福島県中学校体育連盟いわき地区のボッチャ専門部会は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期になっている種目「ボッチャ」を開催させようと、コロナ時代の大会の在り方を懸命に模索しています。県大会、各地区大会の中止決定が相次ぐ中、安全を徹底しつつ子どもたちの一生の思い出の機会を失わせないよう、いわき地区は粘り強い検討を続けています。開催決定の判断は7月末で、第2波が襲ったら即中止。本年度、県内で初めて正式種目に加えられた「ボッチャ」は特別支援学級生が「主役」になれる大会で、すでに練習に励む生徒も。ボッチャ専門部会がこのほど、いわき市の玉川中で開かれ、関係者が「安全」と「やらせたい」で揺れる意見を出し合い、子どもたちに夢舞台を届けようとアイデアを出し合いました。
● 開催判断は7月末決定
「ボッチャ」(※1)は「地上のカーリング」と呼ばれるパラリンピックの正式種目で、障がいの有無や年齢に関係なく技を競い合えます。夢に向かって挑戦する力を身に付ける「キャリア教育」の一環で、県中体連いわき地区が特別支援学級生を含めたすべての中学生に目標に挑む機会が必要だと準備を進めてきました。大会は6月中旬に開催の予定でしたが、新型コロナ感染拡大の影響で見送りに。それでも実現に向けて検討を尽くそうと、専門部会は競技運営の計画書や安全ガイドラインを作成して準備を進めてきました。開催の可否は県中体連いわき地区が7月末に最終決定し、第2波が襲った時点で中止する計画。ボッチャ競技は10月12日、市総合体育館で開催を予定しています。
※1 ボッチャとは(日本ボッチャ協会ホームページより):https://japan-boccia.com/about
● 専門部会 教員らがボッチャ体験
市内26中学校の特別支援学級の教員らが初めて一堂に会したボッチャ専門部会が6月26日、玉川中で開催。参加教員が本番の流れでボッチャを体験した後、競技の運営計画書を共有しました。ボッチャ体験では2チームに分かれて試合。投球後に前のめりになってラインオーバーする人やナイスショットを見せる人も。試合後、審判役の教員が効果的な投球方法を助言したり、ジャックボール(目標球)に両チームのボールが密集したケース、タイブレークの方法など細かいルールを解説しました。
● 安全対策の徹底確認
運営計画書の話し合いでは、県中体連いわき地区の吉田信治会長が冒頭あいさつ。「初開催」と「コロナ禍」という一筋縄ではいかない運営を語り、それでも「子どもたちに思い出を残してほしい」「新しい大会のスタイルをつくっていこう」と想いを共有しました。事務局は、いずれも男女混合の団体戦(1チーム3人)と個人戦のルール、当日の日程などの案を伝達。感染防止のガイドラインでは「生徒」「顧問」「専門部」ごとに分かれた細かい注意事項を発表し、前・当日の体温計測、「3密」を避けたチームミーティング、マスクの着用、道具の消毒などの対策をチェックしました。
● 「新しい大会の在り方」を模索
楽しく安全に競技できるよう、出場生徒一人一人の配慮事項を事前に集約することも確認。傷つきやすい生徒の接し方に至るまで細かくチェックすることに。初戦敗退するともう試合がないプログラムで、出席者から「1試合だけだと訳が分からないまま終わってしまうかもしれない。最低2試合できないか」という生徒を思う提案に、事務局はコロナの安全対策面から試合数を最小限にした苦渋の決断を説明。全チーム閉会式まで残るのか、プライバシーに関するマスコミ対応など持ち越しの課題も見つかり、「新しい大会の在り方」の構築に向け真剣に議論していました。
● 「障がいの有無に関わらず平等の機会を」
市内ではボッチャに取り組む学校も出ています。内郷一中ではボッチャ部が誕生し、玉川中では体育の授業で積極的に実施。9月にはボッチャを取り入れた体育の公開授業も予定しています。いわき地区特別支援教育研究会の会長で、ボッチャ専門部会の松﨑伯文部会長(玉川中学校長)(※2)は、ボッチャ競技の開催が障がい分野からではなく中体連側からの提案だったのを喜んでいます。「障がいの有無に関わらず、みんなに平等の機会をつくるのは念願」と熱い想いを語り「慎重な運営を心掛け、意義深いこの大会を万全の準備で成功させたい」と意気込んでいます。
※2
「松﨑校長が講話した『いわき市障がい者職親会』」 2019年12月21日投稿:https://iwakikai.jp/blog/3084/
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