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投稿:2025年10月23日

地域医療・福祉と多職種連携

1353. 訪問介護事業所の課題を考える・平在宅療養多職種連携の会

いわき市平地区の医療・介護・福祉関係者が交流する「平在宅療養多職種連携の会」がこのほどオンライン上で開かれました。訪問介護士が「訪問介護事業所ができること」をテーマに事例を発表。高齢の2人暮らし世帯で急に1人暮らしになるケースを基に、訪問介護事業所の地域課題をみんなで共有しました。

● 2つの困難事例を発表
今回は10月16日に開催。医師、歯科医師、薬剤師、看護師、介護支援専門員(ケアマネジャー)、リハビリ職など18人が参加しました。発表者は「訪問介護事業所ができること」と題して2つの事例を紹介。いずれも子どもが県外にいる高齢の2人暮らしで、支援の難しい事例を発表しました。

● 訪問ヘルパーの利用を拒否
一つの事例では、半身麻痺の夫と認知症の妻を取り上げました。運転して買い物などもする妻の認知症が進行するため訪問ヘルパーの利用を勧めるも、夫は「なんでもやってもらったら何もできなくなる」と拒否。ケアマネジャーや行政、ご家族と相談して妻に宿泊事業所を利用させたが、夫が独居になり不安定に。最終的に2人で入所するようし「入所してよかった」という声も聞かれて安定しました。

● 認知症の妻が独居生活に
二つ目の事例では、夫が亡くなって認知症の妻が独居になったケースを共有。介護をしていた夫が入院し、県外の子どもは妻に在宅生活を続けてほしいと要望。妻は訪問ヘルパーを利用して在宅生活を続けるものの、そのまま夫は亡くなり遺影を見ては思い出して涙する生活に。夕方の食事は残したままで、訪問ヘルパーの利用回数を増やす必要性を感じつつも経済的に困難でそれもできないまま、今も在宅生活が続いていると課題を共有しました。

● 訪問介護の地域課題
発表者はまとめで、いずれの事例も子どもが県外にいて、夫婦で生活してもいずれ介護者がいなくなると独居になるリスクを指摘。その時にすぐに入所するのも難しく、訪問介護事業所もヘルパーの高齢化や人材不足で希望通りに支援できない難しさを上げました。「事業所単体の問題ではなく、地域にヘルパーが少ないのが課題で、現在も改善されていない」「在宅で生活したいという希望にどこまで対応できるか、ご利用者様にとってベストな介護は訪問介護だけでは難しい」と悩ましい現状を伝えました。それでも「病院拒否の場合は医師や薬剤師の連携が必要だったり、訪問介護だけではなく多職種の連携が大事になる」と呼び掛けました。

● 質疑応答
参加したケアマネジャーは、訪問介護事業所の人材不足は全国的な問題で、遠くに住む子どもに電話をしても返事がないケースもあるとし、困難事例が当たり前になってきている感想をもらすとともに、若い訪問ヘルパーの求人が集まっている事業所の雇用形態も共有しました。

地域包括支援センターの職員は、子どもが遠方に住んでいても、会話ができる見守りカメラを使って「お薬飲んでる?」などやり取りする事例の情報を提供。急に独居になった際の支援の経験がまだないというケアマネジャーは、「そうなったら不安。各事業所の力を借りて独居になっても対応できる支援体制をつくりたい」と連携の必要性を感じていました。山内俊明会長(山内クリニック院長)は「困ったことがあったら相談して、地域みんなで解決していきましょう」と呼び掛けて、会を閉めました。

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