いわき市平地区の医療・介護・福祉関係者が交流する「平在宅療養多職種連携の会」がこのほど、オンライン上で開かれました。当法人山内クリニックの医師・山内宏之が「心不全」をテーマに講話。心不全の患者に心掛ける注意点をアドバイスしました。
● 40人が参加
医師、歯科医師、薬剤師、看護師、介護支援専門員(ケアマネジャー)、介護職員、リハビリ職など40人弱が参加し、11月21日に開かれました。山内は「心臓病を発症して心臓が弱った状態」を心不全と説明し、心不全になると動悸や息切れ、むくみなどが見られるようになると指摘しました。心不全の原因となる心臓病は様々で、虚血性心疾患、心臓弁膜症、不整脈、心筋症、高血圧などの代表例を上げました。
● 早期発見へ健康診断
山内は、心不全は歳を重ねるほど発症しやすくなると説明。日本は長寿国家のため、高齢化にともない今後心不全の患者が増える予測を示し「他人事ではない」と警鐘を鳴らしました。早期発見のため、1番は「健康診断」。X線写真で心臓が大きい、心電図の異常、不整脈などと初めて指摘されたら心臓病の疑いがあると注意し、「歳を取ると発症しやすいので毎年健康診断を受けてほしい」と呼び掛けました。そのほか、いわき市が始めた心不全の発見プロジェクトにも触れ、心不全の疑いのある患者に受診を促す通知を送っていると紹介しました。
● 心不全に注意する12項目
心不全の患者への注意すべき12項目もアドバイスしました。1番大事というのは塩分を控える。塩分は1日6グラム以下を心掛け、塩分以外で味付けを工夫して整える意識が大事と助言。塩分を摂り過ぎると体に水分が溜まってむくみの原因となり、心臓や肺に負担をかけて息切れ、動悸を悪化させると解説しました。
2点目は水分の適度な摂取。水分の摂り過ぎは心臓に負担を掛けるが、制限し過ぎても脱水症状になると注意し、ちょうどいい量は心不全の場合は1日1000〜1500mlを目安に、夏場に汗をかいたら1回コップ1杯(200~300ml)を摂るのを勧めました。3点目は毎日の体重計測。決まった時間に毎日体重測定することで心不全の状態を確認でき、3日間で2キロ以上急に増えたら心不全悪化のサインと警告しました。
4点目は毎日の血圧・脈拍の測定。5点目は薬の服用。自己判断で中断して悪化し入院するケースもしばしばあるという。「症状がすっかり落ち着いても完治したわけでない。心不全は完治せず一生治らないもの」と、飲み続ける必要性を指摘しました。
6点目は適度な運動。心不全の患者は過度に安静にした方がいいのではなく、適度に運動した方がいい。負担になる激しい運動ではなく、軽く息が弾むくらい、おしゃべりしながら楽にできるぐらいの運動がいいと説明し、ウォーキング、軽いジョギング、軽い筋トレなどを上げました。1日20~30分で、10分ずつ2、3回に分けてもよく、週に2~3回、少しずつ取り組むのが大事で、週に1回では効果が薄いとも。息切れを強く感じる時は無理をしないようにとも話しました。
そのほか注意してほしい点として「感染症」「喫煙」「過度な飲酒」「便秘」「不規則な生活」「ストレス」を上げました。
● 質疑応答
発表を聞いた訪問看護師は「塩分制限にも関わらず、お店で惣菜や弁当を買って食べる心不全の患者もいる。どういうものをお勧めしたらいいか」と質問。山内は「買う惣菜には塩分量が書いてある。6グラムを超えないよう意識して買ってもらう」というも「そうした食生活で塩分のコントロールは実際難しい」と悩ましい本音も。予防として「具合が悪くなると急に体重が増えるので毎日体重測定して警戒してほしい」と対策も補足しました。また、ある薬剤師は、いわき市のスーパー「マルト」が市と連携して減塩の惣菜を販売している情報も提供しました。
看護師は「独居で認知症の心不全患者にはどう生活指導するといいか」という質問では、山内は「認知症の患者に頑張らせようとしても難しい。物忘れのある患者には直接指導せず、『家族の言うことをよく聞いてくださいね』と伝えて、家族に体重測定や服薬などをアドバイスする」「独居の場合は多職種連携で支援し、ヘルパーに協力を求める」などと答えました。
同多職種連携の会の山内俊明会長(山内クリニック院長)は「心不全は誰にでも発症する可能性がある。支援している患者様、自分自身、ともに気をつけて、体重が急に増えたりした時は循環器に相談してほしい」と呼び掛けて締めました。
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