当法人医和生会の専門職が日ごろの看護や介護の成果を発表した「ケア事例発表会」(11月18日・いわき市競輪場サイクルシアター)記事の2回目。山内クリニック診療科の看護師・鈴木由紀子が「在宅看取りの実践と課題-訪問診療を支える同行看護師の役割」と題した発表をしました。
● 訪問医師と同行する看護師の役割
鈴木は、医療費や独居・老々世帯の増加から在宅医療のニーズが高まる社会背景、訪問診療の特徴、患者様からの依頼から診療開始までの流れを説明。在宅医療を支えるため、訪問医師と同行する看護師の役割として①訪問診療を円滑に運用するための調整②診療の補助③患者様や家族様と話しやすい雰囲気づくり④多職種間の連携と情報共有が主な業務と語りました。それぞれ具体的に①は新規契約や訪問予定日の設定、②は体温や血圧といったバイタルサインの測定、採血 褥瘡(じょくそう)処置、処方の問い合わせ、必要物品の準備、④は主治医の治療方針を訪問看護師や介護支援専門員(ケアマネジャー)などに伝達する事です。
● 自宅での看取りが減少
当法人の訪問診療の実績も紹介。利用者数は今年6月現在、男性31人(平均年齢78.9歳)、女性67人(同86.9歳)。2017年から月平均で利用者数100~105人で推移し、そのうち看取り件数は5%前後。看取りの場所では2017年に31件だった自宅が翌年は20件に減少し、療養生活の長期化で介護負担が大きくなり在宅看取りが困難になっていると推測しました。
● 自宅看取りの事例
事例では、歩行困難になり「入院はしたくない」と当訪問診療の紹介を受けた95歳女性を取り上げました。本人の意思を尊重したいとご家族も在宅看取りを希望していました。「訪問開始」時、同行看護師はバイタル測定、採血などの診察補助をし、訪問看護師に情報と主治医からの指示を伝達。点滴、在宅酸素、尿カテーテル留置などの心不全治療を行ううち、何度も点滴の針を抜いたり、昼夜逆転で夜も目が離せず、老齢で介護する長男夫婦から「介護は限界」と入院の希望を打ち明けられました。同行看護師は介護する家族の現状を主治医に報告し、合わせて入院の紹介状を依頼、ケアマネジャーと情報交換をしました。しかしご家族の意見はまとまらずに入院がキャンセルとなり、主治医と話し合い、ご家族の「自宅での看取り」希望を確認。主治医から本人の苦痛とご家族の負担の軽減を優先するケアに変更する指示が出ました。同行看護師は主治医の指示変更と話し合った内容を訪問看護師やケアマネジャーに伝達。「もう寿命が過ぎているし満足だ」と語った本人はその後肺炎と心不全を繰り返し、老衰で自宅で亡くなりました。ご家族は「大変だったけど、自宅で看取れてよかった」と安どの声が聞かれたといいます。
● 患者様やご家族のためにできることは?
事例を通して分かった終末期のご家族の不安は、病状の変化の受容、入院や治療の選択、介護の戸惑い、本人の希望とそれをかなえる介護者の介護力のギャップなど。こういった不安に対し、同行看護師が患者様やご家族にできる事は①主治医の説明を理解しているかの確認と補足②家族の返答や表情から気持ちをくみとる③家族の意思確認と助言④他職種との連携、と鈴木は説明。考察で自宅看取りの想像以上の不安、スムーズな診療のため病状の変化や悩みを的確に主治医に伝える重要性、「わたしノート」(※)の活用を含めた事前の意思確認、患者様の心情を読み言葉掛けの大切さ、を挙げました。鈴木は「終末期で『望む医療』『望まない医療』を意思表示できる時期にご家族と話し合いを持ってほしい」と提案。「様々な悩みや不安の声を聴いて本人やご家族の意思を尊重し、多職種と連携して療養生活を支えていきたい」とまとめました。
※
(続く)
【関連情報】
【ケア事例発表会の過去記事】
<2019年>
<2018年>
<2017年>
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