いわき市平地区の医療・介護・福祉関係者が交流する「平在宅療養多職種連携の会」がこのほど、オンライン上で開かれました。医師がいわき市の地域医療をテーマに講話し、医師不足の課題や改善の取り組みを発表しました。
● いわき市は医師不足
医師、歯科医師、薬剤師、看護師、介護支援専門員(ケアマネジャー)、介護職員、リハビリ職など35人が参加。6月20日に開かれました。発表した医師は「いわき市地域医療における課題」と題して講話しました。発表者は、人口10万人あたりの医師数が、いわき市は全国や県と比べて少ないデータを紹介。医師の平均年齢では全国、県と比べていわき市は高齢で、若い医師が増えていない現状を示しました。人口構成や医療需要などを考慮した「医師偏在指標」でもいわき市は「医師少数区域」と設定されていると指摘。医師確保のための主要な施策を、短期・長期で紹介しました。
● 医療人を育む取り組み
「いわき市地域医療を守り育てる基本条例」も説明しました。市民の健康と生命を守るため地域医療が継続的に確保されなければならない基本理念を解説し、そのためかかりつけ医を持つなど市民の役割にも触れました。いわき市の医療人を育む取り組みとして、「小中」「高校」「医学部」「初期研修」「専門医研修」の段階ごとの活動を共有。小中学生では「いのちの授業」、「高校」では磐城高校に新設された医学部コースで縫合体験や病院見学が行われていると紹介しました。
● 優先して確保すべき診療科
改めていわき市の医師数に触れ、人口10万人あたりの医師数で中核市の平均が301人に対し、いわき市は172人で60市中55位とデータを紹介。医師の平均年齢も全国50歳、福島県52歳に対し、いわき市は56歳で深刻な高齢化も示しました。いわき市の高齢化の予測を踏まえ、ヒアリング結果を基にまとめた同市が優先して確保すべき診療科を列挙。複数の病気を抱える高齢者のため総合的な内科・総合診療科・整形外科を、緊急手術に備えて脳神経外科・心臓血管外科・救急科を、出産や育児環境のため産婦人科・小児科、診療が困難になっているため呼吸器内科を、それぞれ挙げました。
● 方向性を合わせてチームで
そのほか、医療人を増やす動きを紹介。補助で誕生した診療所の開設実績や、いわき湯本高校に「保健・医療コース」が新設されて看護師を講師とした取り組み、各病院ごとではなく「チームいわき」で合同でアピールする動きなどが共有されました。連携をテーマにした話題では、これまでは各「資源・部署・職員」がそれぞれに頑張っていたのを、これからは方向性を合わせて力を合わせて大きな力を生み出す大切さを語り、発表を締めました。
同多職種連携の会の山内俊明会長(山内クリニック院長)は「多職種が集まって連携して支援するのを若い人が見て、医療職に興味を持って目指してほしい」と感想。歯科医師は、歯科医師会も高齢化で団塊の世代が抜けると人材不足になるとの予想を紹介。看護師は、看護師業界では県で総合訪問看護支援センターをつくるような動きもあるそうで、各訪問看護事業所だけでなく、全体で支援していこうという動きも出ていると情報提供。参加者は力を合わせて支援していく大切さを改めて確認していました。
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