日常生活上での判断能力に不安のある認知症者や障がい者らの日常生活の自立を支援する「あんしんサポート(福島県での愛称)」が、いわき市を含めた全国各自治体の社会福祉協議会(社協)で受けられます。必要な福祉サービスをアドバイスし、利用手続きや簡単な金銭管理の代行などをお手伝いします。いわき市社協では「あんしんサポート」のニーズが増え、多様化しているといいます。担当者は「見守る家族がおらず、日常生活に不安のある方を見つけたら早めに相談してほしい」と呼び掛けています。

●　各市町村の社協が受託運営

福島県では「あんしんサポート」と呼ばれる「日常生活自立支援事業」は、各都道府県の社協が責任主体となり、各市町村の社協が受託運営しています。日常生活上での判断能力に不安のある、認知症の方や知的・精神障がい者などを対象にサポート。支援を受けるには契約を結ぶ必要があるので、説明内容を理解できない方は利用できません。本人に代わって意思判断する後見人を立てる「成年後見制度」(※1)を利用するまでに至らない、でも判断能力に不安のある方に向けたサービスです。

※1.「成年後見制度と日常生活自立支援事業を解説した研修」2019年1月29日投稿：https://iwakikai.jp/blog/179/

●　3つの支援内容

支援内容は①福祉サービスの利用援助②日常的金銭管理サービス③書類などの預かりサービスの3つ。「『あんしんサポート』といえば『金銭管理』というイメージがありますが、基本は福祉サービスの利用援助です」と市社協の担当者。相談者が置かれている状況として、認知症や障がいなどによって適切に支払いが行われておらず、ガスや水道、電気などのライフラインが止められたり、家賃滞納により退居を求められたりする方も少なくありません。そのため相談を受けたら、まず社協の職員が訪問して支援計画を作成。「あんしんサポート」の契約を結べば、定期訪問で必要な福祉サービスの情報を提供し、利用の手続きに関する助言・支払いの支援を行います。その上で、医療費や公共料金の支払い、生活費のお届けなど日常的な金銭管理の支援も行っています。支援計画は定期的に見直され、判断能力が著しく低下したり生活状況が悪化したりすれば、ほかのふさわしい援助につなげます。

「あんしんサポート」を受託運営するいわき市社会福祉協議会の窓口

●　現在の利用件数は80件前後

いわき市で「あんしんサポート」が始まったのは2000(平成十二)年度。市社協担当者によると、事業開始当初は数件だった利用件数も、今では80件前後で推移し、介護支援専門員(ケアマネジャー)や地域包括支援センターなどを介しての問い合わせが増えているといいます。高齢分野では、高齢化や核家族化に伴って一人で生活している認知症高齢者との契約も増えており、認知症となった親と障がいを持つ子といった親子で相談を受ける事案も出てきています。また、退院後の生活を心配した病院の相談員から連絡が入ることも多いという。障がい分野では、施設から在宅で自立生活できるよう促す「地域移行」(※)の取り組みも進み、「あんしんサポート」の役割が大きくなっています。いわき市社協では近年は毎年80人前後が利用。福島県社協の2017年度統計(2018年3月末現在)では、新規契約者が161人で、そのうち認知症が46%、知的障がいが21％、精神障がいが27％。生活保護受給者が48人でした。

※2.「地域移行支援を考えた研修会」　2018年10月2日投稿：https://iwakikai.jp/blog/674/

●　「早めに相談してほしい」

いわき市社協は独自で2017年度から、「成年後見制度」を利用した支援もスタート。判断能力が著しく低下した「あんしんサポート」の利用者を優先し、市社協が後見人となって受任しています。「あんしんサポート」に問い合わせする方の多くは前述したように生活状況が破綻してから相談に挙がることも多く、市社協の担当者は「日常生活が心配な方を見かけたら、早めに社協や関係機関に連絡してほしい」と呼び掛けています。

【日常生活自立支援事業(いわき市社協ホームページ)】

https://www.iwaki-shakyo.com/soudan/jiritsu-shien.html

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「判断能力のない方を支える市民サポーター『市民後見人』のフォローアップ研修」　2019年6月5日投稿：https://iwakikai.jp/blog/1172/

「成年後見制度を使った支援をしているいわき市のNPO法人『そよ風ネットいわき』」　2019年10月29日投稿：https://iwakikai.jp/blog/2583/