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2017年09月02日

健康・認知症関連カフェ 地域講演

133. 認知症カフェ、なぜ必要?・研究員招き公開講座㊤

● 認知症カフェ先進国のオランダとイギリスを調査
公開講座は「福島県小規模多機能型居宅介護事業連絡会」が主催し、8月29日に開かれました。「認知症カフェを知ろう~継続と運営のアイデア」と銘打ち、認知症介護研究・研修センターの主任研修研究員の矢吹知之さんが講師を務めました。矢吹さんは、認知症カフェ発祥の国のオランダや盛んなイギリスを4度にわたり訪問し、そのカフェの運営実態をリサーチした経歴を持ちます。DSC_4733 (640x427)
↑認知症カフェの必要性や運営について講話する矢吹さん

● 必要性①:孤立が生む虐待 つながりが希薄
矢吹さんは、追い詰められている在宅介護と家族の現状を説明。2015年のお年寄り虐待(ぎゃくたい)相談通報の件数は2万件、2016年の介護を理由にした自殺が251人などのデータを挙げ、虐待理由の6割は、介護の悩み相談する相手がいない孤立だとしました。相談先について、医療は医師や看護師に、介護は介護支援専門員(ケアマネジャー)や介護士にそれぞれ相談できるが、「たわいもない話」ができる近所住民や友人がおらず、地域とのつながりやコミュニケーションの希薄さが問題だと提起しました。

引きこもる原因では、2つの学説を挙げます。一つは、外で受け入れられなかった経験が障害となり、生きづらさは社会がつくるとする「生きづらさの構造」(アーヴィング・ゴッフマン)で、もう一つは、幸せになるような回復する話は相手にしやすい一方で、ガン宣告や戦争体験など不幸な結末を想像する話はできないという「回復の物語」(アーサー・フランク)。周囲から声が掛けられにくくなり、つながりを見出せず生きづらい社会になる。そのため、社会環境を改善して介護の話をしやすい場をつくる大切さを説きます。

● 必要性②:「空白の期間」 休めない介護家族
認知症の診断から要介護認定を受けるまでの「空白の期間」への課題も挙げます。診断前には、介護予防教室、生きがいサロンなど、認定後は介護施設などの受け皿があるものの、その空白期間にはそれがなく、虐待などが起こりやすいと説明。矢吹さんは、この間の家族が追い込まれる仕組みを社会学的にこう解説します。人間には「役割と舞台」があるとし、例えば介護の「役割」を担う施設職員は、施設という「舞台」で働き、「舞台」を降りた施設外では気分転換できる一方で、介護の「役割」を担った家族は家庭の「舞台」でずっと立ち続けなければならず、矢吹さんは「介護する家族は休みがない」と話しました。この空白期間の休みの場が必要だと訴えます。

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↑参加者が談笑し交流するオレンジカフェ以和貴=2017年6月15日、いわき市の鹿島ショッピングセンター「エブリア」

● 哲学①:苦しみを共有できるオープンな学びの場
オランダで1997年に始まった認知症カフェ。誕生に携わったライデン大のベレミーセン氏の認知症カフェの哲学を紹介。それは「単なる社交目的の集まりではなく、介護専門職、認知症の人とその家族や友人がいる、敷居が低く理解のある環境の中で提供される、複合的なレベルの教育と支援の組み合わされた構造」と「否定したい気持ちを乗り越え、それを受容し、様々な感情や長期に渡る病気と共に歩む生き方を学び、その苦しみをオープンにする場」。矢吹さんは、認知症を共有でき学びを大切にする場だと説明しました。

● 哲学②:「友人と共有できるなら、悲劇は深く鋭いものではない」
認知症カフェ誕生のきっかけは2つ。一つは、認知症者の講演の大きな反響でした。ベレミーセン氏が、研究の特別講義で行った認知症者による語りが好評で、独自に月1回夜に公開授業を始めました。もう一つは、第2次世界大戦でアウシュビッツ収容所に強制収容されたユダヤ人の言葉「友人と共有できるなら、悲劇は深く鋭いものではない」。不幸の結末が予想される話は誰も尋ねようとしないという前述した学説「回復の物語」の通り、そのユダヤ人は周囲にその体験を語れずにいたというが、同じ体験者が集まる会で共有でき、苦しみが和らいだといいます。この公開授業を発展させ、さらに共有の重要性を認識したのを機に、認知症カフェが誕生しました。

(続く)
「この記事の㊦は:https://iwakikai.jp/blog/1947/

【認知症カフェ参考資料】
<「認知症カフェの実態に関する調査研究事業」報告書>
認知症介護情報ネットワークホームページより:file:///C:/Users/nishi001/Downloads/sh28_cafe_doc%20(3).pdf