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投稿:2019年04月09日更新:2021年05月11日

多職種連携・地域連携

555. いわきをスポーツ医師育成の先進地に・いわきFCクリニックの伊藤さん

「いわきをスポーツドクター育成の先進地にする」。そう目標を掲げて去年秋にいわき市に引っ越した伊藤雅紘さん(27)=福岡県出身=は、同市常磐地区のいわきFCクリニックの運営に奔走しています。同クリニックはフィールドワークで2年前に来市した伊藤さん(当時大学院生)らグループのアイデア。スポーツドクターの卵が全国から集まる環境をつくって医師不足の解決に貢献しようと、伊藤さんは設立準備から携わっています。今年1月にオープンした同クリニックは3月、間接的に救急車の適正利用にも貢献する休日夜間対応の往診も開始。将来は発展途上国で地域づくりも考えた病院運営をしたいという夢を持つ伊藤さんは、まずはいわきをスポーツ医師の卵が憧れる場所にしようと挑戦しています。

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↑「いわきをスポーツドクター育成の先進地にする」と目標を掲げる伊藤さん

● いわきでアイデア議論
伊藤さんは2017年9月、ビジネスなど多角的な視点から医療を学ぶ「山本雄士ゼミ」(東京都)のフィールドワークで来市(※)。ゼミ生有志20人は「いわきFC」のクラブハウスや病院を視察した後、医師や行政職員らと「いわきの医師不足の解決策」を議論しました。伊藤さんはその視察で「スポーツ」だけでなく経済効果や地域の発展も視野に入れたいわきFCのクラブ運営に感銘を覚えたといいます。国内ではスポーツドクターが少ないと事前に聞いていた伊藤さんは、スポーツを基にした地域づくりが始まっているいわきを育成先進地にしようとひらめき、グループメンバーに提案してアイデアを深めました。

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↑医師不足解消を考えるフィールドワークでいわき市を訪れ、グループワークに挑む伊藤さん=2017年9月24日、いわき市のいわき医師会館


「『山本雄二ゼミ』 いわきで白熱教室」 2017年9月27日投稿:https://iwakikai.jp/blog/2828/

● アイデア実現へ いわきに転職
フィールドワークの翌年4月、伊藤さんは医療事務職員として都内の病院に入職。その数カ月後、グループワークで同席した医療ICT関連会社の「HealtheeOne(ヘルシーワン)」(本社・いわき市)の小柳正和代表から「(スポーツドクター育成の先進地にするアイデアを)一緒に実現させないか」と誘われました。社会経験が短い不安もありましたが悩んだ末、いわき行きを決意。誘われた年の夏に転職し、秋から医師探しや医療機器の準備などで仙台市や東京などを行ったり来たり。いわきFCパーク内に今年1月、目標の第一歩となる「いわきFCクリニック」が開院しました。

● スポーツドクター育成の環境づくり
いわきFCクリニックは、なでしこジャパンにも帯同した経験のあるいわきFCチームドクターの齋田良知医師(いわき市出身・順天堂大整形外科講師)が院長を務めます。主に市外の経験10年未満の若手医師20人が非常勤で勤務し、診察日の日曜にローテーションで患者を診察。若手医師は斎田院長と相談できるため知識と経験を積めます。伊藤さんは「当初は自信がなかった」という不安に反し「予想以上に患者数が多く、年齢層が若いのに驚いた」と感想。週1回の診察日は約20人が来院し、休む間もないという上々の滑り出し。患者はほぼスポーツでけがをした中高生だといいます。伊藤さんは医師不足解消の狙いも含め「今後は週3、4回診療できるように医師を確保したい」と市外の医師に協力を呼び掛ける考え。さらに医師を補佐する「ドクタークラーク」も採用して診察をスムーズにし、1日の患者受け入れ数を40人まで改善させたいという目標も。スポーツ医療を学びたい医師を多く集め、診療経験をたくさん積める環境を整えています。

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● 軽症患者対象の往診サービスも開始
3月には休日夜間対応の急病診療もスタート。軽症で119番通報すると本来必要な重症患者の搬送が遅れる救急車の適正利用が課題のいわき市で、軽症患者を対象にした往診サービスはニーズがありそうなものの、「当初はお問い合わせすらゼロだった」と伊藤さんは渋い表情を浮かべます。土日祝日の夜間、医師がただ待機している状態が続きましたが、子どもから大人まで休日夜間の急病で不安になる患者や家族から気兼ねなく問い合わせいただけるよう、今月末からの10連休中の全夜間も一時救急の往診をするといいます。「いわきFCチームとともにクリニックも市民にとって身近な存在にしたい」と伊藤さん。SNSやチラシを配布してPRに力を入れながら、地域の救急医療体制に貢献していく考えです。

● 夢は発展途上国の医療問題解決
大学院時代には「国際協力」と「医療」をテーマに学んでいたという伊藤さん。将来は発展途上国で地域づくりも考えた病院をつくり、医療問題を解決して行きたいという夢を持ちます。その挑戦を前に、いわきをスポーツドクター育成の街にし、医師不足の解消に貢献できるのか。伊藤さんは「いわきでの経験は必ず将来生かされる」と力強く語っていました。

【いわきFCクリニック】
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住所:福島県いわき市常磐上湯長谷町釜ノ前1-1いわきFCパーク1階
診療科目:スポーツ診療(整形外科)、往診型一次救急(内科など)
営業日時:スポーツ診療は日曜の午前10時~午後12時15分、午後1~5時で要予約。
往診は土日祝日の午後4時から翌朝5時(午前6時診察終了)
スポーツ診療と往診の電話:0246-88-7706
ホームページ:http://www.iwakifc.clinic/