市民フォーラム「食物のアレルギーについて」がこのほど、いわき市総合保健福祉センターで開かれました。平地区の福田小児科医院の石井まり医師が特別講演し、原因食物を「食べない」ではなく「食べられる範囲で積極的に食べる」という治療が効果的とする最近の研究や、アレルギー予防のためスキンケアの重要性をアドバイス。消防署員も登壇し、緊急時の対応や心肺蘇生法を指導しました。
● 「アレルゲン」「感作」「アナフィラキシー」
「市民フォーラム/救急医療・いわき2019」が9月7日に主催。石井医師は「食物アレルギー」の定義を「外敵(細菌やウイルスなど)から体を守るべき免疫システムが過剰に働くことで、本来無害な食べ物に対しても反応してしまい、体にとって有害な症状が出ること」と説明。「アレルゲン」「感作」「アナフィラキシー」という3つのキーワード(※)の意味とともに、発症するメカニズムを解説しました。食物アレルギーの分類では、原因食物を口にしてから2時間以内に症状が出る典型的な「即時型」、新生児・乳児におう吐や血便、下痢などの発症がある「新生児・乳児消化管」、原因食物を食べて運動すると誘発される「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」など7つを紹介。「経過観察」か「速やかに受診」か「ただちに救急車」かの重症度(※)を見分けるポイントも紹介しました。
※ 覚えておきたい3つのキーワード
①「アレルゲン」…アレルギー反応を起こす原因物質のこと。多くはタンパク質。食物、ダニ、カビ、花粉、ハチ毒など。
②「感作」…アレルゲンに対して体の中で「lgE抗体」という免疫物質が作られ、それが皮膚や粘膜にいるマスト細胞(肥満細胞)の表面にくっついて待機している状態。この時はアレルギー反応は起きませんが、この状態で再びアレルゲンが侵入して「lgE抗体」と反応するとアレルギーを発症します。
③「アナフィラキシー」…命に関わる重症なアレルギー症状のこと。アナフィラキシー症状にショック(血圧低下)を伴うと「アナフィラキシーショック」と呼ぶ。
※ ↓「『ぜんそく予防のために 食物アレルギーを正しく知ろう』4ページ(独立行政法人環境再生保全機構)より。より見やすいpdfファイルをダウンロードできます:https://www.erca.go.jp/yobou/pamphlet/form/00/pdf/archives_28216.pdf」
● 肌荒れに注意
石井医師は「昔は食べることで発症すると考えられていた。ですが今は湿疹のある皮膚からアレルゲンが入ってアレルギーになりやすくなる(経皮感作)と考えるのが主流」と解説。「肌荒れが長引いている子はアレルギー疾患の合併が多い」と診察しての実感も。食べられる範囲で食べて体を慣れさせ、湿疹の改善効果があるビタミンDをつくるための適度な日光浴を推奨。「湿疹は離乳食が始まる生後4カ月までには治しましょう」と強く呼び掛けました。
● 「緊急時の対応」の講話も
「アレルギーにおける緊急時の対応について」と題して講話したのは、いわき市勿来消防署救急第一係長の宍戸栄介さん。「いわき市の救急現状」「アドレナリン自己注射薬(エピペン)」「緊急時の対応」の3テーマで語りました。いわき市で2018(平成三十)年、アレルギーで搬送された人が53人で、その発生場所別、重症度別、原因別などの割合も紹介。エピペンを使うタイミングについても、来場者に考えさせるようにして解説しました。市消防本部救急隊の隊員は寸劇「本当はこわい・アレルギー」を披露。家族3人でいわき旅行中に10歳の子がエビを食べて息が苦しくなるという設定で、父親役や母親役が的確に救急通報、エピペンを使用する例を分かりやすく伝えました。
【関連情報】
「アレルギーに詳しい石井医師のいる『福田小児科医院』ホームページ」:https://www.fukuda-c-clinic.com/
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「いわき市のアレルギーっ子交流会『もぐのび』紹介」 2017年7月29日投稿:https://iwakikai.jp/blog/2027/
<アレルギー児の安全を守る入園入学講座>
2019年2月20日投稿:https://iwakikai.jp/blog/635/
2018年2月7日投稿:https://iwakikai.jp/blog/1619/