いわきミュージック・ケア研究会の馬目よし子代表は毎月2回、平地区の社会福祉法人いわき福音協会が運営する指定障害者支援施設「はまぎく荘」を訪問し、音楽の力で運動感覚や知的機能を活発化させる「ミュージック・ケア」に取り組んでいます。障がいのあるご利用者様は歌ったり、ダンスしたり、音を鳴らしたりして音楽をエンジョイ。東日本大震災後から被災者向けの訪問活動を始め、今も継続している馬目代表は「いろいろな施設を回りたい」とさらなる意欲を示しています。
● 情緒の回復や対人関係の質の向上
ミュージック・ケアは音楽で心身に心地よい刺激を与え、情緒の回復や対人関係の質の向上などに効果があるとされています。聴覚だけでなく視覚、触覚、嗅覚を刺激する道具を使ったプログラムもあり、曲に合わせ手足を動かすことでのリハビリ効果や、懐メロや唱歌を歌うことでの言葉の誘発効果なども期待されています。馬目代表は「子どもからお年寄りまで楽しめて、初対面でもすぐ打ち解けられるようになる」と魅力を語ります。
● 歌ったり踊ったり
先月26日に行われた「ミュージック・ケア」にはご利用者様約30人が参加。輪になってイスに座ります。ゆっくりしたテンポの演歌「与作」に合わせ「ホーッ」と大声を出し、次はアップテンポのポップミュージック「オブラディオブラダ」や「ジンギスカン」で元気にダンス。鳴子を手に思う存分にカチカチと音を鳴らし「ワッハハハー」「オホホホー」と声を出して輪の中で踊ります。「三百六十五歩のマーチ」では手の上げ下げや足踏み運動。馬目さんはご利用者様から「サザエさん」のリクエストがあればその曲を流したり、眠たそうにする方を見つけたら順番に太鼓をたたく「パンパン」を流して刺激を与えたりして柔軟に対応。緑やピンク、黄色のスカーフや、円型の大きなバルーンを使った基本動作も取り入れ、ご利用者様は笑って歌って楽しみます。職員がつくるシャボン玉を見ながら「シャボン玉」の曲を聴き、感情を沈めて終わりました。
● はまぎく荘以外でも訪問活動
馬目代表は「いわき福音協会」が運営する福祉サービス事業所「つばさ」の所長で、元「はまぎく荘」職員。「はまぎく荘」勤務時代の2003(平成十五)年、上司からの勧めで「ミュージック・ケア」を学びました。当時の「はまぎく荘」は旅行やクラブ活動が活発になった時期で、活動に参加できないご利用者様を音楽で楽しませたいというのが動機でした。NPO法人日本ミュージック・ケア協会が主催する研修を受講し、今はいわき市に2人しかいない上級認定音楽療法士となりました。「はまぎく荘」以外にも、東日本大震災後からは同協会と「恩師」と慕う認定指導者・松本鈴子さんの支えを受けて今も訪問活動を継続。広野、楢葉両町の施設やサロンを回ってお年寄りを音楽の力で元気にしています。「つばさ」に異動してからは「はまぎく荘」での活動は止まっていましたが、去年4月から再開しました。
● 「いろいろな施設を回りたい」
その日の「ミュージック・ケア」終了後、参加せず輪の外にいたご利用者様が馬目代表に「昔聴いた曲、よかった」と感想を伝えました。無理に参加しなくても音楽を楽しんでいたのを知った馬目代表は笑顔。「『楽しかった。また来てね』と言われるのが一番のモチベーションです」。「将来は自分から発信して、いろいろな施設を回って活動したい」と目標を話していました。
【関連情報】
<NPO法人日本ミュージック・ケア協会>
<はまぎく荘>
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