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投稿:2017年12月04日更新:2022年12月06日

いわき医療偉人

197. 医を業として・齋藤光三氏伝記⑦~若き世代へ

いわき市勿来地区の齋藤内科(現在は閉院)の院長・齋藤光三氏(享年82)は晩年、体調を崩して入退院を繰り返す。支えられる「患者」に立場が代わった齋藤氏の看護に携わっていたのが、当時「かしま訪問看護ステーション」の訪問看護師だった阿部めぐみさん(37)=現・かしま病院訪問診療課課長代理。齋藤氏と交わした会話や握手を通した思い出の数々がよみがえる。阿部さんは交流を通して「看護師としての原点を学んだ」と多大な影響を受けた。将来の地域医療を担う若き看護師が受け止めた齋藤氏のメッセージとは―。40年以上前に先駆的にお年寄り医療に尽力した齋藤氏の功績を回顧する不定期連載の7回目。(企画課・西山将弘)

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↑晩年の齋藤氏を看護した阿部さん(右)=2017年10月31日、いわき市のかしま病院

● 看護師として板につき始めたころに出会う
阿部さんは2004(平成十六)年4月にかしま病院に入職。病棟の看護師を2年務めた後に訪問看護ステーションに配属された。齋藤氏の看護を任されたのは「自分の中で訪問看護師の在り方ができたころ」(阿部さん)という入職8、9年目の時期。阿部さんは「振り返ると、看護師を続けているのはこの時期の経験が大きい」と語る。看護師として板につきはじめ、また一つ殻を破ろうとする時に齋藤氏と出会った。

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● 毎回「ありがとう」と齋藤氏から握手
齋藤氏の自宅に訪問看護した時の何気ない会話は、かけがえのないものとなる。帰り際、決まって「ゆっくりしていきなさい」と声を掛けられた。その齋藤氏の言葉に甘えてはいけないと知りつつも、断れない雰囲気を感じお茶を共にした。時には齋藤内科を特集した記事を見せてもらい、「デイ・ホスピタル」の取り組みを教わった。貧しい家からはお金ではなく米や野菜を往診代としてもらっていたという思い出話も聞いた。「『看護師とはこうあるべき』といった堅い話はなかったが、患者とのコミュニケーションの取り方や注意点も教わった」と阿部さん。「感謝の気持ちをしっかり表す方だった」というように、別れ際は毎回、齋藤氏から「ありがとう」と笑顔で握手を求められた。

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● 齋藤氏が教えた看護師の原点
2015(平成二十七)年7月、訪問する医師と同行して診察を補助する看護師になった。医師が治療しやすくなるよう懸命にサポートし、病気と向き合った。だが、患者に合った在宅ケアを同僚と相談しながら主体的に考えていた訪問看護ステーション時代との違いに、いつしか葛藤するようになる。「医師の指示に従うだけの仕事になっている。何のための看護師だろうか…」。自問自答する日々が続いた。そんな今夏、市内で開かれた市医師会主催の在宅医療市民公開講座を聴講する。そこでパネリストから、地域医療の先駆者として齋藤氏が紹介された。その瞬間、阿部さんは病気だけでなく人と向き合っていた齋藤氏の記憶がよみがえった。「原点はここだ」。そうあらためて気づいた。「人間性、生活も含めて看るのが看護師」。齋藤氏が原点を思い出させてくれたようだった。モヤモヤは晴れた。

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↑齋藤氏が入院していたかしま病院

● 最後の握手
かしま病院に入退院を繰り返していた齋藤氏が最後の退院となる前日。阿部さんは病室にあいさつに行った。起き上がれない状態の齋藤氏との別れ際「頑張りなさい」と手を握ってくれた。「握手する時は絶対笑顔」(阿部さん)という、いつもの優しいあのニコニコした表情だった。阿部さんは「握手の度に毎回パワーをくださった」と懐かしむ。その退院から約半年後の2013年8月、自宅で療養していた齋藤氏は静かに息を引き取った。その時期、齋藤氏の担当ではなくなっていた阿部さんは、その退院前の握手が齋藤氏との最後の別れとなった。

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● 齋藤氏のパワー 今も原動力に
齋藤内科が閉院する直前まで、在宅酸素を使用しながら患者の診察を続けた齋藤氏。患者から呼ばれれば、夜間でも休日でも家に足を運んだ。その姿を知る阿部さんは「最期まで自分の患者に責任を持っていた」と医療に携わる者の使命を感じる。齋藤氏がかつて理事を務めていたかしま病院の理念は「地域医療と全人的医療の実践」。「その想いを共有する周りのスタッフに支えられ頑張れている」と話す阿部さんは「看護師は一番好きな仕事。やりがいを感じている」と力強い。「家で亡くなりたいという方々を全力でサポートしたい」と理想の看護師像を描き、「大げさかもしれないけど、いわき全体でお年寄りをサポートできる地域にしたい」とも。コミュニティケアの充実を常々訴えていた齋藤氏の悲願は、若い現役世代に託される。齋藤氏から送られたパワーは、今も阿部さんの心を突き動かしている。

 

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<医を業として・齋藤光三氏伝記>

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<終末期を過ごす104歳女性とその長男の想いに迫ったドキュメント>
「㊤104歳女性の人生と最期への想い」 2017年3月31日投稿:https://iwakikai.jp/blog/2059/

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「㊦介護する職員」 2017年4月14日投稿:https://iwakikai.jp/blog/2050/

<認知症の妻に寄り添う夫の介護日記>
「㊤腹を立てない」 2017年5月6日投稿:https://iwakikai.jp/blog/2122/

「㊦ありがとう」 2017年5月13日投稿:https://iwakikai.jp/blog/2135/

<難病や障がいと闘い1人在宅生活する女性へのインタビュー>
「㊤19もの難病、障がいを経験」 2017年7月1日投稿:https://iwakikai.jp/blog/2223/

「㊦熊本地震の被災経験も」  2017年7月4日投稿:https://iwakikai.jp/blog/2225/