwakikai.jp/blog/1026/
「ファイナンシャルプランナーで終活アドバイザーの飯田さん」2017年11月8日投稿:https://iwakikai.jp/blog/1327/
「延命治療の意思を記す『わたしノート』」 2017年9月21日投稿:https://iwakikai.jp/blog/1329/