当法人医和生会の専門職が日ごろの看護や介護の成果を発表した「ケア事例発表会」(11月18日・いわき市競輪場サイクルシアター)記事の最終回。小規模多機能型居宅介護「さらい」の看護職員・高山寿子が「病院ではなく施設で自然な形で最期を迎えさせてあげたい」と題して発表。ご利用者様やご家族の希望に沿い「小規模多機能型」で自然な看取りをサポートした事例を紹介しました。
● 施設看取り 本人の希望をかなえるために
事例で紹介したご利用者様は、退院して「さらい」を利用し、入所待ちから看取り対象になった男性(86)。「苦痛緩和」を優先し訪問診療と訪問看護と連携する方針で介護に当たりました。男性は「体調穏やかにすごしたい」、ご家族は「本人の希望をかなえたい」という意向に応えるため、「さらい」は①関わり方②褥瘡(じょくそう)ケア③入浴④食事⑤過ごし方に力を入れました。男性は腎不全の悪化や仙骨部に大きな褥瘡、低血圧などを抱える身体状況でした。
● 関わり方、褥瘡ケア… 5つの目標
①関わり方では「『居心地がいい場所だ』と感じてほしい」という想いから、声掛けの徹底とバイタル測定時に手足をさするようにした結果、笑顔が多く見られ会話が弾むように変化。②「褥瘡ケア」では「褥瘡の悪化を防ぎたい」という想いから、コスモス訪問看護ステーションと協力、エアマットの使用、体位変換に取り組み、完治。入院中にシャワー浴だけだった男性に「ゆっくりと湯船につかってほしい」と③「入浴」も支援。肌が弱いため体の下にバスタオルを敷いたまま職員3、4人掛かりでシャワーチェアに移乗し、週2回の機械浴を実施すると、男性やご家族に大変喜ばれたといいます。食欲のある男性により楽しんでほしいと④食事の面では、ご家族に好物を持参して一緒に食事してもらったり、行事食では大好きな「寿司」を振る舞って笑顔で味わっていたといいます。居室に閉じこもらず楽しんでほしいと、⑤過ごし方の面では体調のいい日にはホールに誘ったといいます。ラジオ体操や歌でほかのご利用者様と触れ合い、笑顔で会話していたと振り返りました。
● 自宅に一時帰宅
2週間後、体調が落ち着いて男性やご家族様が「自宅で過ごしたい」と希望。主治医、ケアマネジャー、看護師、介護職、福祉用具業者と連携して一時帰宅の準備を進めました。男性は自宅でひ孫の顔を見たり、家族写真を撮ったりして家族団らんで過ごし、「さらい」に戻ると「疲れた」と言いながら穏やかな表情で喜んでいたといいます。ですがその後も一時帰宅する計画でしたが、体調の悪化で実行できませんでした。
● 触れ合いの時間を増やす
利用開始から2カ月後、傾眠傾向が強まり、むせりも増えて衰弱期に入りました。今後の方針の話し合いで主治医の説明を受けたご家族から「点滴、酸素吸入は行わず、苦しい時間を長引かせたくない」と、自然に任せる意思を確認。「さらい」は「何ができるか」を話し合い。居室の部屋を開けて触れ合いを増やし、「部屋で相撲が見たい」という希望から自宅のテレビを持参してもらい居室で鑑賞したり、少しでも一緒にいたいというご家族の面会時間を増やしたりしました。お別れの時、男性はご家族に見守られて旅立ちました。見送りでは看取り研修での学びを参考に、隠すように裏口からではなく、ほかのご利用者様に見えるように正面玄関から出てお別れ。ご利用者様から「仲間を見送れた」という声が聞かれたといいます。
● 「スタッフの看取りの不安をなくす」のが大切
この事例を通し、高山は「看取り前提の機械的なケア」ではなく「ご家族の揺れる心に寄り添い、ご本人とご家族が納得できる最期を迎えるためにチームで支援するのを学んだ」と振り返り。さらにケアの質を高めるため「スタッフの看取りの不安をなくす」「チームケア体制と教育の確立」「多職種の信頼関係、連携」が大切だという学びを共有。ほかにできたのではという悔いはあるものの、「褥瘡を治してきれいな体で旅立たせられたのは誇り」。「小規模多機能事業所として、多職種と連携し、誰もが納得する『看取りケア』を目指したい」と目標を語りました。
(終わり)
【関連情報】
当法人の小規模多機能型さらいページ:https://iwakikai.jp/service/sarai/
【ケア事例発表会の過去記事】
<2019年>
<2018年>
<2017年>
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