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投稿:2023年11月22日

多職種連携・地域連携

1219. 「心不全」を考える・平在宅療養多職種連携の会

いわき市平地区の医療・介護・福祉関係者が交流する「平在宅療養多職種連携の会」がこのほど、オンライン上で開かれました。山内クリニック山内宏之医師が「心不全」をテーマに発表。参加者は心不全の基本的な注意点を確認したほか、在宅医療の現場での悩みも質疑応答で共有しました。

● 心臓が弱った状態
医師、歯科医師、薬剤師、看護師、リハビリ職、介護職員など40人が参加。11月16日に開かれました。発表した山内医師は「心不全、ご存知ですか?」と題して講話。「心不全とは何か?」と問い掛け、その答えを「心臓病を発症して心臓が弱った状態」と説明しました。心不全の原因は高血圧、心筋症、不整脈など様々。高齢になるほど発症しやすくなり、長寿国の日本では心不全が増えているとも解説しました。

● 動悸、息切れ、むくみ
心不全になると心臓に負担が掛かり、体を動かした時に動悸や息切れ、両足がむくんだりし、食事を取り過ぎていないのに体重が増えることもあるという。横になると息苦しいが起きると少し楽で、じっとしていてもゼーゼー息苦しい、という例も挙げ「放っておくと、危険な症状」と注意を促しました。

● 12の具体策
心不全の治療には「弱った心臓に負担を掛けない」とアドバイス。具体的に12のポイント(※)を指摘しました。

※ 1.塩分を控える 2.水分を適度にとる  3.体重を毎日測る  4.血圧・脈拍を毎日測る  5.薬をきちんと内服する  6.適度な運動  7.感染症に注意する  8.禁煙  9.お酒は適度に  10.便秘に注意  11.規則正しい生活  12.ストレスをためない

「一番大事」という「塩分を控える」については、「1日塩分6グラム以下」を呼び掛け。塩分を取り過ぎると体に水分がたまってむくみ、それにより心臓や肺に負担を掛けて悪化し、血圧の上昇にもつながる危険性を説明しました。減塩食を調べ、栄養士に相談するといった対策を紹介しました。

「水分を適度にとる」では「水分の取り過ぎは心臓に負担を掛ける」という一方「水分を制限し過ぎると脱水症状になる」とも。多過ぎても少な過ぎても悪影響で「心不全の方は、料理は含まず飲み物の場合で基本的に1日1000〜1500mlが目安」と助言。夏場に汗をたくさんかいたらその量に応じて普段よりも多く水分を取るよう呼び掛けました。

心不全の状態が分かるように「毎日の体重測定」も推奨。「ついつい塩分や水分を多くとると急に体重が増える」と注意し「3日間で2キロ以上増えたら悪化のサイン」とアドバイスしました。そのほか、薬を忘れず飲み、適度な運動の大切さも説明しました。

いわき市医師会で作った心不全で受診する目安の点数表も紹介。自己診断できる患者様用とかかりつけ医用の2種類あり、使い方を説明しました。

● 在宅診療での注意点
在宅診療や寝たきり患者様の注意点も紹介。デイサービスに通所する方は施設で週1回でも体重を測るようにし、それもできない場合は呼吸状態やむくみを確認するのを勧めました。寝たきりの方は足がむくみにくいため、尻や背中のむくみを確認するポイントも指摘しました。

● どう最期を迎えるかを考える
入院する患者も高齢化で、心臓病などの身体的な問題だけでなく、認知症といった精神面、老老介護といった社会面も含め、複数のフレイル(虚弱状態)の課題を上げました。そのため「医療だけではなく、多職種の連携が必要になる」と呼び掛けました。「心不全で入院しても、最後の問題は心臓以外のこと」「高齢者の治療は心臓、腎臓、肺などの臓器疾患のみでなく、人生における終末期に対して包括的に介入するのが重要」とも話しました。心不全の患者様が寝たきりの場合は「寿命は末期がんの患者様と同じ」と語り、そのため大事なのは早期受診ではなく、どう最期を迎えるかを家族と相談して症状の緩和を行う大切さを説きました。「患者様が心不全を患っていても良い人生を送り、良い最期を迎えられるよう協力していきましょう」と連携を呼び掛けました。

● 質疑応答
質疑応答で、訪問看護師は「心不全の患者様に対して、訪問看護師はどのタイミングで介入するのがいいか。症状が出始めてからでは遅いと思う」と質問。山内医師は「訪問看護が関われる限界もあると思う」と踏まえ「家族がチェックして支えるのが理想」と回答。支えてくれるご家族がいない場合の心不全の管理の難しさにも触れました。包括支援センター職員は関わっている患者様の例で「話をして息切れがするのは重い症状か?」と相談。山内医師は「息切れだけでは必ずしも心不全とは限らず、過去に心不全と診断されているか、体重の増加、体のむくみの確認もポイント」とアドバイスしました。そのほか、山内医師は、いわき市で進めている心不全の早期発見チェックシートや、心不全の患者様だと分かるように医師が薬剤師に伝える目印として処方箋に貼る「ハートシール」を紹介しました。

同多職種連携の会の山内俊明会長(山内クリニック院長)は「心不全で再入院しないよう、退院後の体調管理に訪問看護師が関わるのはいいこと。みんなで患者様のケアを話し合えるのが理想で、このようにみんなで話し合える場があることはいいこと」と、この集まりの重要性を語りました。

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