世界初のロボット治療機器「HAL®(ハル)医療用下肢タイプ」を福島県で初導入したいわき市の「いわき病院」が5日夜、同市総合保健福祉センターで成果を報告しました。今年4月の導入から7月まで患者4人が使用し、歩行や立ち上がりなどの動作で改善が見られました。
● 電位信号を読み取り、身体動作を補助
HALは、患者が体を動かそうとする時に発生する筋肉の微弱な電位信号を読み取り、身体動作を補助する治療機器。神経に刺激を与えて脳神経系のつながりを強化・調整し、身体機能の改善・再生を促進させます。2016年、8疾患を対象に公的医療保険が適用されました(※)。報告は、いわき病院の「地域連携研修会」で行われ、同病院の理学療法士・鈴木一恵さんが発表しました。
● 毎回40~60分の訓練
鈴木さんは、取り組んだ訓練方法を説明。9回か5週間を1クールとして実施し、その後、医師、看護師、理学療法士らがカンファレンスを開いて継続か終了を判断します。1回の訓練は、毎回40~60分、担当の理学療法士と補助者が付き添います。場所はいわき病院の廊下70メートルを往復し、患者の体調や疲労度を確認しながら20分以上歩行練習します。
● 患者のモチベーション向上も
いわき病院で今年HALを使用した患者は、筋委縮性側索硬化症(ALS)の50代男性A、筋強直型筋ジストロフィーの50代女性B、遠位型ミオパチーの30代男性C、顔面肩甲上腕型ジストロフィーの60代男性Dの4人。Aは1クール、ほかの3人は2クール実施しました。使用前後の10メートル歩行のスピード、歩幅と2分間歩行の結果は以下(※)で、それぞれ改善が報告されました。Cは1クールは改善したが、2クールでも大きな改善が見られなかったのは、疲労が考えられると分析。鈴木さんは、担当の理学療法士のコメントとして、立ち上がりや移乗動作の改善、患者のモチベーションの向上、職員の理学療法士としてのやりがいの実感などを紹介しました。
↑①HAL治療の現場を見学した時の動画=2017年5月23日
↑②HAL治療の現場を見学した時の動画=2017年5月23日
● 理解度や操作技術の向上に課題
課題として、佐藤さんは、患者に安心感を与える説明ができるように職員のHALの理解度向上、装着時間などで患者に疲労させないための操作技術の向上、HALの認知度を高めるなどを挙げました。佐藤さんは「HALは患者様にとって新たな希望やモチベーションアップにつながる夢がある。運営には多職種のスタッフが協力している。みんなで情報共有し、盛り上げていきたい」とまとめました。
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「ハルの治療現場を見学」 2017年6月2日投稿:https://iwakikai.jp/blog/2172/
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